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ニュース・クローズアップ
EUと日本の表示制度の違い
7月25日、EU委員会は、遺伝子組み換え作物を使ったすべての食品・飼料の表示の義務化と、混入を1%までしか認めない、
とする新規定を発表した。また、加工品に関しては、製造の全過程を記録し、生産農家まで分かる「追跡可能性」も義務づけた。
「予防原則」が貫かれたといえる。これに対し、米国穀物業界や生産者団体は、この規定は、実現不可能だと強く反発している。
新規定は、今年4月1日から始まった日本の表示制度とは好対照の方針といえる。義務表示の適用は、味噌、コーンスターチ
など29品目に限られ、5%まで混入を認めているため、義務表示となっている豆腐などに「遺伝子組換え」「遺伝子組換え不分別」という表示が、まったくない。これは増えつづける遺伝子組み換え作物の輸入実態とかけ離れたものだ。さらに飼料には表示もなく、追跡可能性も放棄したままである。
米国の組み換え作付け面積事情
遺伝子組み換え作物の作付け面積は増えている。2001年の作付け見通しは、米農務省などによると、トウモロコシ(米国)が
26%(全作付け面積中の遺伝子組み換え種作付け面積の割合、以下同様)で前年より1%増加、ダイズ(米国)が68%で16%
増加、ナタネ(カナダ)が50%で5%減少、綿実(オーストラリア)が37%で10%増加、総作付け面積は大幅に拡大している。
2001年の日本の食品流通に占める組み換え作物の割合
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作付け割合*1 |
日本の 輸入の割合 *2 |
自給率*3 |
食品流通に 占める割合 |
トウモロコシ (米国) |
25% |
米国から約96% |
0% |
24.0% |
ダイズ 米国) |
52% |
米国から約75% |
3.7% |
37.6% |
ナタネ (カナダ) |
55% |
カナダから約81% |
0.1% |
44.5% |
綿実 (オーストラリア) |
27% |
豪州から約99% |
0% |
26.7% |
加工ジャガイモ (米・加) |
1%以下 |
米・加から約85% |
61% |
0.5%以下 |
(生食用ジャガイモは輸入されないため、加工ジャガイモのみの統計)
*1、*2、*3は2000年のデータによる
一方、米国・カナダでの遺伝子組み換えジャガイモの作付け面積は減少の一途をたどり、2002年には消滅する見通しになった。
現在作付けされている組み換えジャガイモは、モンサント社のニューリーフ・シリーズの3種類のみ。世界中で消費者に嫌われたことに加え、マクドナルドが遺伝子組み換えジャガイモを用いない方針をとったことが、最大の理由である。
ac;エーカー=40.5a
消滅するジャガイモの作付け面積(単位・ac)
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1999年 |
2000年 |
2001年 |
2002年 |
ニューリーフ |
25,956 |
4,104 |
84 |
0? |
ニューリーフ・プラス |
4,156 |
3,216 |
600 |
0? |
ニューリーフY |
6,116 |
2,748 |
180 |
0? |
計 |
36,228 |
10,068 |
864 |
0? |
米で、遺伝子組み換え豚肉食される
米フロリダ大学職員により盗まれた遺伝子組み換えブタ3頭が肉屋に持ち込まれ、作られたソーセージを少なくとも9人が
食べていたことがわかった。公式には米国で遺伝子組み換え動物を食した最初の例となった。これらのブタは、目の機能に関係
するロドプシン遺伝子が組み込まれたものである。フロリダ大学生物安全委員のひとりは、ロドプシン遺伝子は肉の安全性に
影響するとは考えにくいが、処分する前に与えた睡眠薬の影響があるかもしれない、と述べた。
しかし、政府機関は遺伝子組み換え動物による生産物を人間の食用にすぐに利用できるように準備をはじめているという。
〔New Scientist 2001/7/28〕
遺伝子改変ベビー、日本でも?
米国で97年以来、母親の卵細胞に母親以外の卵の細胞質を注入する方法で誕生した子どもが30人に達した、と2001年5月6日
付各紙で報道された。細胞質にはエネルギー生産等を行うミトコンドリアという小器官があり、独自のDNAをもつ。このため誕生
した子どもの細胞には、母親と細胞質提供の女性の2系統のミトコンドリアが存在する。ミトコンドリアが不妊の原因であると
いう説(確たる証拠はない)を根拠にした治療法で、倫理面、安全面で議論を呼ぶ技術だ。実施した医療機関では中絶、流産
した症例が2つあり、いずれの胎児もターナー症候群だった。日本では表向き行われていないことになっているが、東京の不妊
治療で知られるクリニックでは、長年不妊に悩む女性に、この手法が“奥の手”として勧められている可能性があるという。
京都大学がヒトES細胞の申請
6月13日、京都大学再生医科学研究所の中辻憲夫教授(発生工学)は、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)を樹立するための申請を、
学内倫理委員会に提出した。5月25日には、すでに計画書を同研究所に提出している。日本で初めての申請である。同教授は、
すでにカニクイザルでES細胞を樹立しており、人間にも触手を伸ばそうというわけだ。
この京都大学でのヒトES細胞の申請をきっかけに、「人間の身体を『モノ』として研究に用い、さらには人体を資源化する
ことに反対する」という立場で、「『再生医療』を考える市民ネットワーク」がつくられた。
8月1日、ES細胞の研究を解禁する政府指針案がまとまり9月に告示される。東大、阪大などでも相次いで研究が開始される
見込みだ。
ことば |
*ターナー症候群
性染色体の異常による疾患。低身長など、女性に限られる。2000人から2500人にひとりといわれる。
*胚性幹細胞(ES細胞)
万能細胞ともいう。未分化の培養細胞のこと。全能性を備えていることから、再生医療などへの応用で注目されている。マウス、
サル、ブタ、ヒトなどで樹立している。 |
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