■2002年8月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
中国でBt綿が環境に悪影響

  中国の環境保護省・南京環境科学研究所では、遺伝子組み換え綿が生態系にもたらす影響を調査してきた。6月4日、環境保護運動団体グリーンピース・インターナショナルが、その研究成果を発表した。それによると、主要な標的となっている害虫に耐性ができ死ななくなってきたこと、世代を経るほど耐性害虫の割合は増えつづけることが明らかになった。その他にも、害虫の天敵が減少し、アリマキなどの新しい害虫が増大している。そのため、農家は農薬使用を継続せざるを得なくなっている、という。〔ガーディアン、2002/06/11〕

食品衛生分科会でモンサント社の綿が保留

  6月11日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会で、3件の遺伝子組み換え作物の審査が行われ、アベンティス・クロップサイエンス・シオノギ社から申請されていた除草剤耐性大豆と、ダウ・ケミカル日本社から申請されていた除草剤耐性と殺虫性の両者を合わせ持ったトウモロコシは通過したが、日本モンサント社から申請されていたBt綿は、保留となった。主な理由は、まだ外国で認められていないからという点にある。

●遺伝子組み換え食品
非組み換え食品に高いGM混入

 6月21日、厚生労働省医薬局食品保健部は、大豆とトウモロコシを用いた加工食品の検査結果を発表した。検査対象は、表示制度上はすべて「非組み換え」であるが、極めて高い割合で、遺伝子組み換え作物の混入が確認された。とくにトウモロコシは、検出と非検出が同数で、作付けの段階での花粉汚染、流通の段階での混入が予想以上に進んでいることを示している。ただし、現在の表示制度では、5%未満は違反ではないため問題ない、というコメントをつけ加えている。

  検査商品数 非検出 検出(5%未満) 測定不能
大豆 47 31 13 3
トウモロコシ 26 10 10 6



オーストラリア食品大手が、非組み換え食品に

 豪州・ニュージーランド食品局(ANZFA)は、昨年12月7日から遺伝子組み換え食品の表示義務づけを開始した。オーストラリアでは、これまで、ナタネ、大豆、トウモロコシ、綿、ジャガイモ、テンサイの6作物が認可されており、日本と同様に食用油などは表示の対象外になっている。表示義務のある食品では1%未満の混入率ならば、「非組み換え」と表示できる。5%未満の日本より厳しい。半年経ち、知らずに食べていることに対して、消費者の不安が高まり、それを受けて、食品最大手のグッドマン・フィールダー社は、遺伝子組み換え作物を使用しないことを明らかにし、ほとんどの食品メーカーが同様の方針を打ち出しつつある。

EU議会で消費者の主張通る

 7月3日、EU議会で「遺伝子組み換え食品の表示」に関する投票が行われた。米国や多国籍企業の圧力の下、結果が注目されたが、244票対234票というきわどさで可決された。これによって、全食品、飼料の表示と、追跡システムの確立が図られることになった。また、表示義務も従来の1%以上の混入から、0.5%以上の混入へとより厳しくなった。混乱のもととなる「遺伝子組み換えではない」という表示、未承認作物の混入に関してはほんのわずかでも認めない、という消費者の主張も通った。残念ながら、組み換え飼料を用いた家畜食品に関しての表示は、258票対255票と、わずか3票差で否決された。全体として、消費者の主張が通った画期的な結果となった。


●省庁動向

食品表示制度懇談会で法律一本化へ

 農水省総合食料局長と厚生労働省医薬品局食品保健部長の私的懇談会「食品の表示制度に関する懇
談会」がつくられ、食品表示にかかわる内閣府や公正取引委員会も加わり、表示制度の改正を検討し
ている。目的は、信頼を失った食品表示を抜本的に見直し、厚労省の食品衛生法と、農水省のJAS法
を一本化することにある、と考えられる。具体的な作業は、懇談会の報告がまとまる7月末から始ま
る。

厚労省、異種移植の臨床研究指針をまとめる

 国立感染症研究所所長の吉倉廣を班長とする厚労省研究班が、豚などの動物の臓器や細胞を人に移
植する異種移植を行う際の基準を定めた指針をまとめ、6月6日の科学技術部会に提出した。同指針で
は、異種移植を「ヒト以外の動物に由来する生きた細胞、組織又は臓器をヒトに移植、埋め込み又は
注入すること」と定義している。また、動物由来のものと人の細胞などを体外で接触させ、体内に戻
す場合も指針の対象に含まれる。異種移植については、動物の細胞内に潜んでいるウイルスが種の壁
を越えて新たな感染症を引き起こす危険性が指摘されているが、指針が整備されたことによって、日
本国内でも本格的に臨床研究がスタートすることになる。

総務省のアンケート調査で、表示に不満

 7月5日、総務省が食品表示に関するアンケート調査結果を発表した。表示義務のある食品で、「遺
伝子組み換えでない」という表示と、表示なしが同じ意味を持つことに対して、わかりにくく表記を
統一すべきだ、とした人が81%。また、たとえ原材料が少量でも表示すべきだとした人が84%。さら
には食用油や醤油など表示義務がない食品に対して、表示すべきだとした人が76%を占めた。このよ
うに現在の表示はわかりにくく、変えるべきだとした人が約80%に達していることがわかった。