filament 〜透明な欲望〜


 最初は純粋な興味だった。
 自分より強いかも知れない相手。──強い相手。
 確実に勝てるとわかる、弱い相手とやっても面白くない。手強い相手を倒すからこそ、面白い。
 ──倒せないかも知れない。
 ──倒したい。
「ずいぶん熱心に見てるんだね。手塚のこと」
 ふいにかけられた言葉に、越前リョーマははっとして首を巡らせた。隣に並んだ不二周助が、コートを見ていた顔を微笑みに変えて、リョーマに向ける。
「熱烈な眼差し」
 不穏なことを言いながら、不二の表情はいつものにこにこポーカーフェイスだ。
「──なんスか」
 相変わらずのケンカっ早さでリョーマが睨むと、不二の目が一瞬だけ本気になった。
「ねえ、越前君。──たとえば、僕が大差をつけて君に勝ったら、僕のこともそんな目で見てくれるようになるのかな」
 思いがけない言葉にリョーマが目を瞠る。不二はくすりと笑って肩をすくめた。
「この前の勝負は雨でおあずけになっちゃったからね」
「別に、今でもイイっすよ。──負けないし」
「う〜ん、今はパス。勝手なことすると、誰かさんに怒られちゃうしね」
 にっこり笑顔で返して、不二はあっさり話を切り上げ背を向けた。
「センパイ」
 思わず呼び止めたリョーマを、ポーカーフェイスが振り返る。無言の挑発に、天才と呼ばれる男はコートの中でしか見せない鋭い顔になった。
「彼を倒したいと思っているのは、君だけじゃないよ」
 そしてまた、真意の見えない笑顔に戻る。
「なんたって強いからね。──まあ、僕も負けるつもりはないけど」
 突き刺さる視線に構わず、不二の背中が遠くなっていく。瞬きもせず見つめ続けていたリョーマは、やがて小さな吐息とともに目を伏せた。
 顔を俯かせ、キャップのひさしをかすかに上げる。
 射る視線のその先には、灼ける陽差しと光る汗とを纏う、手塚の真摯な横顔があった。


                               fin.





こめんと(byひろな)     2002.5.31

零夜さんのサイト【嗚呼愛しの獣】(すげー名前だ・笑)のOPEN記念にさしあげたものです。
れ〜やしゃんの希望はリョ塚だったわけですが、できあがったのはこんなもの。……コレでも一応、本人はリョ塚のつもりで書いているんですが(^^;)。リョ塚っていうか、リョ→塚ですね。そしてやっぱり不二先輩が出張ってきています……(^^;)。リョ塚はやはり障害のある恋(笑)ってのが一番のミリョクかと思うので、障害と言うにはあまりにも強大な敵を(笑)。←ラスボス(笑)。
リョ塚ラブvが書けなかったので後ろめたくていろいろと言い訳をしたら、れ〜やしゃんに「リョ塚エロも楽しみにしてるよ☆」と、言われてしまいました。──そ、それは私にリョ塚エロを書けと言うことですか……?(^◇^ ;)
さて。
常日頃、白不二を主張している私ですが、この不二先輩はちょいと違います。リョーマの中に潜む部長への想いの種類を自覚させ、かつ宣戦布告をするという……でも黒とは言いたくないのでダークグレイくらいでお願いしますねv(ナニをだ・笑)。
でもこれ、ただのテニスのお話としても、読めますよね? ね? つーかきっと部長に「お前達、何の話をしているんだ」とか言われたら、「え?ただのテニスの話だよ。ねぇ越前君?」「そっスね」なんて素知らぬ振りで答えるのでしょうv BL的にはリョーマ→部長←不二先輩ですが(笑)。
そして、実はこの魔王対決(爆)を、影でこっそり聞いていた人がいました。──さて、誰でしょう?
そう。わかるヒトにはすぐわかる、その名はデータマン・乾! 部長の与り知らぬところで、水面下の闘い(?)は進んでいるのです〜(笑)。→opaque〜不透明の渇望〜


☆このお話は、零夜サマへの贈り物ですので、他の方は勝手に持ち帰ったりしないでくださいね。





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