■2011年2月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●GM樹木
●インドでGMゴムの木の試験栽培承認

 インド・ケーララ州コッタヤムでGMゴムの木の試験栽培が行われようとしている。インドは、中国に次いで天然ゴムの消費量が多いため、ゴムの生産が消費に追いつかない状態が起きるとして、GMゴムの木の開発が進められてきた。「このGMゴムの木は、旱魃や乾燥に抵抗力があり、天候に左右されず収量が増える」とGMゴムを開発しているインド・ゴム研究所のジェイムズ・ヤコブ代表は述べている。
 試験栽培についてケーララ州政府農業大臣は、「ケーララ州はGMOフリーである権利がある」として、連邦政府環境大臣に対して、このGM樹木の承認取り消しを求めた。ケーララ州の要請に対して連邦政府環境大臣は、ゴムの木が試験栽培される地域には伝統的なゴムの木の品種がないため問題ない、という見解を示した。〔The Economic Times 2011/1/5ほか〕

●ニュージーランドでGMマツの試験栽培承認

 ニュージーランド政府環境リスク管理局(ERMA)は、GMマツの試験栽培を承認した。クラウン研究所が申請していたGMマツは、北島中北部にあるロトルーア大学で25年間試験栽培される予定。ERMAは、試験栽培を許可する条件として、厳しく管理した圃場で、どのような遺伝物質といえども環境中に漏れないことを求めた。〔Environmental Risk Management Authority 2010/12/15〕

●米国でGMニレとGMクリを試験栽培

 米国の森林バイオテクノロジー研究所は、アメリカ・ニレとアメリカ・クリの2種類のGM樹木を植えることを明らかにした。この試験栽培は、同研究所と共同で研究を行っているノースカロライナ・バイオ燃料センターのオックスフォードにある圃場で行う予定である。〔News Observer 2010/12/10〕
●欧州事情
●EUでGM作物禁止の統一基準作り

 EUの環境理事会は12月20日、EUの行政組織である欧州委員会(EC)に対して、GM作物の栽培や流通は各国で禁止できるが、それを正当化できる統一基準を設置するよう求めた。このままだと各国ごとにバラバラな対応となることを恐れたもの。これによりECは、統一基準を作ることが義務づけられた。〔ENDS Europe 2010/12/21〕

●ドイツ裁判所がGMO規制合法判決

 ドイツの裁判所は、GM作物栽培禁止措置を合法と認める判決を下した。GM作物の花粉が蜂など昆虫によって、近隣で栽培されている非GM作物に交配が起きて損害が生じた場合、GM作物栽培農家が賠償責任を負うというドイツの法律は不当だとザクセン=アンハルト州が訴えていたが、却下された。また、GM作物を栽培する際に登録(情報公開)を義務付けた法律はプライバシーの侵害だという訴えも退けられた。遺伝子組み換えの長期的影響が完全に解明されていない現状では、司法には非GM農家を保護する責務がある、と結論づけている。〔Deutsche Presse-Agentur 2010/11/24〕

●独バイエル社とBASF社がGMイネの共同開発へ

 ドイツのGM作物開発企業バイエル・クロップサイエンス社とBASF社が、GMイネを共同で開発することを表明した。現在、世界の種子の70%が、モンサント、バイエルなど10社によって支配されており、次のターゲットがイネと小麦になっている。グリーンピースは、イネの種子支配に乗り出したと批判している。〔Agence France Press 2010/12/27〕

●EUのGM作物栽培は減少傾向

 ヨーロッパで唯一栽培されている遺伝子組み換え作物がGMトウモロコシ「MON810」だが、栽培面積は減少傾向にある。もっとも栽培しているスペインや、隣国ポルトガルでも減少傾向にある。市民団体がスペイン農業省のデータに基づき試算したところ、MON810の栽培面積は約11%減少して6万7726haだった。〔ENDS Europe 2010/12/14〕

●アジア事情
●インドで耐性害虫が繁殖

 インドで、Bt綿の葉を食べると死ぬはずの害虫(蛾の幼虫)が、葉を食べても死なないどころか繁殖していることが確認された。インドでは8年前にBt綿の商業栽培が始まっている。インド農業大学の研究者の報告によると、綿の葉を餌とする害虫の生態に、Bt綿と非Bt綿でほとんど差は見られなかったという。Bt綿は、害虫にとって有毒なタンパク質(Bt)を産生するが、試験栽培圃場で見つかった害虫は元気に繁殖しており、その子孫も生殖能力に問題はなかったという。Bt綿の栽培が始まる前の2002年に年間230万トンだったインドの綿生産量は、2008年には540万トンに倍増しており、耐性害虫の大発生を懸念する声が出ている。〔The Telegraph (India) 2010/12/11〕

●フィリピンでBtナス廃棄命令

 フィリピン・ミンダナオ島ダバオ市長は12月13日、同市バランガイにあるフィリピン大学圃場で行われていたBtナスの試験栽培中止を命じた。大学が公開協議を行わず、管理要件を満たさなかったというのが、その理由である。市は栽培していたBtナス1500株すべてを引き抜き、土中に埋めた。ナスの半数には、すでに花や実がつき始めていた。 〔Philippine Daily Inquirer 2010/12/19〕

●インドの大学がGMイネの試験栽培承認

 インド遺伝子工学承認委員会(GEAC)は、コルカタ大学のイネ研究区域で計画している鉄分増強GMイネの試験栽培を承認した。ある専門家は、同区域で栽培されている1200品種以上のイネが汚染されることへの懸念を示した上で、「私たちは野菜などで充分に鉄分を補給できる。鉄分増強イネなど必要ない」と述べた。〔The Times of India 2010/12/14〕