■2010年7月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●省庁動向
●GMパパイヤの表示、現行どおりで

 5月24日、消費者委員会食品表示部会が開催され、安全審査を通過したGMパパイヤの表示問題が議論された。初めて、生で食べる食品が認可されたことから、対応が注目されたが、事務局からは従来の表示制度の枠内で対応することが示されただけだった。委員の間には厳格な表示を求める意見も出たが、無視された形となった。

●栃木県でGMトウモロコシの試験栽培

 6月2日、栃木県にある畜産草地研究所の隔離圃場で、除草剤耐性トウモロコシの種まきが行われた。このトウモロコシに用いられる除草剤は、アリルオキシアルカノエート系除草剤である。これはダウ・ケミカル社の受託研究で、昨年は生物多様性評価が行われ、今年は非組み換えトウモロコシと生産性などを比較する。
●企業動向
●シンジェンタ社が新たな殺虫性トウモロコシ

 スイスの多国籍企業シンジェンタ社は、新たな殺虫性トウモロコシ「Viptera」を販売し、モンサント社の市場支配に挑戦する、と発表した。現在同社の米国でのトウモロコシ種子市場のシェアは8.5%である。この殺虫性作物は、土壌中の害虫や蛾の幼虫に有効だ、と同社最高経営責任者のマイケル・マックは述べている。〔Business Week 2010/5/7〕
●技術動向
●クレイグ・ベンダー研究所、人工細菌作製

 5月21日、米国J.クレイグ・ベンター研究所が人工細菌を作製したと発表した。これは人工合成したDNAを、あらかじめDNAを不活化した細菌に導入し、活動・増殖させたもの。

●人工細菌の野外使用禁止へ

 ケニヤのナイロビで開催されていた第14回SBSTTA(科学技術助言補助機関)は、人工細菌作製の発表を受け、人工細菌の野外での使用を認めないとする提案を採択した。 〔Rabble 2010/5/27〕
●遺伝子組み換え作物
●バイテク企業の激しい攻撃に科学者が声明

 バイテク企業やGM技術を推進している研究者は、自分たちに都合が悪い研究結果が出ると激しく攻撃してきた。現在攻撃の対象になっているのが、フランス・カーン大学のジル・エリック・セラリーニらである(本誌2010年2月号参照)。彼らはGMトウモロコシを用いた実験で動物に異常が起きたことを「国際生物科学ジャーナル」誌に発表したが、以来激しい攻撃にさらされている。この攻撃に対して250人以上の世界の科学者が、同氏等を擁護する声明に署名した。 〔FSC & ENSSER 2010/5/10〕

●Bt綿の収量が年々低下

 中国農業科学院などの研究者が行なった10年間にわたる調査で、Bt綿が広がったため、比較的害の少ない病害虫が増加していることが判明した。この病害虫がもたらす損害はまだ小さいが、同じような状況にあるインドでは、この3年間で1ヘクタールあたりの収量が、2007年560kg、2008年520kg、2009年512kgと減少している。 〔Livemint.com 2010/5/13〕
●GM汚染
●北海道大学、エーザイ研究所がカルタヘナ法違反

 5月14日、文科省は2件のカルタヘナ法違反を公表した。1件は、北海道大学が今年1月に、GMマウスを逃亡させた。翌日、大学内で捕獲され、事なきを得たとしているが、違法行為の続く大学でのGM生物の管理のずさんさが改めて浮き彫りにされた。
 さらには今年3月、茨城県つくば市にあるエーザイ筑波研究所が、GMウイルスを含んだ廃棄物を、そのまま廃棄していた。これも委託先の廃棄物業者が回収・処理し事なきを得たとしている。
●ゲノム
●コシヒカリのゲノム解読される

 5月25日、独立行政法人・農業生物資源研究所は、日本を代表するコメ「コシヒカリ」の全ゲノムを解読したと発表した。塩基配列は「日本晴」と6万7051カ所異なり、同時にコシヒカリの起源も明らかになったという。
●クローン
●欧州議会環境委員会がクローン家畜を承認せず

 欧州議会環境委員会は、クローン家畜食品などの承認を求めた欧州委員会(EC)の法案を否決した。法案は、ナノテクノロジーやクローン技術を応用した食品などの販売を認めるもの。42人の委員の内、賛成2人、棄権3人だった。 〔Agence France Press 2010/5/4〕
●遺伝子治療
●千葉大、LCAT欠損症遺伝子治療を申請

 5月17日、厚労省の科学技術部会が開かれ、新たに千葉大学医学部附属病院から申請が出された遺伝子治療実施計画が公表された。先天性の脂質代謝異常「LCAT(レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ)欠損症」を対象疾患とし、ベクター(遺伝子の運び屋)にはレトロウイルスが用いられる。LCATとは、肝臓で作られるコレステロールの代謝にかかわる酵素のこと。患者本人の皮下組織から取り出した脂肪細胞に、体外でベクターを使ってLCAT遺伝子を導入し、自家移植でその細胞を再び戻して体内で遺伝子をはたらかせるという。患者3人が予定され、もし実施されれば世界初のLCAT欠損症に対する遺伝子治療となる。今後、千葉大の計画は遺伝子治療作業部会で審査が行われる