ぎらぎらとした太陽がまぶしい夏の日。
鮮やかなブルーのビキニを着た政宗は、シャチのフロートを抱えてきた慶次と浮き輪を膨らませている幸村を振り返った。
「なあ、どこから行く?」
電車で1時間ほどのところにある遊園地のプールは、混雑を避けて平日に来たこともあり、ほどほどの混み具合だった。一行は荷物を置き、プールサイドの一角を陣取る。
流れるプールやウォータースライダーなど、行くところはいくつもある。1日あれば充分制覇できるが、まずはどこから攻めようかと政宗は仁王立ちしてプールを見渡す。
「どこからでもようござる。水遊びは久しぶりでござれば」
「じゃあさ、濡れ初めってことでみんなでスライダー行かない?」
デッキチェアを運んできた佐助が、けっこうな急傾斜のスライダーを指差した。佐助はわざわざ夏季休暇を取得しての参加だ。佐助の提案に乗ったのは元親。
「面白そうじゃねえか。なあ、毛利よぉ」
「好きにせよ。我は騒々しいことは好まぬ」
そっけない返事をして、萌黄のタンキニを着た元就がさっそくデッキチェアに寝そべる。騒々しいのは好きではないと言いながら、着水プールで待つくらいはしてやってもいいと考えているところが元就なりの協調性だったりする。
「三成はどうする? スライダーもいいが、ワシは三成とのんびり流れるプールを漂うのも捨てがたい」
「どちらでもかまわない。貴様の好きにしろ」
白いビキニの三成は、ウォータープルーフのサンスクリーンを塗るのに余念がない。ここでしっかり塗っておかないと、日焼けで水ぶくれができてしまうのだ。家康は三成の手からサンスクリーンのボトルを取ると、背中に塗るのを手伝う。
政宗のバスタオルやパーカーといった手回り品を置いた小十郎は、そんな一行を諦めの極致の視線で眺めた。
夏季休暇を取って政宗とプールに行く話が、なぜこうなったのか……。
誰かが意図的に邪魔したわけでもないので、考えたところで答えが出るものではないのだが、政宗とふたりっきりでのんびりしたかった小十郎の脳裏から、詮無い疑問が消えることはない。
バランスよく成熟した肢体を惜しげもなく露出した政宗の姿は、目が眩むほど魅力的だが、「よりにもよってこの面子に見せてやることもないのに」という小十郎の苦悩は深い。
まあ、政宗を見ているのは同行者たちばかりではないのだが、まだそこに気付いていないのは小十郎にとっては幸いか。
当の政宗はそんな小十郎の心中に気付くこともなく、佐助の提案に乗る。
「All right! それじゃ、スライダー行くぜ!」
「承知し申した!」
「いいねいいね、夏だねぇ!!」
「ふん、幼稚な駒共よ」
「そう言うなよ、毛利。一緒に滑ってやるから、行こうぜ」
「三成も行こう。きっと楽しいぞ」
「貴様がそう言うなら付き合ってやる」
「で、右目の旦那はどうする?」
ぞろぞろと歩き出す一行の殿で、ひとり苦い顔の小十郎に佐助が訊ねる。「もちろん行く」と応えて、小十郎は立ち上がった。
「そんなにむくれなさんな。あんたが一緒じゃなかったら、独眼竜がプールに行くなんて言い出すはずなかったんだから」
佐助にぽんと肩を叩かれて、小十郎は苦笑して政宗に追いついた。