■2010年8月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●中南米事情
●キューバでGM作物反対デモ

 キューバで、GM作物に反対する市民による大規模なデモが発生した。報道が伝える政府の公式見解では、GM作物が農業問題を解決する有効な解決策として持ち上げられており、市民にはほとんど実態が知らされていない。そのような中で、インターネットからの情報によって、市民が反対運動に立ち上がった。〔Havana Times 2010/6/11〕

●ボリビアが5年間のGMOモラトリアムへ

 ボリビアの大統領エボ・モラレスは、GM作物栽培を5年間停止させる決定を下した。この停止命令は、同国の在来の種子を守るためのものだとしている。〔Center for International Policy Americans Program 2010/6/14〕

●バイエル社がLLライス申請取り下げ

 独バイエル社は、ブラジルに提出していた除草剤耐性GMイネ「リバティリンク(LL62)」の商業栽培の認可申請を取り消した。GM品種が、在来品種の赤米と交配して除草剤耐性を獲得してしまうおそれや、イネの安全性を懸念する研究者や農家の強い反対にあい、見込みがないと判断したためのようだ。〔GM-Free Brazil Campaign 2010/7/7〕
●アジア事情
●有機綿よりコストのかかるGM綿

 環境保護団体のグリーンピースが「綿の収穫─南インドの農業における有機綿とGM綿の選択」という報告をまとめた。インド・アンドラ・プラデーシュ州における有機栽培の綿農家とGM綿栽培農家を比較したもので、2009〜2010年において、有機綿の方がGM綿に比べて200%もの経済的利益をもたらした、という内容である。GM綿はコストのかかる農業になっており、有機綿の農家より65%も多く負債を抱えている。とくに問題なのは26種類もの殺虫剤の使用で、その中にはGM(Bt)綿栽培では不必要な殺虫剤が含まれていた。グリーンピースは、インド政府がGM綿を禁止し有機綿を支援することが同国の綿生産において求められている、と結論づけた。 〔The Economic Times 2010/6/15〕
●GM汚染
●ドイツ7州にGMO種子汚染

 EUで栽培が禁止されているGMトウモロコシ「NK603」が、ドイツの7州(バイエルン、バーデン・ヴュルテンベルク、ニーダーザクセン、ブランデンブルク、メクレンブルク・フォアポンメルン、ノルトライン・ヴェストファーレン、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン)の少なくとも3000ヘクタールの畑で誤って栽培されていることがわかり、花粉が飛散する前に破棄処分しようと州政府が対応を急いでいる。ハンブルク近郊にあるパイオニア・ハイブレッド社が販売した種子が汚染されていた模様だが、汚染された理由は不明。 〔Deutsche Welle 2010/6/7〕

●ペルーでGMO汚染拡大

 ペルーでGMO汚染が広がっていることが、市民団体Alternative Agriculture Action Networkの調査でわかった。GMトウモロコシの種子が、サン・マルティン、ランバヤケなど多くの地域で見つかり、なかには山間部や森林の中で見つかったケースもある。同国では、農業バイオセーフティ法案が作られているが、未だに閣議決定に至っていない。 〔Living In Peru 2010/6/4〕
●企業動向
●バイテク企業が除草剤耐性雑草対策で協力

 GM作物開発企業が、拡大する除草剤耐性雑草の対策で、協力態勢を組むことになった。除草剤耐性作物は本来、雑草対策などのコスト削減を利点に開発されたが、現在、この耐性雑草の出現で農薬の使用量が激増している。ダウ・ケミカル、デュポン、バイエル、BASF、シンジェンタ社は共同で、数億ドルをかけて、耐性雑草問題をクリアする新システムを開発する予定である。〔Bio Largo 2010/6/4〕
●技術動向
●独専門誌が人工生命の規制を求める

 ドイツの「テストバイオテク」誌は、人工合成したDNAを遺伝子にもつ細菌への厳しい規制を求めるために、国際機関への働きかけをはじめた。これまで地球上に存在しなかった生命体が環境や人体に及ぼす影響は予測がつかず、環境中への放出を禁止し、無期限で有効な監視体制が必要だとしている。 〔Test biotech 2010/6/15〕
●iPS細胞
●iPS細胞臨床応用、他家移植も解禁

 6月30日、厚労省の専門委員会が開かれ、同月4日にパブリックコメント(一般からの意見)の募集が締め切られたヒト幹細胞臨床研究指針の改定案が最終決定した。今回の指針改定は、現行指針では造血幹細胞などの「体性幹細胞」のみと限定している対象範囲に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を含めることが最大の焦点となっている。4月にまとめられた原案では、iPS細胞を指針の対象とするものの、当面は元となる体細胞を提供した本人に対する移植(自家移植)のみ容認する方針だった。しかし、パブリックコメントで反対意見が複数寄せられたことから一転。他人の細胞から作り出したiPS細胞の移植(他家移植)も認める方針が打ち出され、最終案として決定されるという異例の事態となった。
●クローン
●家畜クローンの実状

 6月25日農水省は、今年3月末現在の家畜クローンの状況を発表した。相変わらず異常が多く、クローン動物を開発してもメリットがないことが明らかになったこともあり、受胎中の家畜が激減し、開発がほとんど止まった状態にあることも示された。


表1 家畜クローン研究の現状 (単位:頭)
09年9月末* 10年3月末**
受精卵クローン牛出生頭数 722 728
 死産 74 75
 生後直後の死亡 35 35
 病死など 104 105
 事故死 20 20
 試験供用 77 77
 食肉出荷 329 329
 不明 63 63
 育成・試験中 20 24
受胎中 5 0

体細胞クローン牛出生頭数 575 583
 死産 80 82
 生後直後の死亡 94 94
 病死(生後6か月以内に死亡) } 146 112
 病死(生後6か月以降に死亡) 36
 事故死 9 9
 試験供用 180 193
 育成・試験中 66 57
受胎中 6 10

体細胞クローン豚出生頭数 398 482
 死産 88 93
 生後直後の死亡 40 51
 病死 119 142
 事故死 16 18
 試験供用 101 134
 育成・試験中 34 44
受胎中 14 19
・ただしミニブタを除く

体細胞クローン山羊出生頭数 9 9
 死産 1 1
 生後直後の死亡 3 3
 病死 3 3
 事故死 0 0
 試験供用 0 0
 育成・試験中 2 2
受胎中 0 0

*1998〜2009年9月末現在の累計。
**1998〜2010年3月末現在の累計。