vol.7 仲間 : 信州の温泉街にて (2002.Nov) 霧氷の写真が撮りたくて初冬の信州に滞在中、とある温泉街の、とある温泉施設の駐車場に車を停めていた時。 となりに、スゥッと一台のステップワゴンタイプの車が停まった。 何気なく横を見た私の視界に、醤油のビンの映像が飛び込んできた。 その車の左後部座席の窓からは、透明の衣装ケースの様なBOXが丸見えで、中には醤油のビン、ダシの素の入ったビン、鍋やコンロ等が入っていて、そのBOXのふたの上にはシュラフ(寝袋)が積まれ、助手席にはハンガーに掛かった上着がぶら下げてあった。 車のフロントには全国地図。 持ち主のまあまあ若い男性は車の後ろに回り、スーパーにある様な大きなカゴに手際よくシャンプーやタオル、着替えを放り込んでいる。 私の場所からは見えないが、どうやら服類もたくさん積んでいるようだ。 ナンバープレートをみると石川ナンバーである。 「仲間だ・・・この人も車で旅してるんだ!」 なんとなく私の中に嬉しさと親しみが溢れてきた。 ただあまり大きな車ではないので、この荷物の量で車内に彼が寝れるスペースを確保するのは難しそうだった。 「きっと車の外にテントを張って、鍋やコンロで本格的に料理をし、あのシュラフで寝るんだ」 「でも、この寒いのに外で寝るとは大変だなあ。この人も写真かなあ。でも会ったこと無いなあ。機材も積んでないみたいだし」 私の好奇心が膨れ上がってくる。 「なるほど本格的な旅オタクだな。きっと温泉がメインなんだ」 だったらこんな高い温泉施設より、ほんまもんの安い穴場の温泉銭湯を教えてあげよう。私も北陸に知り合いがいないから、友達になってエリア拡張だ! 私は車の窓を開け、親しみを込めて、声をかけた。 「車に住んではるんですか?」 一瞬、 彼は私の言葉を理解しかねているようだったが、2〜3秒おいて、丁寧に答えてくれた。 「いえ、引越しです」 |
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