●遺伝子組み換え食品
ロシアの科学者がGM作物に警告
ロシア国立遺伝防衛協会(National Association for Genetic Security)代表の科学者アレキサンドル・ブラーノフは、GM作物がロシア人の健康と農業の両方にとって危険であるとする警告を、プーチン大統領に提出した。
ロシア固有の農作物や食品を駆逐し、外国のバイオ企業の実験場になってしまうことを指摘し、ベビーフードのGM作物使用を禁止し、有害でないことが立証されるまでGM作物栽培は認めるべきではないと提案している。
ロシア科学アカデミーの科学部門代表であるウラジーミル・クズネソフも、GM食品の人体への影響については最終的には何もわかっていない、と疑問を投げかけている。 〔GMウォッチ 2004/10/10〕
農水省、GM作物新たに3品目承認
11月12日、生物多様性影響評価検討会総合検討会が開かれ、日本モンサント社申請のBt綿、デュポン社申請の殺虫性と除草剤耐性の両方の性質をもつトウモロコシ2品目の計3品目が第1種使用として承認された。第1種使用とは、野生生物への影響なしという評価で、野外栽培を許可したものである。
●ES細胞
他人のES細胞を注入する胎児治療
米国メモリアル・スローン−ケタリングがんセンターのロバート・ベネズラとディエゴ・フライデンライクは、初期胚にES細胞を加えることで、心臓・血管の形成が不十分な病気の治療に道を拓いたと発表した。これは心臓・血管の形成で重要な働きをしているタンパク質ができないマウスの初期胚にES細胞を移植し、そのES細胞が分泌する生理活性物質が初期胚を補助して、通常だと胎児の段階で死亡する胚が出産に至ったというものである。 〔Science 2004/10/8〕
研究者は、この方法は人間への応用が可能であり、画期的な治療方法になるだろうとしている。これによって生まれる子どもは、胚細胞と移植したES細胞との「キメラ」となるため、倫理的論争が起きるのは必至である。
●ゲノム
人間の遺伝子数はハエと同程度
日米英仏独中の6カ国の研究チームが、人間の遺伝子が2万2000程度(2万から2万5000の間)であるとする研究結果を発表した。
これは既知の遺伝子数2万に、コンピュータを用いた予測数約2000を加えたもの。数年前までは人間の遺伝子数は約10万と考えられていた。その後、3万2000程度とする推定値が発表されたが、その中に多くの偽遺伝子が
含まれていることがわかり、今回の発表となった。これによって人間の遺伝子数はショウジョウバエと同じ程度だとわかった。おそらく、1つの遺伝子に複数の機能があり、遺伝子間で複雑なシステムがつくられているものと考えられる。今後、遺伝子の機能解析に向けた動きが加速するであろう。 〔Nature 2004/10/21〕
●遺伝情報
企業向け遺伝情報取り扱い指針の検討開始
10月22日、遺伝情報を取り扱う企業を対象とした指針の検討が、個人遺伝情報保護小委員会(経産相諮問機関、産業構造審議会)で行われた。
厚労、文科、経産の3省が定めたヒトゲノム倫理指針の対象は、あくまでも「研究」を対象としたもので、検査会社などが実施する体質検査や親子鑑定は含まれない。そこで、経産省独自で企業を対象とした指針を作成しようと動き出した。指針によって、規制の枠組みが定められ、行政のお墨付きが与えられる。ヒトゲノム解析の研究の進行に伴って今後、企業による遺伝情報の取り扱いがさらに活発化するだろう。
個人遺伝情報保護法制定に向け本格始動
11月2日、厚労、文科、経産による合同会合が開かれ、個人遺伝情報の取り扱いに関する検討が行われた。これまでは主に、既存のヒトゲノム倫理指針と法律それぞれの適用範囲について話し合われてきたが、今会合からは法制化に向けての議論が中心となる。
個人遺伝情報の取り扱いについては、4月に閣議決定された個人情報の保護に関する基本方針では「格別の措置」としか書かれていないが、個人情報保護法の付帯決議には「個別法の検討」が盛り込まれている。しかし、法制化に対しては、罰則つきの法律ができると研究の自由が阻害されるのでは、との研究者からの反発も多く、今後どのように議論が進むのかは不透明だ。
厚労、文科、遺伝子治療指針など見直し
10月22日、ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱いに関する小委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)と、医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)の合同会合が開かれ、遺伝子治療指針と疫学研究指針の改定について検討した。また、厚労省は別に臨床研究に関する倫理指針の改定も進めている。個人遺伝情報保護法の制定に伴い、各省が運用する指針は整合性をとる必要に迫られているためである。
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