●遺伝子組み換え動物
遺伝子組み換え技術を用いて、羽なしの鶏が
イスラエルのレホボット研究所は、遺伝子組み換え技術によって、羽のない赤い素肌の状態の鶏を誕生させた。羽がないため気温が高くても成長が早く、飼育に空調がいらず、皮下脂肪が少ないため効率よく肉を生産することができるという。まさに生産効率を追い求めた結果で、倫理的に大きな波紋を呼ぶものだ。
●海外事情
米国新農業法はモンサント保護政策?
5月13日、米国2002年農業法が成立した。この新法では、農家の保護政策として、従来の固定型の補助金の他に、作物の価格が暴落して農家の収入が落ち込んだ時には、それを補助して農家の保護を図る。EUなどからは、昔に戻ったと批判が強まっている。対象となっている作物は、トウモロコシ、大豆、小麦、米、綿などで、遺伝子組み換え作物の割合が大きい。国際的に価格の変動が大きく、暴落の可能性が大きい遺伝子組み換え作物の保護策とも受けとめられ、結果的にモンサント社の救済策になるかもしれない。
スイスで食品規制法が改正される
スイス内務省健康局によると、同国で7年ぶりに食品規制法が改正され、5月1日に施行した。今まで以上に規制が厳しくなっており、遺伝子組み換え食品に関しては、従来の規制に加えて、「遺伝子組み換えではない」と表示できるのは、混入ゼロの場合のみとなった。
米国とEUで貿易戦争勃発!?
いま米国内で、対EU強行政策をとるよう、アグリビジネスの圧力が強まっている。EUでは1998年以来、遺伝子組み換え作物のモラトリアム(一時停止)政策がとられている。モンサント社やカーギル社などは、昨年11月6日、ドーハで開かれたWTO(世界貿易機関)閣僚会議の直前に、EUの遺伝子組み換え食品に対する扱いはWTO協定違反であり、許すべきではない、という要求を米国政府に突き付けた。
米国がこの問題でWTOに提訴するのは、時間の問題と受け止められている。それに対して、EUのこの問題での最高責任者は、「米国が提訴すれば我々は負けるかもしれない。だが、たとえ負けたとして私たちは立場を変えないし、もし米国が負ければ米議会や市民の間でWTOへの不信が広がるだろう」と述べている。〔ル・モンド、2002/5/15〕
●クローン牛
体細胞クローン牛の異常依然続く
農水省は、家畜クローン研究の現状を発表した。それによると、今年3月末時点で体細胞クローン牛は293頭誕生している。相変わらず、死産や出産後の死亡率が高い。死産50頭、出生直後の死亡43頭、病死等68頭で、現在研究機関で育成・試験中はわずか132頭にすぎない。順調に育つ牛が少ない、この惨澹たる状況の下、研究者の間でも、開発はやめた方がよいという声が聞かれ始めている。食品としては厳しい安全性評価が必要であり、開発自体の是非が問われているといえる。
●ES細胞
骨髄の幹細胞にも高度の多機能性
これまで、さまざまな組織や臓器を作り出す能力がある細胞として、ES細胞が研究されてきたが、同じような機能が、骨髄の幹細胞にもあることがわかった。これは、6月20日にミネソタ大学幹細胞研究所のキャサリン・バーフェイリーが発表したもので、マウスの初期胚に骨髄から採取した幹細胞を注入したところ、検査したほぼすべての器官で、この幹細胞から分化した細胞が働いていることがわかった。〔Natureオンライン版2002/6/20〕
●クローン
クローン胚づくりは特許取得が目的
昨年11月に、米ベンチャー企業のアドバンスト・セル・テクノロジー社が、世界で初めて人間のクローン胚を作ったと発表した。クローン胚をそのまま培養すれば、クローン人間が誕生する。これは、実は投資家の強い要請によって、特許を取得するのが目的だったことが、元同社の研究員・若山照彦が6月13日に総合科学技術会議・生命倫理専門調査会で証言して、明らかになった。
ことば |
*体細胞クローン
受精卵以外の体細胞の核の情報をもつクローンのこと。哺乳動物では、1996年英国企業が開発した羊「ドリー」が世界で最初。
*幹細胞
特定の細胞への分化能をもつ細胞のこと。間葉系幹細胞、造血肝細胞、神経幹細胞ほかが見つかっている。
*クローン胚
卵子から核を取り除き、そこに他の体細胞の核を移植して作った胚。子宮に戻せばクローン個体が作成できることから、日本国内では人のクローン胚作りは指針で規制されている。
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