1日に朝の1往復しか列車が来なくなってしまったことで知られてしまった札沼線の浦臼~新十津川間の末端区間。その途中駅にある於札内はとりわけ雪の時期に独特な存在として佇む駅である。

 人の身長ほどに積もり積もった雪の中から、ひょっこりと顔を出す標識。未舗装である於札内の駅前の道路は12月から3月までは車両通行止めとなり、ホーム裏手の道は除雪されずに行く手を阻まれる。夏は田畑に囲まれているだけだが、冬場は雪に囲まれた冬の秘境駅、それが於札内である。

 冬は雪に囲まれていながらも、列車は1日1往復確実に停車することに着目して、雪が残る時期にあえて於札内に降りてみた。コンクリ敷きのホームにトタン造りの待合室、その待合室入口の上には長年の風雪にさらされて錆びついてしまった駅名標がある。

 於札内は、駅の周りが雪で完全に閉ざされて誰も来ることが出来ないと思っていたのだが、駅近くの踏切から広域農道へとつなぐ道は人が通れる程度に除雪されている。それでも朝は道が凍っていて、慎重に歩かなければならない感じだ。

 於札内の駅の状況が分かったところで、朝コンビニで買ったおにぎりを食べようとしたら、人の足音が聞こえ、待合室に入って来ると、旅行者である私に「こんにちは」と挨拶をしてくれた。思わず「あなたはなぜ秘境駅に来たんですか?」と聞いてみたくなってしまう登場の仕方だったが、話を聞いてみると冬の間だけ札幌方面へ行く時には列車を使うという地元の利用者だった。地元の方も札沼線の将来的な廃止の噂は耳にしているようで、「ここが廃止されたら困る」と言っていた。

 冬場は雪で秘境度が急激に増す於札内。それでも地元の利用者がいるという奇跡に遭遇し、冬でもきちんと於札内の存在意義があることを確認することができた。

                                                        (2018.3.5)
於札内の駅前の道路は12月~3月の間は車両通行止めとなっている。
ホームから見た於札内の踏切。住民がいる広域農道までは人が通行できる程度に除雪されている。
Osatsunai
朝だが、於札内に本日始発にして最終の石狩当別行きの列車がやって来た。
於札内にやって来る列車は1日1往復。廃止になるという噂も聞く。
於札内の駅構内。ホーム裏手の道は全く除雪されずに積もったままだ。


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於札内