| ゲノム編集作物は、GM作物と同様、非ゲノム編集の親株とは実質的に同等ではないことが示された。この結果は、現在のゲノム編集作物の安全審査の方法では安全性が確認できないことを示している。
これまでGM食品の安全審査は、組み換えた遺伝子の部分は異なるものの、その他のところは実質的に同等という考え方で承認され、栽培され、流通してきた。しかし遺伝子を組み換えると、親株にはない意図しない変化が生じることが多くの実験で確認されている。例えばモンサント社(現バイエル社)が開発したGMトウモロコシ「MON810」は、非GMの親株にはないアレルゲンタンパク質「50kDa」のγ−ゼインを産生することが明らかになっている。
しかし、このような研究結果は無視されつづけてきた。そういった実質的同等の考え方の延長線上で、ゲノム編集作物の安全性の考え方も設定された。すなわち、ゲノム編集技術でDNAを切断して遺伝子を破壊したところ以外は変化が起きていない、という考え方を前提に安全性が評価されてきた。しかし、ゲノム編集でも、親株にはない意図せざる変化が起きていることが明らかになった。実験を行なったのはXiao-Jing Liuらで、1つは非ゲノム編集イネの親株とCRISPR-Cas9で、もう1つは非ゲノム編集イネと塩基編集(ゲノム編集の一種)でゲノム編集を行なったイネを比較した。
実験では戻し交配は行われていない。日本で開発されたゲノム編集作物はすべて、戻し交配が行われている。戻し交配とは、親の代、さらにその親の代と掛け合わせを続け、ゲノム編集の際に用いる抗生物質耐性遺伝子などを除去する方法である。この戻し交配に関して、フランス国立農業研究所のイヴ・ベルトー元所長は次のように述べている。「開発者の習慣、機材、専門知識、利用可能な素材によって制限されており、しかも詳細を定めた標準化されたガイドラインも存在しない」。そのため意図しない変化が残り、潜在的な危険性をもたらす可能性があるという指摘である。
Xiao-Jing Liuらの実験では、研究者は遺伝子の発現を見る非標的トランスクリプトミクスと、タンパク質の発現を見るプロテオミクスを行なっている。その結果、トランスクリプトミクスではCRISPR-Cas9を用いたゲノム編集イネで520、塩基編集のイネで566、非ゲノム編集イネと比べて遺伝子の発現に大きな変化があった。またプロテオミクスではそれぞれ298と54、タンパク質の発現に違いがあった。このようにゲノム編集では大きな変化が起きることが改めて示されたのである。〔GM Crops&Food 2023/14巻1号〕
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