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ダーガーは生前自分のつくったものを他人に見せることなく、亡くなった。部屋に遺された作品を発見したネイサン・ラーナーは、ダーガー作品が、その作者とはまったく無縁だった美術資本主義に飲み込まれないよう、画商、美術館、評論家といった業界関係者とは慎重に距離をとっていた。しかし、ダーガー作品の真価を世の中に知らしめるためにいくつかの決断を下し、重要な展覧会への出展に同意した。そのなかから、非営利の会場で開催された展覧会を記しておきたい(小出由紀子)

1977 Realms of Unreal The works of Henry Darger

Hyde Park Art Center, Chicago / September 25 - November 5,
会場となったハイドパーク・アート・センターは、1960年代から70年代にかけて地元の現代美術をバックアップした非営利ギャラリーで、レイ・ヨシダ、ロジャー・ブラウンなど、シカゴを代表する作家を育てた伝説的スペースである。彼らはまたアウトサイダー・アートの支持者としても知られており、プロの芸術家がアウトサイダーアートを擁護するシカゴ特有の文化的土壌が伺える。カタログに収録されたネイサン・ラーナーの『個人的追想』には、ダーガー作品を発見した彼の複雑な心境が語られている。ダーガーが生きた現実を知ってほしいというネイサンの考えから、会場にはダーガーの部屋が復元された。この展覧会は、この年シカゴで開催された展覧会の最高賞に輝いた。

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1979 Outsiders

Hayward Gallery, London
ジャン・デュビュッフェがパリで主宰していたアール・ブリュット協会の、唯一のイギリス人会員だったヴィクター・マスグレイヴとロジャー・カーディナルが企画した展覧会。アドルフ・ウェルフリやアロイーズら、ヨーロッパのアウトサイダーとともに、ダーガー作品6点が展示された。

1993 Parallel Vision
Los Angeles County Museum of Art, Los Angeles / October 18, 1992 - January 3, 1993
Museo Nacional Reina Sofia, Madrid / February 11 - May 9, 1993
Kunsthalle Basel, Basel / July 4 - August 29, 1993
Setagaya Art Museum, Tokyo / September 30 - December 12, 1993
20世紀美術のルーツをアウトサイダー・アートに探ったこの展覧会は、「Art and Technology アートとテクノロジー」「Degenerate Art 退廃芸術」「 The Spiritualism in Art 芸術における精神的なもの」など、数々の野心的な展覧会で知られるモリス・タックマンが放った最後の一撃。パウル・クレーをはじめ、アンドレ・ブルトンやマックス・エルンスト、ジャン・デュビュッフェを経て、ジャン・ティンゲリー、アネット・メサジェまで、20世紀美術史を形成してきた主要作家がアウトサイダーから受けた精神的、形式的影響を検証した。ダーガー作品はシカゴ・イマジストたちとの絡みで5点出展されたが、居並ぶ有名作家を押さえて観客の目を釘づけにしたのは、無名のダーガーだった。カタログに収録されているマグレガー博士の論文『私は世界の中に世界を見る:私は目覚めている時、夢を見る』は必読。

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1996-98 Henry Darger: The Unreality of Being
The University of Iowa Museum of Art / January 13 - March 10, 1996
Museum of American Folk Art, New York / January 11 - February 8, 1997
Center for the Arts, San Francisco / September 20 - November 30, 1997
The High Museum of Art, Atlanta / December 13, 1997 - March 7, 1998
Chicago Cultural Center, Chicago / April 4 - May 31, 1998
スティーブン・プローコーポフが企画したダーガー回顧展。58点を展示。アイオワでは保守的な土地柄を考慮してか、暴力的な内容の絵は展示されなかったが、ニューヨークでは5点を追加し、児童虐待や性倒錯など、今日的問題を投げかける内容が論争を呼んだ。ネイサン・ラーナーは、このニューヨーク展を見とどけるかのように、1997年3月に亡くなった。当初2会場の予定だったが、ニューヨーク展の反響が大きく、サン・フランシスコ、アトランタ、シカゴにも巡回した。

Catalog / Web Site パンフレットの内容を見ることができます。

1996 Henry J. Darger Dans les Royaumes de l'Ireel
Fondazione Galleria Gottardo, Lugano / September 9 - November 16, 1996
Collection de l'art brut, Lausanne / May 25 - September 7, 1997
ローザンヌのアール・ブリュット収集館が所蔵するダーガー作品30点を展示。これらの作品は現在、常設展示されている。カタログはフランス語版(作品社版原書)とイタリア語版がある。

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1997 ヘンリー・ダーガーが生んだ少女たちの王国
Shiseido The Ginza Art Space, Tokyo / January 14 - February 16, 1997
ローザンヌのアール・ブリュット収集館の所蔵作品から14点を展示。出展作品すべての図版とマグレガー博士の随筆の日本語訳を収録した『ル・ミレニュム』は貴重資料。

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