■2010年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
●EUがGM作物の承認システムを変更

 EUがGM作物承認システムの大幅な見直しを行うことになった。EUでは生産者・消費者の反対が根強いため、GM作物は12年間でモンサント社の殺虫性トウモロコシ(MON810)、バイエル・クロップサイエンス社の除草剤耐性トウモロコシ(T25)、BASF社の耐病性ジャガイモ(EH92-527-1、デンプン用)の3作物しか認可していない。
 7月13日、EC(欧州委員会)が提案した見直し案は、EU各国政府に実際に栽培するか否かの決定権を与える代わりに、欧州委員会が新しいGM品種を承認しやすくする、というもの。EUとしての承認システムを維持しつつ、各国はそれぞれ自由に栽培の可否を決めることができる。
 これによって、GM作物に強い反対を示しているイタリア、オーストリア、ハンガリーなどはGM栽培禁止措置を継続し、GM作物推進派のスペインやオランダ、チェコなどでは大規模なGM栽培が可能になる。だが、EU市場で対立が起きたり、WTOに提訴される可能性を懸念する声もある。
 すでに各国政府からさまざまな意見が出されている。ベルギー政府高官は、バイオ産業が競争力を失うのではないか、と懸念を表明している。フランス環境大臣のジャン・ルイ・ボルローは「どんな新しいGM作物も承認するつもりはない」と述べている。〔ロイター 2010/6/5など〕

●ブルガリアのGM食品から子どもを守る条例案

 ブルガリア政府は、GM食品から子どもを守るために、同国の食品法の中に子ども向け食品へのGM食品禁止条項を盛り込む提案をした。そこでは保育園、幼稚園、学校の周囲100m以内の商店等に対して、GM食品を保管したり、販売することを禁止している。〔Novinite 2010/6/16〕


●ルクセンブルク大臣、Btジャガイモ禁止を明言

 ルクセンブルクの厚生大臣は、農業大臣も参加した食品の安全性に関する会議において、EUが承認したBASF社のGMジャガイモの栽培を禁止すると明言した。〔GM Watch 2010/6/16〕

●英国で新たなGMジャガイモの試験栽培

 英国でまもなくGMジャガイモの試験栽培が開始される。このジャガイモは、セインズベリー研究所が南米産ジャガイモから取り出した遺伝子を用いて開発した、耐病性の品種で、今後3年間にわたって試験栽培される。 〔British Broadcasting Corporation 2010/6/8〕

●英国でGMO推進の環境大臣登場

 英国で誕生した連立政権の環境・食糧・農村相が6月4日、労働党の前政権よりもGM作物推進の姿勢を表明して波紋を呼んでいる。英国では現在、GM作物は一切栽培されておらず、労働党も保守党もこれまでGM作物に慎重な姿勢をとってきた。新たに環境相に就任したキャロライン・スペルマンは、1989年に夫とバイテク企業のロビー活動会社を設立している。GM作物には利点もあると発言してGMO反対派から批判を浴びたが、一方で、税金を使ってGMOを推進するべきではないとも述べている。〔Daily Mail 2010/6/5〕

●モンサントの特許、飼料に及ばず

 7月6日、欧州司法裁判所は、モンサント社の訴えを退け、GM作物の特許権は飼料には及ばないという判断を下した。これは同社が、欧州の輸入業者がアルゼンチンで無断で栽培されているGM作物を輸入しているのは、特許権侵害に当たるとして訴えていたことへの判断である。欧州司法裁判所は、飼料のような壊死した細胞に含まれるDNAは機能を果たさず、特許権は適用されないとした。 〔NNA 2010/7/8〕
●オセアニア事情
●西豪州のGMナタネ試験栽培、予想を上回る規模に

 モンサント社は、西オーストラリア州でのGMナタネ試験栽培が、同社の予想を上回って広がっていると述べた。同州では現在、7万ヘクタール超にGMナタネが作付けされており、これは同社が5月に見積もった2倍の広さだという。〔Farm Weekly 2010/6/16〕
●北米事情
●避難場所不要の殺虫性綿、米国で試験栽培承認

 米国環境保護局は、シンジェンタ社のVipCot綿の試験栽培を承認した。このGM綿は、Vipタンパク質とCry(殺虫)タンパク質を作る遺伝子を組み合わせたもの。現在、Bt(殺虫性)作物では、耐性害虫を増やさないために、一定の割合で避難場所(通常は非GM綿を植える)を設定しなければならない。このGM綿は、殺虫毒素と避難のための機能(Vip)を合わせ持つため、その避難場所を不要にしたものという。 〔Farm Futures 2010/6/1〕

●米国で、初の栄養成分改良GMO承認

 米国農務省が、高オレイン酸大豆を認可した。デュポン社が開発したこのGM大豆は、栄養成分を変化させた作物としては初の承認となり、早ければ今年中にも流通する見込みだという。モンサント社も油の栄養成分を改良したGM大豆2品種(トランス脂肪酸を減らしたもの、オメガ3脂肪酸を含むもの)を申請しているが、保留となっている。今後、デュポンとモンサントの間で競争が激化する可能性がある。 〔New York Times 2010/6/7〕

●GMアルファルファ認可をめぐる米最高裁判決下る

 米国最高裁は6月21日、GMアルファルファの認可をめぐる裁判の判決を下した。米国農務省(USDA)が環境影響評価なしにGMアルファルファの栽培を許可したのは違法だとした2007年の地方裁判所の判決に対して、モンサント社が控訴していたもの。今回の判決で最高裁は、地裁の判決を一部覆したものの(USDAに規制の一部解除をさせない、農家にGMアルファルファを栽培させない、という権利は裁判所にない)、GMアルファルファの認可は違法であるという部分については地裁判決を支持した。また、GMOによる汚染が将来にわたり環境や経済に大きな影響を及ぼすことが懸念される、という部分でも地裁の判断を支持している。モンサント側は、地裁の判決が一部覆されたことを強調し、栽培解禁に向けた道が開けたと勝利を宣言しているが、消費者団体側は、認可が違法であることが改めて確認され、GMアルファルファの栽培禁止は変わらないと反論している。USDAは規制解除に向けて環境影響評価を進めているが、まだ約1年はかかる見込みだという。 〔Center for Food Safety 2010/6/21〕