近藤英隆 コラム 飯田覚士選手が世界チャンピオンになったとき


心と腰痛の関係~なぜ腰は痛むのか?~

20 積極的に休息をとる

この時の飯田君の腰痛のように酷くないにしても、ボクサーはよく腰痛になっていました。プロボクサーは他のプロスポーツ選手と比べると、比べられない様なストレスやプレッシャーが有るのだと思います。特に世界戦は特別でした。

10年以上前のことになりますが、緑ジムの浅井選手が世界戦の1ヶ月前にスパーリング中に軽いギックリ腰になり、その2日後には、歩行が困難になってしまうほどの腰痛になってしまったのです。

緑ジムの会長に付き添われて、飯田君が世界チャンピオンになったときと同じような歩き方をして私の所に来院したのですが、よく話を聞いてみると、始めのうち痛みはさほど酷くはなかったのが、軽いギックリ腰になってからいろいろな後援者を回って、ガンバレ、ガンバレといろいろな人から肩をたたかれて徐々に痛みが増してきたそうです。

もちろん、ギックリ腰になるような肩のたたき方をした人がいたわけではありません。飯田君の場合はチャンピオンになった後に動けなくなったのですが、浅井選手の場合は、チャンピオンになってからではありません。初めての世界戦で自ら気合が入りすぎてしまったために、オーバー・トレーニング気味になってしまっていたことと、プレッシャーがかかったことが痛みを増強させていたのではないかと思います。

ここでもう少し詳しいお話をしますと、試合前のボクサーは、高濃度の副腎皮質ホルモンに毎日どっぷりとつかっているようなものなのです。ハードなトレーニングと減量、連日続くスパーリングは相当なストレスになります。実際に、オーバートレーニングが原因でマラソンランナーは躁鬱傾向やうつ病の罹患率が高いと言う報告があります。

ハードなトレーニングは、だんだん憂鬱な気分になるばかりかコンディショニングも悪くなってきます。休めばいいのですが、初めての世界戦が控えているために気持ちばかりが焦ってしまい、心も体もなかなか休む事ができません。つまり、ハードなトレーニングを継続すると、パフォーマンス向上を期待させる生理的な変化がもたらされる代わりに、ストレスホルモンに常にどっぷりとつかった状態になってしまいます。これに精神的なプレッシャーが加わると、飯田君が世界チャンピオンになったときと同じような事が起こるわけです。

ハードなトレーニングは体と心を壊してしまう危険性があるため、積極的に休息をとる必要がありました。この時は、試合1ヶ月前に動けなくなった事で、幸か不幸か休養が取れたので肉体的な疲労度は改善していますが、故障して練習が出来ないという焦りから精神的ストレスは高まっていました。特にボクサーの場合は動けなくなると体重が減らないため、減量に対する焦りもあります。焦れば焦るほどストレスは高まり悪循環となり、腰痛の回復を遅らせます。この様な事は他のスポーツでもよくあることで、同じような状況で殆んどのスポーツ選手がパニックになってしまいます。心と体のストレスをいかにコントロールして行くかが試合の勝敗を分けるという事は言うまでもありません。

最近では、アクティブレスト(積極的な休息)が、パフォーマンスの向上や身体的なコンディショニングが大切だと言われるようになりました。つまり、こうなる前に、思い切って積極的な休息をとることも必要であると考えられています。

パフォーマンスが悪くなってしまってからでは、時既に遅しということです。精神的な部分でのコンディショニングも忘れてはいけません。時には全てを忘れる様な遊びをする事も必要だと思います。

何よりも、技術的にも精神的にも経験の豊かな指導者が必要になるかと思います。

試合のレベルに合った指導が必要になってくる訳で、どんなスポーツにおいても当然同じことが言えるでしょう。例えばマラソンの高橋選手と小出監督、ボクシングでは飯田君と福田先生、戸高選手とマック・クリハラトレーナーといった名コンビが勝利をもたらすことがあります。どの選手も自分ひとりの力では勝てなかったと話しています。



まとめ

・疲れたら休む!

・疲れには心と体の疲れがある!

・腰痛になったからと言って、焦ってバタバタせずに、まずは私のところへ




最後までお読みいただきありがとうございました。。。





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