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3月14日「朝日新聞ホームページ」より
スウェーデン
■《天声人語》
北極圏にあるスウェーデンの国立研究所でオーロラ研究を続ける山内正敏さんが、全身の筋肉が動かなくなる難病に襲われた。一昨年10月、41歳のときだ。
発病2日で急速に麻痺(まひ)が進み、息もできなくなった。3カ月たって人工呼吸器がはずれ、4カ月後にリハビリテーション病棟へ。筋肉の回復はゆっくりだった。1年後、口で操作していたパソコンをかろうじて手で操れるようになり退院した。
高負担高福祉の国として知られるスウェーデンは、入院中に医療費はかからない。部屋代などとして集中治療室にいるとき月約1万円、リハビリ病棟で約4万円で済んだ。給料は病気になっても9割が無期限に出る。一般的には8割だという。
姉の美佐子さんは独身の弟を気遣い、発病直後と2カ月後に病院を訪ねた。家族は患者の心に「寄り添う」だけでよく、日本のように「付き添う」必要はなかった。その分病院には大勢の看護職が働いていた。
まだ全身麻痺状態なので、5人の介護者が交代で24時間つく必要性を行政が認めた。介護者の給料は税金から出るが、法律上の雇い主の山内さんが、非喫煙者などの条件で面接して採用した。入院生活と比べ面倒は増えたが、夜遅くまで友人と酒が飲めるなど自由が快い。今は週に2日通勤し、自宅でも平均2時間パソコンで仕事する。
スウェーデンの福祉制度も経済危機に見舞われ揺れている。それでも、病人を支える制度がこれだけある。「日本で発病しなくて幸せだった」と山内さんはいう。日本に住む身として、考え込んでしまう。
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2006年5月25日更新
【中国】高齢者介護サービス 外資に全面開放検討 65歳以上1億人超
■医療整備急ぐ
六十五歳以上の人口が中国で昨年末に一億五十五万人と一億人の大台に乗ったことが、民政省の「二〇〇五年民政事業発展統計リポート」で明らかになった。高齢者数は医療設備が整っている都市部で増大する傾向にあり、北京の場合、三十年以内に人口の38%までが六十歳以上になる予測もある。「一人っ子政策」の反動で急速に進む高齢化社会への対処とし、国務院(内閣)は、外資に対する介護ビジネスの開放を検討している。(河崎真澄)
民政省のリポートによると、全人口に占める六十五歳以上の比率は昨年末で7・7%と前年末に比べ0・1ポイント増えた。また北京市高齢化問題研究センターでは、〇三年段階で北京市に百八十八万人の六十歳以上の高齢者がおり、人口比率で13%を占めたが、一〇年にはこれが二百十七万人で14%、四五年には六百万人で38%と加速度的に増大すると予測している。
≪優遇税制も≫
国務院ではこうした事態への対応として、これまでサービス業の国内保護策として外資参入を規制してきた高齢者介護サービスを、全面開放する方向で検討に入った。合弁や100%外資などさまざまな資本形態で参入できるほか、優遇税制や資金融資面での政府支援なども盛り込んで法整備を進めているという。
不良債権の処理に苦しむ中国の商業銀行が、ここ数年は融資先の担保や収益性などを厳格に審査し始め、
介護サービスなど高齢者事業は非営利性が強いなどとして、運転資金の融資を打ち切られるなどの問題も発生していた。国務院では高齢者事業は単純な民間案件とは異なるとして、外資導入なども優遇しながら医療制度や介護制度の見直しも進める見通しだ。
こうした高齢者対策については、社会問題として国家レベルで取り組むとの姿勢に加え、退職し時間に余裕にできた高齢者が「法輪功」など、中国当局が“邪教”として取り締まる集団の勧誘を受けやすいとの危惧(きぐ)を抱いたことも背景にありそうだ。民政省によると高齢者に「生きがい」を与えるための公的な教育機関が全国に四万五千カ所以上あり、約四百三十万人が登録されている。
このほかにも高齢者に仕事を斡旋(あっせん)する機関も四千カ所以上置いている。労働社会保障省によると、六十歳以上で定年退職した人のうち昨年末段階で二千六百五十五万人が、清掃など地域社会での受託作業員として職を得ている。
農村部を中心に、年金や健康保険など社会保障制度の未整備な地域の多い中国は、高齢者に不満がたまりやすい構造になっている。 ≪抗議活動に波及≫
アナン国連事務総長の訪中にあわせた形で、二十日には国連機関北京事務所が入っている建物に高齢者も含む地方の農民など約百人が抗議活動を行い全員が拘束される事件が起きた。農村に対する差別問題に加え、リストラや高齢者対策の手薄さなどが住民をこうした抗議活動に駆り立てているとの見方もある。中国当局は急務となっている高齢者をめぐる社会的不安要因への対処の一つとして、外資への介護サービス開放などで解決の糸口を探っているようだ。
(フジサンケイ ビジネスアイ) - 5月25日8時32分更新