■2002年7月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
ブラジルで非合法栽培拡大

 ブラジルでは現在、遺伝子組み換え作物は実験目的の作付けだけが認められており、商業作付けは認められていない。その同国で、認可を受けないままモンサント社の除草剤耐性大豆の作付けが広がっている。アルゼンチンからの種子流入が原因と考えられるが、同大豆を作付けすると収量が著しく落ち込むこともわかってきた。この原因をめぐって大豆そのものが原因か、作付けの方法が悪いのかといった論争が起きている。

ジンバブエがGMトウモロコシを拒否

  厳しい食料不足に陥っているジンバブエが、1万トンに及ぶ米国からのトウモロコシ援助の受け入れを、遺伝子組み換え作物でない保証がないとして、拒否した。輸入された作物が種子として使われれば、ジンバブエに遺伝子組み換えトウモロコシが広がる可能性がある。ジンバブエの農作物を保護するための政策である。〔ガーディアン・ウェブニュース 2002/6/6〕

●遺伝子汚染 
Nature 誌騒動 モンサント社が糸を引く?!

 英 Ecologist 誌〔2002/5〕で、ジョナサン・マシューズは、メキシコでのトウモロコシ遺伝子汚染事件にモンサント社が深くかかわっていると述べた。
 この事件は、米カリフォルニア大学の研究者が、メキシコでトウモロコシの原生種が組み換え遺伝子に汚染されているとNature誌で報告したのに対して、批判が相次ぎ、同誌が論文を撤回するという異例の事態に発展したものだ(本誌2002年6月号)。集中攻撃を行ったE-mailの発信先を手繰っていくと、テオドロフ・マニュエルという名に突き当たり、この人物を調べるとモンサント社が浮かび上がった、という。


●アカデミズム
全米科学アカデミーが方針転換か?

 遺伝子組み換え作物の研究推進の立場にあった全米科学アカデミーが、遺伝子組み換え作物の全面的な見直しを勧告した。同アカデミー国家研究諮問委員会は、遺伝子組み換え作物の環境への影響の事前評価を厳密に行うこと、市場に流れた後も生態系に影響はないか監視すること、一般市民に対して情報を公開することなどを、農務省に対して強く勧告した。また、殺虫性作物がもたらす、害虫以外の生物への影響に関して、企業が申請する際に提出した評価は、見掛け倒しであると厳しく指摘している。〔Nature Biotechnology 2002/4〕


●遺伝子組み換え魚 
外来種のコイ駆除に遺伝子組み換え魚

 オーストラリア政府は、河川で増えているヨーロッパ原産種のコイを駆除し、元来の生態系を回復させるため、次世代のほとんどを雄にするように遺伝子を改造した雄魚を放流する計画だ。
 全オーストラリア研究機構(CSIRO)のチームが研究を進めているが、他の研究者たちから最低7年の試験期間が必要であるという指摘がなされている。またパーデュ大学のウイリアム・ミューアのように、放流が生態系に対して破滅的に作用する可能性がある、と警告する研究者もいる。〔New Scientist 2002/5/8〕


●クローン人間
ミズーリ大学が、クローン人間で特許を取得?!

 米ミズーリ大学が昨年取得した哺乳類の生殖にかかわる特許が、クローン人間に対しても権利が及ぶ可能性が出てきたと、国際技術評価センター・特許監視プロジェクトチームが懸念を表明している。この特許はクローン技術で作られた卵を活性化させ、胚に発達させる方法に関して権利を与えたものだが、哺乳類全体に及ぶため、人間も例外ではないからだ。もちろん再生医療に応用されれば、臓器や組織にも、同大学の権利は及ぶ可能性がある。


●食品表示
コーデックス委員会、食品表示論議は平行線

 遺伝子組み換え食品の表示問題を検討しているコーデックス委員会食品規格部会が、5月6日から5日間、カナダのハリファクスで開催された。表示は基本的に不要とする米国、タンパク質と遺伝子が検出されない食品に関しては不要とする日本等、全食品表示を主張するインド等、この3者の主張が平行線をたどった。ヨーロッパ勢は、日本とインドの主張に分かれた。結論の目途は立っていない。


●企業動向
モンサント社、来年度売り上げは10億ドル増?

 米モンサント社は、2003年の売り上げが10億ドル増加する可能性があることを明らかにした。同社のヘンドリック・バーフエイリー最高経営責任者が5月21日に述べたもので、インドやブラジルでの新たな作付け(本誌2002年6月号)を見込んでの数字だ。

日本モンサント社、除草剤事業を売却

 5月30日、米モンサント本社、日本モンサント社は、日本における自社の除草剤販売部門を日産化学に売却することで合意した。その結果、最大の販売量を誇るラウンドアップの国内販売は、日産化学へと移行した。日本モンサント社は、遺伝子組み換え作物などのバイオテクノロジーに特化して事業を展開していく。

日本たばこ産業、オリノバから手を引く

 日本たばこ産業は、遺伝子組み換えイネの共同開発のために、スイス・シンジェンタ社と共同でオリノバ社をつくり、運営してきた。同社は5月9日、7月1日付でこの合弁事業を解消することを発表した。この離縁によって、日本たばこ産業はバイオ研究、オリノバ社を引き継ぐシンジェンタ社は育種を中心に取り組むことになる。これまで同社が開発してきた酒造用の遺伝子組み換えイネの実用化は、目途が立たなくなった。


ことば
*コーデックス委員会(CODEX) 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で組織する食品規格委員会。本部はローマ。詳細は本誌2002年3月号、キーワード参照。