■2001年10月号

今月の潮流
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バイオジャーナル




今月の潮流●狂牛病と遺伝子組み換え食品

 9月10日、国内で初めて狂牛病に感染した疑いのある乳牛1頭が確認されたと農水省が発表した。狂牛病は80年代末から90年代前半にかけてイギリスで猛威をふるい、今年始めにフランスなどに広がっていた。EU委員会は、日本で狂牛病が発生する可能性があると警告したが、今年6月18日、農水省は全面的に否定した、その矢先のことである。狂牛病の原因は、脳細胞のなかにあるタンパク質「プリオン」が、なんらかの原因によって病原性をもつ構造に変化し、正常なプリオンが次々と変化し、脳に空胞が生じて死に至る。まだ不明な点も多いが、病原性プリオンは細胞中で容易に分解されず、高温・高圧下でも病原性を失わず、プリオンをもつ人間へも種の壁を越えて感染する。治療法はまだない。  病原性プリオンも、正常なものも遺伝子やアミノ酸配列に違いはない。アミノ酸配列が同じでも立体構造が異なれば性質に重大な変化が生じる。遺伝子組み換え食品の安全性評価は、主に遺伝子やアミノ酸配列を比較し、毒性タンパク質やアレルゲンとの類似性で評価している。狂牛病は、この安全性評価の方法にいかに問題があるかを示しているといえるだろう。