■200年月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
中国のGM稲栽培、可能性強まる

 中国で来年、遺伝子組み換えイネが栽培される可能性が強まってきた。中国科学院農業センター長の黄季焜は、すでに6年以上も試験を積み重ねており、来年にもゴーサインが出されるだろう、と述べている。
 これに対して、Bt綿が生態系に及ぼす影響を調査している南京環境科学研究所の薛達元は、GMイネが7万5000に及ぶイネの在来品種にもたらす遺伝子汚染に強い懸念を示した。
 現在、中国が栽培を準備しているGMイネは、Btイネ、ニカメイガ幼虫の成長抑制効果をもつCPTI(ササゲ・トリプシン・インヒビター遺伝子導入)イネ、耐病性(Xa21)イネの3種類である。 〔ロイター 2004/10/20〕


●南米事情
ブラジルがまたも暫定措置でGM大豆栽培継続

 ブラジルでは、GM大豆の栽培を認める「バイオセキュリティ法」が10月6日に上院を通過したものの、下院での審議が行われないまま種子を撒く時期を迎えた(前号参照)。暫定的な措置がつづくと支持率低下が懸念されることから避けたかったが、やむを得ずルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、10月15日にGM大豆の栽培を認める政令に署名し、昨年に引き続き暫定措置で乗り切った。〔AgProfessional 2004/10/15〕

ブラジル州知事がGM大豆輸出を禁止

 ブラジルの主要穀物輸出港であるパラナ州パラナグア港は、GM大豆の輸出禁止を継続する。同州のロベルト・レクイアオ知事が、昨年につづき今年も禁止令を発布することが確実になったからである。
 禁止により、昨年は検査などで100qに及ぶトラックの列ができ、大混乱をきたした。今年はGM大豆の栽培の拡大に加えて、トラックが集中しているサントス港とサンフランシスコ港が限界を超えつつあり、車列はさらに長くなりそうだ。中止の影響は、ブラジルの港を利用する隣国パラグアイの大豆生産にも及ぶであろう。 〔AgProfessional 2004/10/27〕

パラグアイがGM大豆栽培国に

 ブラジル・米国・アルゼンチンに次ぐ、世界第4位の大豆輸出国であるパラグアイは、これまでアルゼンチンから不法にGM大豆の種子が流入し、栽培されていたが、10月21日、モンサント社と同国政府は正式に種子の特許料支払いで合意した。
 現在、パラグアイでのGM大豆の作付け割合は、生産量380万トンの60%程度と見られる。今後、GM大豆の栽培が拡大するかは、隣国ブラジルのGM大豆容認の諾否にかかっている。というのは、同国産大豆の30%がブラジルに輸出されるか、ブラジルの港を経由して輸出されているためである。 〔AgProfessional 2004/10/13〕

表1 2003─04年の全大豆生産高 (万トン)
1 米国    6500 (80─85%)
2 ブラジル    5200 (25─30%)
3 アルゼンチン    3240 (90%以上)
4 中国    1620 (0%)
5 パラグアイ    380 (60%)
                     ( )はGMOの占める割合

●北米事情
加州で3つ目のGMOフリー郡誕生

 米カリフォルニア州の4つの郡で行われたGM作物栽培規制をめぐる住民投票の結果、メンドシーノ郡、トリニティ郡につづく3つ目のGMOフリー自治体が誕生した。栽培規制が支持されたのはマリン郡で、他の3郡は不支持だった。フンボルト郡では法案の不備が見つかり、規制推進の人たちも支持拡大が図れなかった。
〔USA Today 2004/11/4〕
 GM栽培規制支持が確実となったマリン郡に対しては、推進派の研究者が同郡政執行委員会のスティーブ・キンゼイ委員長に手紙を送付し、圧力をかけるなど、激しい攻勢がくり広げられた。 〔日経バイオテク 2004/11/8〕

表2 住民投票の結果
  支持   不支持
マリン郡   61%   39%
ビュット郡   39%   61%
サン・ルイ・オビスポ郡   41%   59%
フンボルト郡   35%   65%

●欧州事情
シンジェンタ社がゴールデンライスを無償供与

 スイス・シンジェンタ社は、体内でビタミンAに変わるβ−カロチンを多く含むゴールデンライスの開発を進めてきたが、10月14日、米国で栽培試験を行っていた品種を、ゴールデンライス人道委員会に供与すると発表した。同委員会は、このコメをアフリカなど第三世界に広めるためにつくられた組織で、国際稲研究所(IRRI)、米国国際開発庁などで構成されており、GM作物による食糧援助の拒否がつづくアフリカ諸国に、GM作物を持ち込むための有力な武器になると見ている。〔Syngenta.com 2004/10/14〕

EU対米国のGM紛争、WTOの判定遅れる

 EUのGM作物規制を貿易障壁に当たるとしてWTOに米国が提訴していた案件は、検討を加えてきた紛争裁定処理機関にEUが膨大な科学データを提出し、米国側の検討の時間が必要となったため、来年3月に予定されていた判定の時期は大幅にずれ込むことになった。〔American Soybean Association 2004/11/1〕


●遺伝子組み換え作物
静岡で非食用GMトウモロコシの試験栽培

 来年5月から、島田市にあるシンジェンタ・ジャパン中央研究所神座試験センターで、燃料用エタノールを効率的に生産するために改造したGMトウモロコシの栽培試験を行うことが明らかになった。試験規模は1アールで、GMと非GM品種を120株ずつ作付けする予定。交雑防止のため雄しべを取り除き袋がけをすることになっている。


●自治体動向
北海道のGM食品意識調査

 北海道では、ボランティア活動など5つのテーマで世論調査を7月に行い、テーマの1つに「遺伝子組み換え食品」を入れた。調査は来年4月施行を目指す「食の安全・安心条例」の参考にすることを目的に行われた。調査は北海道全域の満20歳以上2500人を対象にした。有効回収率は54.8%(1369人)で、「遺伝子組み換え食品に不安を感じるか」の質問に、「不安を感じる」(47.7%)と「やや不安を感じる」(34.8%)を合わせると82.5%に達し、「あまり不安を感じない」(14%)「不安を感じない」(2.6%)と大きな差が生じた。