=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━ ┛┛ ┛┛ 英語の文法と語法 No.123 20090508 Chick Tack ┛┛ ………………………… …………… ……………… …………… ┛┛ http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/index.html ┛┛┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 第123号 ● ……………… Contents 動名詞を目的語とする他動詞-2 ……………… (1)動作の実現に消極的な意味を出す動詞 (2)回避 (3)延期・遅延 (4)終了・休止 ……………………………………………………………………………………………… (1)動作の実現に消極的な意味を出す動詞 ……………………………………………………… 前号に続き、動名詞に導かれる句(以後〔動名詞句〕)を好んで目的語にす る他動詞の特徴をみてみる。 江川泰一郎著『英文法解説(改訂三版)』金子書房の§243-B には、 http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#newguide 「動名詞は動作の実現に消極的な含みを持つ動詞と結合する」と記されてい る。 そして、それらの動詞が〔回避〕〔延期・遅延〕〔終了・休止〕に分類され ている。 ……………………………………………………………………………………………… (2)回避 ……………… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ・回避・・・avoid, escape, evade, cannot help, miss resist; mind ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (a) I listened to the patient's breathing, and avoided answering. (“A Tale of Two Cities”by Charles Dickens) 「私はその患者の呼吸を診た。そして、返答を避けた」 田中茂範ほか著『英語感覚が身につく実践的指導 コアとチャンクの活用法』 大修館の 3.7.2 には、次のように書かれている。 http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#cc ====引用始まり================================================= refuse という動詞は to do を目的語とし、avoid は doing を目的語 とするという事実がある。avoid は行為と正面から向かわずそれをか わすということであり、to do ではなく doing が選ばれる。一方、 refuse のほうは「(心理的に)ある行為と向き合ってキッパリと拒否 する」という意味合いであり、「心理的に行為に向かう」という部分 が重要である。 ========================================引用終わり============= 正面とは向き合わず、逃げたり避けたりすることを表す他動詞が、動名詞句 を目的語にするようだ。 (b) You can hardly escape being seen if you go out now. 「今出てゆけば、人目につかないというわけにはいきません」 (安井稔著『英文法総覧(改訂版)』開拓社) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#betterguide 「もしあなたが今外に出て行けば、見られることを避けることは、ほとんど できない」が逐語訳。 being seen は受動態が動名詞になっている。 hardly は「ほとんど~ない」という否定の副詞。 (c) He can't evade doing military service forever. (“Cambridge Advanced Learner's Dictionary 2nd edition”evade) 「彼は、軍役を永久に逃れられるわけではない」 「いつかは兵役に就かなければいけない」ということだ。not...forever は〔部分否定〕。 (b)(c)に見られるように can の否定と組み合わされることが多いようだ。 (d)(×)The girl's parents couldn't help to worry about her. (○)The girl's parents couldn't help worrying about her. (“LONGMAN Dictionary of Common Errors New Edition”help) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce 「その少女の両親は、少女のことを心配せずにはいられなかった」 この help は「~を避ける」という意味。“cannot help doing”で「…… せずにはいられない」「……しないわけにはいかない」という意味になる。 試験にもよく出題される。“cannot help but do”でも同じ意味を表せる。 The girl's parents couldn't help but worry about her. “cannot but do”という表現もある。これらの表現の成り立ちについては、 酒井典久著『英語のしくみが見える英文法』文芸社(P16~P23)、に考察が ある。http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#sakai (e) We miss watching her ride her horse. (“Macmillan English Dictionary: For Advanced Learners of American English”Palgrave Macmillan) 「私たちは彼女が乗馬するのを見逃した」 「避けた」り「逃げた」りしたわけではないけれど、見るという動作とは 「出会わなかっ」た。 もう少し後で取り上げるつもりだが、watching her ride her horse の部分 は“知覚動詞+O+原形不定詞...”となっていて、「Oが原形不定詞する のを知覚動詞する」という意味になる。「彼女が馬に乗るのを見る」。 蛇足気味だが、前の her は目的格で、後ろの her は所有格。 (f) The bank strongly resisted cutting interest rates. (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 7th edition”) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald 「その銀行は金利を下げることに、強硬に抵抗した」 逃げているのではなく、正面から積極的に抵抗しているように見える。to不 定詞の方がふさわしいようにも思えるが、resist の目的語は〔動名詞句〕。 打って出るよりは、流されないように耐えて立っている、という意味がある からだろうか。 安藤貞雄著『現代英文法講義』開拓社(16.6.1)では、「(前略)あとにくる 動名詞は、通例、『事実指向的』という特徴を共有している。言い替えれば 『動名詞節の内容が真である』ことを話し手が前提としている、ということ である」と説明している。これは動名詞句を目的語とする他動詞についての 解説である。 resist について当てはまるのかは不明。少なくとも、前回「動名詞は〔時 間的に過去〕」という欄で紹介した動詞には当てはまることが多い。過去の 〔事実〕が動名詞で表されているのだから。 (g) I don't mind doing it again. 「またそれをやってもいいですよ」 (研究社『ルミナス英和辞典第2版』竹林滋;小島義郎;東信行;赤須薫編) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#leg mind は「~を嫌がる」「~を迷惑に思う」という意味。「嫌がり避ける」 ということで「逃げる」ことにつながるのだろう。 「私はそれをもう一度やることを嫌がりません」 →「またそれをやってもいいですよ」 ……………………………………………………………………………………………… (3)延期・遅延 ……………………… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ・延期・遅延・・・postpone, delay; put off ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (a) We've had to postpone going to France because the children are ill. (“Cambridge Advanced Learner's Dictionary 2nd edition”) 「子供たちが病気なので、私たちはフランスに行くのを延期しなければな らなくなっている」 have to「~しなければならない」が完了形になって have had to となって いる。「延期しなければいけなくなって、現在も延期を余儀なくされている」 のである。 「冷戦後」というのを「ポスト冷戦」ということがある。post は「~の後」 で、pone は「置く」という意味の語が形を変えたもの。「後ろに置く」→ 「後回しにする」。 (b) Big companies often delay paying their bills. (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce 「大きな会社は、しばしば支払いを遅らせる」 延期・遅延も〔消極的〕な感じはする。 (c) I've put off writing the letter so many times. I really must do it today.(“English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy, exercises. 53.1.9) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#egu 「私はこれまで、相当何度もその手紙を書くことを引き延ばしてきた。 今日は本当に、それを書かなければいけない」 “put off”で1つの〔他動詞〕と考えることができる。2語以上がまとま って1つの動詞のように働くものを〔句動詞〕〔群動詞〕などと呼んでいる。 put off は、ここでは postpone の意味。口語では postpone よりも多く使 われる。試験にもよく出る。 ……………………………………………………………………………………………… (4)終了・休止 ……………………… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ・終了・休止・・・finish, quit, stop; give up, leave off ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (a) I'll finish shelling them myself. Do as I bid you. (“Anne of Green Gables”by Lucy Maud Montgomery) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#green 「私は自分でそれら(豆)の殻むきをやり終えるから、あなたは私の言う [言った]通りにしなさい」 ここでは「気合いが入っている」ように思われるが、一般的に〔終了〕には 消極的な面がある。いや、「殻むき」「さや取り」という行為の継続を止め るわけだから、「その行為に対しては〔消極的〕」と考えるべきだろう。 as は〔接続詞〕とされる。「I bid you のように do せよ」ということ。 今までやってきたことを終えるのだから、(2)(f)のところで紹介した 〔事実指向的〕とする動名詞句の性質は、当てはまっていると思う。この欄 の他の例文も「それまでやってきた」という〔事実〕は存在する。 (b) I was trying to quit smoking at the time. (“Collins コウビルド英英辞典 改訂第5版”トムソンコーポレーション) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#cobuild 「私はその時、喫煙をやめようとしていた」 禁煙をするのは、かなり積極的な気もするが、「喫煙する」という行為から みればそのうち消しなので〔消極的〕。 (c) Nobody can stop him doing what he wants to. (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu 「彼がやりたいことをすることを、誰も止められない」 「彼がやりたいと思うことを止めることは、誰もできない」 him は doing の〔意味上の主語〕。what he wants to は doing の目的語 になっている〔名詞節〕。what は〔先行詞〕を含む〔関係代名詞〕。 he wants to do の do が省略されている。to で to do の代わりをしてい ると考え、〔代不定詞〕という言い方がある。doing との重複を避けている。 (d) For the love of mere gold he was willing to give up being a splendid giant.(“Opera Stories from Wagner”by Florence Akin) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#wagner 「単なる黄金への愛着のために、彼は喜んで立派な巨人であることをやめた」 前置詞が前にある名詞は、文の〔主語〕ではない。the love は for の目的 語で、mere gold は of の目的語なので、主語ではない。主語は he。 “be willing to不定詞”で「喜んで~する」「快く~する」「~するのを いとわない」。 to give up は〔to不定詞〕だから〔積極的〕に行い、being a splendid giant は〔動名詞〕なので、それに対しては〔消極的〕。そうであることを 取りやめている。 それから to give up するのに対し、それまでは being a splendid giant であった。 (e) If I had been better advised, I should have left off doing what I only did unintentionally. (“Apology”by Plato, translated into English by Benjamin Jowett) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/plato.html 「もし私が、よりよく忠告を受けていたならば、そのつもりが全くなくや っていたことをやめていたであろう」 「もし私が、もっと適切に忠告を受けていたならば、本当に故意にやって いたのではないのだから、やめていただろう」 〔仮定法過去完了〕。この文法は第68号などで紹介した。 http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/061-070/egu068.html#1 ……………………………………………………………………………………………… 参考文献 http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html ……………… http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html ──────────────────────────────────── □このメールマガジンは、以下のメルマガ・スタンドから配信されています。 ・まぐまぐ! :http://www.mag2.com/ ・めろんぱん :http://www.melonpan.net |
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Dad, if my grades improve by the end of the term, would you mind ( ) my allowance?
1.raising 2.rising 3.to raise 4.to rise
1
日本語訳例:もし今学期の終わりまでに私の成績が上がったら、おこづかいを上げてね。
「おこづかいを上げる」だから、「おこづかい」は目的語。目的語を取るのは他動詞。raise が他動詞、rise は自動詞。
1か3が正解となる。
mind の目的語は動名詞が担当するので、1の raising が正解となる。
ちなみに、raise の発音は[reIz レイズ]。rise は[raIz ライズ]。raise の a はローマ字読みではなくアルファベット読み。i は無視していると考えてもよい。rise の i もローマ字読みではなくアルファベット読み。