■2026年10月号

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バイオジャーナル

生の米国産ジャガイモ輸入解禁へ

 

米国トランプ政権は、日本政府に対してジャガイモの全面輸入解禁を迫り、高市政権も受け入れに前向きになっている。これまでも米国政府の圧力で、少しずつジャガイモの輸入枠は広がっていたが、一部にとどまり、用途もポテトチップスに限定されていた。このたびは店頭に並ぶ生のジャガイモを含め、あらゆる用途に使うよう圧力を強め、すでに農水省は輸入解禁に向けて植物防疫法省令の改正手続きを進めている。 米国産ジャガイモの問題点は、価格の問題にとどまらない。米国では、シストセンチュウという、始末の悪い害虫が広がっている。この害虫は、シストと呼ばれる覆いにくるまれ、どんな過酷な環境でも生き延び、どんな農薬でも死なない。この線虫が蔓延しているため、長い間、米国産ジャガイモの日本への輸出は禁止されていた。
しかし、米国政府の圧力に屈し、2006年に部分的に輸入が解禁され、その範囲は徐々に拡大してきた。2006年には、2月から7月と期間を区切って、ポテトチップス限定、シストセンチュウ蔓延地域を外す、土壌を完全除去する、などの条件を付けて輸入を認めた。
米国産ジャガイモには、加えて危険な農薬が多種類使われている。その1つが、輸出の際に害虫対策とともに日持ちや芽止めなどを目的に農薬を塗っていることである。日本ではこのような農薬の使用は違法だ。しかし政府は「農薬を食品添加物とする」という異例の措置で使用を認めてきた。2011年にはフルジオキソニル、2020年には新たにジフェノコナゾールの使用を認めた。
米国産ジャガイモの問題点はそれらだけではない。最近では化学農薬に耐性を持つコロラドハムシが増えたため、その駆除に世界で初めてRNA農薬を使用している。これは「RNA干渉法」と呼ばれる、遺伝子の働きを妨げる方法を用いて虫を殺す、バイオテクノロジーを応用した、これまでにない農薬である。米国グリーンライト・バイオサイエンス社が開発したこの農薬の主成分は、遺伝物質のレドプルナと呼ばれるRNAである。そのRNAが害虫の体内に入り、遺伝子の働きを妨げ、害虫を殺す仕組みで、米環境保護庁(EPA)により2023年12月に、コロラドハムシ向け殺虫剤「カランサ」として登録された。RNA農薬としては世界で初めての登録である。
RNA農薬が干渉するのは、アポトーシス(突然死)遺伝子である。生物には必ずアポトーシス遺伝子という細胞死をもたらす遺伝子がある。しかし、この遺伝子がかってに働いて突然死しては大ごとになる。そのためこの遺伝子を働かせない「アポトーシス阻害因子」というタンパク質をもたらす遺伝子が存在する。RNA農薬はこの遺伝子の働きを壊すのである。アポトーシス阻害因子の遺伝子を壊すと突然死遺伝子が働き、それが重要な細胞だとそのまま死につながり、殺虫剤として機能する。だが、予想もつかないところで突然死が発生したり、生命活動がゆがめられたりするなど、この農薬の安易な使用拡大は、取り返しがつかない事態につながる危険性がある。
米国産ジャガイモについてはさらに大きな問題がある。遺伝子組み換えジャガイモが普及しており、最近はゲノム編集ジャガイモが加わった。これらが生で輸入される可能性が強まった。GMジャガイモは、日本でも食品安全委員会が安全だと評価し、厚労省が2017年7月20日に食品としての流通を承認した。ジャガイモはぶつかった際に黒く変色するが、承認されたGMジャガイモは、遺伝子組み換えでこの黒く変色するのを抑え、加えて発がん物質のアクリルアミドを低減したものである。しかし、このGMジャガイモには新たな毒素が作られるなど、食の安全を脅かす深刻な問題があると、開発したJ.R.シンプロット社の研究者カイアス・ロメンスが指摘している。
J.R.シンプロット社が開発したゲノム編集ジャガイモは、2024年10月16日、消費者庁が届け出を受理し、すでに流通は可能だ。このゲノム編集ジャガイモは、ゲノム編集技術によって小粒ながら数が増える操作を行ない、収量増をもたらす。現在の日本では、ゲノム編集作物については、安全審査もなく、食品表示も必要なく、使われているかどうかわからない。このまま輸入が解禁されれば、国産ジャガイモの生産は崩壊し、食卓に登場するジャガイモは、危険な米国産にとって代わられる可能性が強まる。