21世紀旅日記
【 夏の九州 ひとり旅】

スピリチュアルの聖地、高千穂の荒立宮

高千穂 荒立宮

2007年初夏の九州旅の最後に辿り着いたのは、高千穂の荒立宮。
精神世界とか、スピリチュアルものに興味のない私は知らなかったのだが、ここはパワースポットとしても有名な場所らしい。
なんで興味の無い私が、荒立宮を訪れることになったのか・・・そこで出会った多くの人は「よばれたんだ」とか「導かれたんだ」と言ってたけど、そうなのかな?

そもそも、今回の旅で高千穂まで足を運ぶつもりは全然なかった。
九重連山のミヤマキリシマツツジの撮影しか頭になく、とりあえず関門トンネルを渡ったものの、「数日間は雨」の予報で登山は無理と、地図帳を広げながら、「どっか夏っぽいところあらへんか?」と探して、行ったのが由布川渓谷
それから、男池湧水地。その後やっと九重連山を登って、その撮影が無事終了した時点で、途方にくれ、なんとなく阿蘇山へ。その後はもっと途方に暮れ、阿蘇山麓の白水温泉に浸かりながら、どうしたもんかと迷っていた。そのまま、そのへんで車泊して、翌朝、なんで高千穂に行ったのかなあ。すでに秋の真名井の滝は撮影してたけど、夏のはまだだな・・・と思いついて、車を走らせたような気がする。まあ、とにかく、その時の私は「迷いモード」だったと思う。

早朝の真名井の滝を撮影し、高千穂の道の駅に行く。ここのインフォメーションで、「このへんで、どっか夏っぽい景色の撮れる場所ありませんか?」と案内のおばさんに聞いてみた。「紫陽花でもいいし、水田でもいいし、なんかありませんか?」と聞く話の中で、おばさんが勧めてくれたのが荒立宮。もっとも、「夏っぽい景色」があるから勧めてくれたわけではなく、「高千穂は何回か来てて、だいたいの観光名所は廻りました。だから今回は夏っぽいのだけでいいんです」という私に、「荒立宮には行ったことある?」と聞き返されたのだ。

天孫降臨の地、高千穂には、難しい名前の神社や名所が一杯ある。わかりやすいのは高千穂神社くらいで、地名を目で見ることはあっても、耳で聞くことの少ない一人旅の私は、案外どこに行ったか名前で聞かれても答えられないし覚えられない。で、私は、荒立宮に行ったことがあるかどうか、わからなかった。
おばさんは、「荒立宮は、今、若い女の子に大人気で、東京からもよく訪ねてこられる」と胸を張る。
「なにがそんなにいいんですか?」と疑り深い私が聞くと、「とにかく宮司さんがいい人ですよ」という。「荒立宮に行ったら、ぜひ、宮司さんとお話なさるとええですよ」

宮司さんとお話ったって、いきなり訪ねて、「こんにちは、お話してください」・・・なんて、今時小学生の子供だって言わない。
特に京都で祭の撮影のため、毎日のように色んな神社に行ってる私にとって、用もないのに、宮司さんを呼び出して話すなんて暴挙は、考えられなかった。京都ではお守り売ってるアルバイトの巫女さんでさえ、忙しそうで、声をかけづらいのだ。

だから、もちろん話しかける気なんてなく、でも自分が行ったことがあるか?、そしてそこまで「いい人」って言われるって、どういう人なのか? 挑戦するような気持ちで、荒立宮に立ち寄った。

私が到着したとき、宮司さんは留守だった。数時間、戻らないという。「待とうか、待つまいか」と迷いながら、駐車場で車を停めて、なんとなく外を見ていると、白い装束のそれっぽい年齢の人が、ス〜っと通り過ぎる。「あれ?」 って思っていると、またス〜
「あの人、そうちゃうか?」

思い切って、声をかけてみると、やっぱり宮司さんだった。用事が早く終わり、予定より早く帰って来れたそうだ。
宮司さん(正確には現在は息子さんが宮司さんで、この方は「鍵守さん」だそうだ)と会った途端、猜疑心一杯で、頑なで、挑戦的で、否定的な、私の考えは、ふっ飛んでしまった。

「人と話したい気持ちに、理由づけなんていらない」
そんな感じ。
とにかく数分のうちに、私は、その夜、そこの駐車場に車泊することに決めていた。

で、まあ、詳しい事ははしょるが、結局私は、5日間、ここに滞在した。
宮司さんは「みえる」「わかる」方らしく、そこに集まる人達から、色んな逸話も聞いたけど、そこにいる時は、私も気が大きくなってて、「自分の運命とか将来とか、別に知らなくてもええわ」と、ほとんど何も聞かずに、帰路についた。後から「アレも聞けばよかった。コレも聞けばよかった」と、一杯煩悩が湧いてきたけど・・・

宮司さんは、「もし、神様が本当にいるとしたら、宮司さんみたいだったらいいのにな」と思うような方。2日目くらいまでは、高千穂弁が強くて、話されていることの5〜8割が聞き取れなかったけど、そのうちにだんだん慣れてきた。ある日、私は福岡から来てる家族と話してて、一番小さい女の子が「宮司さんの言ってる事、ようわからんことがある」と笑いながらしゃべってるのを聞いて、ものすごーく嬉しかった。今まで九州弁って、あまり好きではなかったのだけど、今回の旅で、色んな地方の九州弁を聞いて、九州弁が好きになった。
今でも、「いいっちゃなかですか〜」(という風に聞こえた)と、宮司さんの明るい声を思い出すたび、ほんわか、あったかい気持ちになる。

高千穂 荒立宮

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