ネコの王子様


 へとへとに疲れて家に帰ると、玄関から母親に声をかけるだけで済ませて自室に向かっ
た。まずこの堅苦しい学ランを脱いでしまわないことには、何をするにもくつろげない。
「あっ! おっかえり〜♪」
 ドアを開けるなり聞こえた声に、思わず鞄を取り落とす。
 ベッドの上には、特大の猫が転がっていた。
「な……っ!?」
「おっそいよぉー。もう、待ちくたびれて眠くなっちゃったじゃにゃいか」
 ふくれて唇をとがらせて、しかしその瞳は企みが成功した喜びに輝いている。
「な……、ど、どうやって??」
「んー? 『テニス部で一緒の菊丸でーす!』って言ったら、入れてくれたよ?」
 あっさり返った答えに足の力が抜けそうになる。本物の猫よろしく窓から侵入したのか
と思いきや、正攻法(?)で玄関から来たらしい。ってゆーかなんで何の警戒もなくすん
なり部屋にあげるんだ、と思ったが、この天真爛漫を絵に描いたような姿を見て疑う気を
起こせと言う方が無理だと思い直した。
 で、当の猫、ならぬ菊丸英二はと言えば、主がいないこの部屋で、ゆっくりのんびりく
つろいでいたということらしい。
 ベッドの上に起きあがってあぐらをかき、起き上がりこぼしのように上体を揺らすと、
落ち着きなく跳ねた髪が同じようにぴよぴよと揺れた。
「……驚いた?」
 驚いたも何も。一緒に帰ろうと声をかけようとして振り向いたらもういなくて、聞けば
用があるからと真っ先に帰ったと言われてショックと共に疲れも倍増で。
 それで一人さみしく帰ってきたら、こんな不意打ち。
「今日っておまえの誕生日だろ? どうせ練習ばっかで一日終わっちゃうのはわかってた
んだけどさ、何かしたいなーって思って、そんで思いついたのがこの奇襲作戦ってワケ。
だーい成功!」
 にっ、と満足げに笑う。それだけで、今日の疲れも落ち込みもすべて吹き飛ばされてし
まうのだから、我ながら呆れるほどの単純さだ。それともこの笑顔の威力がそれほどのも
のだということか。
「なんか、すっごいプレゼントもらった気分だ」
 思わず呟いたら、満足げな笑顔に得意げが加わった。それに嬉しそうだ、目がきらきら
してる。
 つられて笑って、ベッドに歩み寄る。
 じゃあ、今日のプレゼントは、目の前でゴロゴロ喉を鳴らしてるこの特大の猫ってコト
で良いんだろうか、と、そんなことを考えてみた。


                                                            fin.





こめんと(byひろな)     2002.4.29

かにゃにゃんのお誕生日プレゼントに進呈した、初書きテニプリ創作。
それまでテニス創作書こうなんてちらっとも思っていなかったのに、2月くらいかな、ふと、人んち勝手に上がり込んで「おかえり〜♪」な菊ちゃんの図が浮かびまして(笑)。──これは、ナイショで書いて、奏さんにあげちゃおうかな、と。
なので、最初は相手特定せず、っていうか奏×菊(笑)な感じだったんですが、実際奏さんのお誕生日が近づいてきて、いざ書こうとする段になって、相手のイメージは自然と桃ちゃんに。やはりTOP絵(20000HITフリー→LOOK!)の影響でしょうか? らぶらぶでかわいくて、色使いもあったかくて幸せ気分なイラストですvv
で、できあがったのがこのお話。何て言うんですか、主語のない一人称?(笑) 一応イメージキャラは桃っちだけど、他の人でもいけるようにと思ったのですが、────やっぱ桃かなこれ。
それにしても菊ちゃん可愛いですね〜。誰からも愛されるキャラだよね。同じ日生まれとは思えないくらいに私とはかけ離れた人です(笑)。って今その話は関係ないですね。
ええと。桃っちは犬イメージですね、中型〜大型くらい。菊ちゃんはもちろんネコで。二人でじゃれてんの、可愛いですv コイビトって言うより、基本的にトモダチで、じゃれじゃれしてるイメージかな?

☆このお話は、相沢奏サマへの贈り物ですので、他の方は勝手に持ち帰ったりしないでくださいね。





テニスTOP    Parody Parlor    CONTENTS    TOP

感想、リクエストetc.はコンテンツ欄のメルフォからお願いします