■2010年5月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る






























バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
●EUのGMジャガイモ承認の波紋

 EUが承認したGMジャガイモをめぐって、波紋が広がっている(本誌2010年4月号参照)。
 この決定に、EU加盟諸国から反対する声が上がっており、ギリシャ、オーストリア、ルクセンブルク、イタリア、ハンガリーが自国内でのGMジャガイモ栽培を認めない、と表明した。 〔Greenpeace 2010/3/9〕

 他方、ドイツのイルゼ・アイグナー農相は、承認を歓迎すると述べた。「現在連立を組んでいるキリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟、自由民主党は、いずれも承認を支持している」と述べた。 〔Der Spiegel 2010/3/3〕
 GMジャガイモ承認に対して、EFSA(欧州食品安全庁)の2人の科学者が異議を唱えている。抗生物質耐性菌が広がり、感染症を防げなくなる、というのがその理由である。 〔The Irish Times 2010/3/25〕

●市民団体らが欧州食品安全庁と企業の癒着を批判

 米国では政府の役職と企業の幹部を行き来する人物を「回転扉」と呼んでいるが、EUでも同様の事態が起き、問題になっている。3月24日、ドイツの市民団体と欧州オンブズマンが共同で、欧州委員会に対して、EFSAを告発した。EFSAのGMO部会委員長だったスージー・レンケンズが、バイテク企業シンジェンタ社のロビイストになったことを批判したもの。 〔Test Biotech 2010/3/24〕
●遺伝子組み換え植物
●バイオ燃料用GMタバコを開発

 米国ペンシルベニア州にあるトーマス・ジェファーソン大学バイオテクノロジー財団研究所のヴァチェスラフ・アンドリアノフが、通常の20倍の油脂分を含有するタバコの葉を開発した。GM技術を用いれば、タバコの葉がバイオディーゼルを作りだす黄金の葉に変わる、と述べている。 〔The Associated Press 2010/3/27〕

●遺伝子組み換え生物
●ワクチン効果をもたらす(?)GM蚊

 マラリア予防を目的に、刺すことによってワクチン効果をもたらすGM蚊が開発された。開発したのは自治医科大学准教授の吉田宋人で、しかし、1回刺しただけではほとんど抗体ができず、平均1500回刺してやっと抗体が確認されたという。 〔Science Magazine 2010/3/18〕

●GM汚染
●香川大学医学部がGM大腸菌を違法廃棄

 香川大学医学部生体情報分子学の研究室が、実験で用いたGM大腸菌の入った培養液を、カルタヘナ法に基づいて大腸菌を死滅させるか、不活化するなどの処理をせずに流しに捨てていたことが判明した。この実験は3年半行われており、その間ずっと廃棄され続けていたようである。この事実は、内部告発で明らかになった。3月26日、大学内に調査委員会が設置された。

●ES細胞
●ヒトES細胞、胚提供者の個人情報を議論

 3月26日、文科省の専門委員会が開かれ、ヒトES細胞研究への胚提供者の個人情報に関する検討が行われた。現在、指針による明確な規定はないものの、誰が提供したのか完全にわからなくし、提供者の個人情報は保護されている。それを今後は連結可能匿名化にしようとする議論が始まった。連結可能匿名化とは、暗号化などの措置を施すが、誰が提供したのかはわかる状態にしておくこと。その理由として、@研究の進展にともない再度インフォームド・コンセントを得る場合が考えられる、A提供者の病歴を把握しておく必要がある、の2つが挙げられている。



●GMO承認情報
表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧

生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
トウモロコシ チョウ目害虫抵抗性並びに除草剤グルホシネート及びグリホサート耐性トウモロコシ ダウ・ケミ
カル日本株式会社、日本モンサント株式会社
MON-89034×B.t. Cry1F maize line 1507×NK603, OECD UI: MON-89034-3×DAS-01507-1×MON-00603-6(分離した後代系統を含む) 2010年3月24日
パパイヤ パパイヤリングスポットウイルス抵抗性パパイヤ ハワイパパイヤ産業協会日本事務所 55-1, OECD UI: CUHCP551-8 2010年3月24日

*正式にはパブリックコメントの後に認可される。