帯状疱疹は水疱瘡の原因ウィルスと同一で、水疱瘡にかかり治った後にウィルスが神経根部(神経が脊髄から出るところ)に潜んでいて、体の抵抗力が落ちたときに神経に伝わって増殖し発症します。そのため神経で炎症が起こり神経痛となって症状が現れます。
このような訳で体のどの部分にも出現する可能性があります。初めは蚊に刺されたかのような赤く腫れた水泡ができ、次第に帯状に神経の支配領域に広がっていきます。皮膚症状は比較的早期(2週間程度)に治りますが、問題はこの後に神経痛となって痛みが残った場合、早めに治療を開始しないとなかなか痛みがとれなくなってしまうところにあります。
早い段階で気づいて治療を始められた場合はよいのですが、私の経験では顔面(三叉神経)と、胸部(特に乳房の部分)にできたものは後に痛みを残しやすく、治療困難な場合が多いように思います。年齢の面からは高齢になるほど発症頻度も高くなり、痛みも残りやすくなります。治療に関しては、それぞれの医療機関で若干異なるかも知れませんが、通常、抗ウイルス剤を内服したり点滴したりします。それ以外にも、ビタミンB12や鎮痛剤などの内服を併用します。このような経過の後、もし1ヶ月たっても痛みだけ残ってしまった場合は、ペインクリニックでの治療を考える必要があると思います。これが帯状疱疹後神経痛というもので、何も治療しないと痛みがどんどん強くなってしまうことがあります。
ペインクリニックでの治療は痛みの強い場合、
星状神経節ブロックや
硬膜外ブロック治療を行います。星状神経節ブロックは、顔面の帯状疱疹の時に行い、硬膜外ブロックは、体幹にできた帯状疱疹に対しその部位に合わせて治療することができます。帯状疱疹後神経痛は、字のとおり神経痛となって出てくるため、温めると症状は軽くなりますが、また必ず痛みが出てきます。ひどい痛みになると夜も眠れなくなってきます。痛み止めなども効果なくなり、どんどん痛みの程度が強くなります。このような状態になる前に、もしくはなってしまった後でも神経ブロックは効果があります。前述しました顔面に発症した帯状疱疹と、胸部(特に乳房の部分)に発症したものは痛みが強く残りやすい傾向がありますので、この場合は発病初期から神経ブロック療法を併用することを強くお勧めします。