●遺伝子組み換えイネ
イネゲノム解析、年内終了か
イネの全遺伝子を読み取ろうという、国際イネゲノム解析計画は、2002年12月を目標に、4億3000万あると推定されている、イネのすべての塩基配列を読み終えることで合意した。昨年12月21日、農水省が発表した。これは、解析が難しい部分を除くすべてを解析するもので、当初予定の2008年終了から大きく前倒しされた。
この計画は、国際的に協力して進められ、日本では農水省が中心になって取り組んできた。全塩基配列読了の半分は日本が担う予定である。これによって遺伝子組み換えイネの開発に弾みがつくことになる。
イネの遺伝子利用のためのセンター設立
農水省は、イネのタンパク質解析を進める、ゲノム解析センターづくりに着手した。2001年度の補正予算が認められ、筑波にある農業生物資源研究所内につくられる。これは、遺伝子がどのようなタンパク質をつくるかを解析するなど、ポスト・イネゲノム解析をにらんだ研究施設である。
●ES細胞
再生医療の臨床応用指針の検討始まる
厚労省は、ヒトES細胞などの幹細胞を用いた、再生医療の臨床応用に際しての指針作りを、新たに専門委員会(厚相諮問機関)を設置して本格的に始めた。すでに文科省が「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」の運用を開始し、京都大学の計画などを非公開の専門委員会で審査しているが、対象はあくまでも基礎研究で、臨床応用まではカバーしていない(本誌2002年1月号)。今回の指針は、ヒトES細胞から作り出した神経細胞をパーキンソン病の患者の脳内に注入するなど、実験段階にある医療を実施するために作成される。つまり、樹立から使用、そして人への応用まで、ヒトES細胞研究の道筋すべてが整備されることになる。
●遺伝子組み換え食品
遺伝子組み換えパパイヤが流通
埼玉県で1月25日、未承認の米国ハワイ産遺伝子組み換えパパイヤが見つかった。ウイルス(リングスポット・ウイルス)抵抗性パパイヤである。米コーネル大学、ハワイ大学、アップジョン社が共同で開発した、このパパイヤは、98年からハワイ州で商業作付けされている。
パパイヤは、病気の侵入を食い止めるため、植物防疫法によってハワイ産以外の輸入は認められていない。日本でも沖縄や奄美大島などで作付けされているが、市場はほぼ、ハワイ産によって占められている。
輸入作物のチェック体制がほとんど無きに等しい現在、日本に輸入される遺伝子組み換えパパイヤの量も少なくないはずだ。
拡大する遺伝子組み換え作付面積
NPOのISAAA(国際アグリバイオ技術事業団)は、このほど2001年の遺伝子組み換え作物作付け状況を発表した。
表1 国別作付け面積
(万ha)
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表2 作物別作付け面積
(万ha)
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米国 |
3,570(68%) |
アルゼンチン |
1,180(22) |
カナダ |
320(6) |
中国 |
150(3) |
その他 |
40(1未満) |
計
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5,260(100) |
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大豆 |
3,330(63%) |
トウモロコシ |
980(19) |
綿 |
680(13) |
ナタネ |
270(5) |
その他 |
―(1未満) |
計
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5,260(100) |
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(参考・日本の国土の広さは、3780万ha)小数点以下四捨五入 |
作付け面積は前年(4420万ha)より拡大(5260万ha)しているものの、作付け国は米国、カナダ、アルゼンチンで96%を占めており、3か国中心という状態に変化はない。また作物の種類は、大豆など4作物にほぼ限定されており、ジャガイモが消滅したことから減少に転じている。
●遺伝子汚染
メキシコの遺伝子汚染の余波
メキシコ・オアハカ州でのトウモロコシ原生種から遺伝子組み換えで用いられる遺伝子が検出された事件(本誌2002年1月号)で、メーカー側が反論を準備するなど波紋が広がっている。
現場は米国との国境から約1000km離れている。筑波大学名誉教授生井兵治の試算では、風速5m/sでトウモロコシの交雑可能範囲は最大864kmとなるが、条件によっては1000km離れていても起こりうるだろう。原因は、花粉の飛散による可能性が高い。
メキシコ政府は、隣のプエブラ州でも調査を行うと表明しており、この遺伝子汚染が、カルタヘナ議定書の論議の中心になることは必至である。
ことば |
*リングスポット・ウイルス
パパイヤに輪状斑紋(リングスポット)を生じるウィルス。枯死に至る。
*ISAAA
International Service for the
Acqusition of Agri-Biotech
Applications.。
*カルタヘナ議定書
1992年に採択された生物多様性条約に、その検討が明記されたバイオセーフティーに関する議定書で、名前は99年2月に会議を開いたコロンビアのカルタヘナからとった。
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