「ね……宍戸さん、気持ちいいですか……?」 耳元で熱く甘く囁く声に、もう何も考えられなくなった。 無我夢中で首すじにかじりついて、たくましい背中に爪痕を残す。 痛みを堪えながらも鳳は幸せそうに笑みを浮かべて、貪るように唇を合わせた。 sweet-s-hot 1「宍戸さん、どこか行きたいとこあります?」 唐突な鳳の質問に、宍戸は箸を銜えたまま怪訝な顔を向けた。 「ほら、もうすぐ宍戸さん誕生日じゃないですか。ちょうど日曜日だし、ふたりでどこか旅行行きませんか?」 「旅行って……おめー、部活あんだろ」 代替わりしてすぐ、9月下旬の土日に部活がないなんてことは考えられない。根が真面目な宍戸がサボりを注意しようと口を開くと、鳳はこれでもかというくらいのさわやかな笑顔を満面に浮かべた。 「いやだなあ、そういう時こそ部長権限の使い時じゃないっすか!」 「長太郎…………あんまし跡部のこと見習うんじゃねぇぞ……」 思わず脱力して、切実な願いの割には力のない声になった。励ますように、やわらかな秋の風が屋上を吹きすぎる。 「さすがに跡部部長には敵いませんよ。それに、今年は特別です。センパイもう引退して部活ないし、俺は部長だから多少の無理がきくし。来年は、俺は引退だからいいけど宍戸さん1年だから、部活サボったりなんてできないでしょう?」 「あ、そうか……」 「ええ、そうです。だから宍戸さん、どこか行きましょうよ」 少し乗り気になったらしい宍戸に、ここぞとばかりに畳み掛ける。 「ね、どこがいいですか?」 「ん…そうだな……、どっか温泉とかでゆっくりすんのとかいいかもな」 宍戸が呟くと、鳳はぱちくりと瞬きをして、ついでゆっくり息を吐いた。 「宍戸さん……。若々しくないですよ……」 「るせぇ!」 「──あ。でも温泉もいいかも。だってそしたら宍戸さんの浴衣姿見られるし、広い露天風呂で思いっき……ィテッ!」 突然頭を殴られて、声を上げた鳳が恨みがましく宍戸を睨む。 「ひどいっすよ、いきなり……。俺まだ何も言ってないのに」 「言わなくていい!」 普段は割と大人びているクセに宍戸に関しては単純明快な鳳の考えることなんて、その顔を見ればすぐにわかるというものだ。睨み返す宍戸の顔はわずかに赤くなっていた。 「ちぇっ……。じゃあ、温泉、行きましょう。どこかリクエストあります?」 「いや、別に。のんびりできりゃどこでも。つーかどこも知らないからな」 「そうですか。じゃあ、草津にしましょう!」 「草津? なんで。知り合いでもいんの?」 「まさか! そんなところじゃ気兼ねなくのんびりなんかできませんよ!」 「い、いや、そんな真面目に返されてもな……。つーか、のんびりっつーかソレ……」 照れるやら呆れるやらで言葉を濁した宍戸に、鳳はさらに大真面目に言を継ぐ。 「温泉って言ったら草津でしょう! 草津の湯でも治せない病気にハマってる俺たちなんですから!」 「長太郎、お前、実はものすごくバカだろ……」 今度こそホントに真剣に、呆れはてて宍戸はため息をついた。 「そっすね、俺、宍戸さん好きすぎて馬鹿になっちゃったかも」 だから責任取ってください。内緒話のように告げられた台詞に、宍戸は顔を赤くして間近の笑顔を睨み返した。 * * * そしてやってきた9月28日土曜日。ホントに土日の部活をナシにしてしまった鳳部長とともに、宍戸は草津の地に降り立った。たった数時間の電車の旅も、ふたりだということだけで何もかもが楽しく新鮮に映る。 鳳の予約した宿はホテルと旅館の中間くらいのところで、シーズンにはまだ早いせいか、あまり他の客はいないようだった。 「お〜っ、イイ眺めじゃん! 長太郎も来いよ!」 「宍戸さん、大はしゃぎして子供みたいっすね。カワイイv」 「──っ! なっ、なに言って……っ!? 放せってばバカ!」 背後から抱きしめ頬をすり寄せる。途端、真っ赤になった宍戸に振り払われて、鳳が残念そうな声を洩らした。自分から逃げ出しておきながら、しゅんと項垂れている鳳の姿に宍戸が困惑気味に頭を掻く。 「……っま、まあその、…………アリガトな」 「──はい!」 一瞬きょとんと宍戸を見下ろして、鳳はやがて満面の笑みを返した。 to be continued... |
言い訳(^^;)(byひろな) 2002.10.29 うわあん、宍戸さんお誕生日おめでとう〜〜(号泣)。──ごめんなさい1月遅れでも間に合いませんでした(泣崩)。 「たるんどる!」(by真田の弦ちゃん)とはまさにこのこと……。 肝心の(?)えっちしーんは後編で…………(^^;)。 くそう、頭の中ではいろいろめくるめく事態になっているのに!!(笑) 宍戸さんがあんなことを! 長太郎があんな……っ(ひとり上手アイカワ(^^;)) ──ああ、空しいわ(涙)。 とりあえず、できるだけ早く続きUPできるようがんばります……。 |