| 日本政府が経済成長戦略の柱の1つに掲げているのがハイテク化で、AIとともにゲノム編集技術を柱とするバイオテクノロジーを推進している。ハイテク化推進のカギを握っているのが知的財産権(知財)で、特許権と並ぶ重要な柱の1つ、植物特許といわれる植物新品種保護制度を担っているのが種苗法である。
種苗法は、もともとUPOV(植物の新品種の保護に関する国際同盟)条約の国内法として作成され、施行されてきたもので、基本はこの国際条約にある。この国際同盟は1961年にわずか4か国で始まったが、それが大きな力を持ち始めたのは、WTO(世界貿易機関)の設立と、遺伝子組み換え作物の登場だった。これらの新たな状況を受けて、1991年に条約の大幅な改正が行われ、世界的に知財戦略が進むなか、大きな力を持つようになったのである。
その種苗法が高市政権による経済成長戦略を受けて、再び大きく変わろうとしている。現在の種苗法は2020年に改正種苗法として公布されたもので、この時すでに開発者の権利が強化された。いま、さらにその権利が強化されようとしている。新たな法案「新育苗法(重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律)」の登場に合わせた改正である。この法案は、通称を「気候変動等対応品種法案」といい、「高温耐性、耐病性、多収性等の形質を有する品種」を重要品種と位置づけ、その開発推進を掲げている。しかし、このような品種の開発は従来も行われてきており、改めて新たな法律をつくってまで推進するのは何故なのか。
その理由こそが、ゲノム編集など遺伝子操作技術を用いた新品種開発を目指し、開発した新品種を知財で保護するところにある。それを目的として新たな法案が作成され、同時に種苗法の改正案が作成されたのであり、現政権は、それを経済成長戦略の一環として位置づけているのである。そのため、多国籍企業など大手の民間企業を優遇し、地方自治体の開発力を民間に移行させ、地域で頑張ってきた中小種苗メーカーの開発力を削ぐ内容になっている。
新品種開発に関しては、都道府県が企画し、民間企業が担い、民間企業は農研機構などの先端的な研究施設の利用が認められている。開発された新品種に関しては、新品種登録を義務づけている。このように民間企業に至れり尽くせりとなっており、民間企業がゲノム編集などの遺伝子操作を駆使して開発する目的は知財にあり、知財を通して世界の種子を支配することが目的といえる。
この新たな法案新育苗法が成立すると、同時に種苗法が改正される。改正のポイントは種子支配の強化である。その内容は、@育成者権の10年延長。育成者権とは新品種開発の権利のことで、一般の植物では35年、樹木では40年と世界に類例のない長さになっている。一般の植物の場合、EUは25年、米国は20年である。A新品種の流失防止に厳しい対応を図る。海外持ち出しなどを厳しく監視し、育成者権者の訴訟を後押しする、としている。日本政府はいま、アジアなどUPOV未加盟の国々に働きかけ、加盟を強引に図ってきており、アジアの人々から批判が起きている。
この新育苗法案および種苗法改正は、成立すれば今年の12月1日から施行される予定である。
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