■2011年4月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
●新たな除草剤耐性トウモロコシ

 ダウ・アグロサイエンス社は、除草剤2,4-Dに耐性を持つトウモロコシの特許取得に向けて動きだした。ラウンドアップ耐性雑草が拡大し、その対策に除草剤2,4-Dの使用量が増大しているため開発が進められてきた。 〔Canadian Business 2011/3/1〕

●GM作物2010年の栽培状況

 GM作物を推進する国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が、2010年のGM作物状況を発表した。毎年恒例化しているこの発表は、GM作物売り込みのプロパガンダとしての役割を果たしている。
 それによると、GM作物の栽培面積は1億4800万haで、昨年より1400万ha増加、世界の農地の10%に達した。29カ国、1540万戸の農家が作付けした。最も栽培が増加した国はブラジルで、新たな作付け国は、パキスタン、ミャンマー、スウェーデンの3カ国。 〔ISAAA 2011/2/22〕
 しかし、相変わらず米国中心であり、作物も大豆、ナタネ、トウモロコシ、綿の4作物から増えておらず、性質も除草剤耐性と殺虫性しかない。1540万戸の大半を占める中国(650万)とインド(630万)の農家は、貧しい小農家である。インドでは、GM綿に切り替えたために経済的に行詰まり自殺する人が後を絶たない。ブラジルでは熱帯雨林を破壊してGM大豆畑が拡大し、生物多様性への悪影響が指摘されている。

表1 遺伝子組み換え作物の作付け面積推移(万ha)
1996年 170
1997年 1100
1998年 2780
1999年 3900
2000年 4300
2001年 5260
2002年 5870
2003年 6770
2004年 8100
2005年 9000
2006年 1億200
2007年 1億1430
2008年 1億2500
2009年 1億3400
2010年 1億4800
(参考:日本の国土面積 3780万ha)
表2 国別作付け面積(万ha)

米国 6680 大豆、トウモロコシ、綿、ナタネ、カボチャ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ
ブラジル 2540 大豆、トウモロコシ、綿
アルゼンチン 2290 大豆、トウモロコシ、綿
インド 940 綿
カナダ 880 ナタネ、トウモロコシ、大豆、テンサイ
中国 350 綿、トマト、ポプラ、パパイヤ、ピーマン
パラグアイ 260 大豆
パキスタン 240 綿
南アフリカ 220 トウモロコシ、大豆、綿
ウルグアイ 110 大豆、トウモロコシ
ボリビア 90 大豆
オーストラリア 70 綿、ナタネ
フィリピン 50 トウモロコシ
ミャンマー 30 綿
ブルキナファソ 30 綿
スペイン 10 トウモロコシ
メキシコ 10 綿、大豆
その他 *わずか
計 1億4800
*その他の国 チリ(トウモロコシ、大豆、ナタネ)、チェコ(トウモロコシ、ジャガイモ)、コスタリカ(綿、大豆)、コロンビア(綿)、ホンジュラス、ポルトガル、ポーランド、エジプト、スロバキア、ルーマニア(トウモロコシ)、スウェーデン、ドイツ(ジャガイモ)


表3 作物別作付け面積(万ha)
2010年 2009年
大豆 7330 (49%) 6920
トウモロコシ 4680 (32%) 4170
綿  2100 (14%) 1610
ナタネ 700 ( 5%) 640
その他 わずか 60
1億4800* (100%) 1億3400

表4 性質別作付け面積(万ha)
2010年 2009年
除草剤耐性 8930(60%) 8360
殺虫性 2630(18%) 2170
除草剤耐性+殺虫性 3230(22%) 2870
その他 わずか わずか
1億4800(100%) 1億3400
*ISAAA発表数字ママ。

●GMOフリー
●中央ヨーロッパに広がるGMOフリー

 クロアチア議会の環境保護委員会代表は、オーストリアの同委員会メンバーと「GMOフリー・アルプス・アドリア海」の設立について話し合いを持った。これは、GM生物から生物多様性を守ることを目的としたものである。 〔Croatian Times 2011/2/17〕
ハンガリー議会の持続可能な開発委員会も、「GMOフリー・アルプス・アドリア海」に参加することを決定した。2月14日、同委員会議長のベネデック・ジェイバーが明らかにした。これにより中央ヨーロッパでGMOフリー地域が拡大する。 〔Caboodle 2011/2/15〕

●クローン
●ニュージーランドでクローン家畜開発中止

 世界的にクローン家畜の研究や開発を中止する傾向が広がっている。ニュージーランドでは、クローン家畜を開発してきた施設を閉鎖した。その理由は高い死亡率にある、とアグリサーチ研究所の代表ジミー・スッティは述べている。もはやクローン技術に対する期待も幻想も失われたといえる。 〔Waikato Times 2011/2/21〕

●クローン家畜試験は終焉か

 昨年9月末時点の「家畜クローン研究の現状」が発表された。受胎中の家畜はほとんどいなくなり、研究・開発が終焉を迎えつつあることが明らかになった。


表5 家畜クローン研究の現状 (単位:頭)
10年3月末* 10年9月末**
受精卵クローン牛出生頭数 728 728
 死産 75 75
 生後直後の死亡 35 35
 病死など 105 105
 事故死 20 20
 試験供用 77 77
 食肉出荷 329 329
 不明 63 63
 育成・試験中 24 24
受胎中 0 2


体細胞クローン牛出生頭数 583 588
 死産 80 84
 生後直後の死亡 94 94
 病死(生後 6か月以内に死亡) 112 112
 病死(生後 6か月以降に死亡) 36 36
 事故死 9 9
 試験供用 193 196
 育成・試験中 57 57
受胎中 10 1

体細胞クローン豚出生頭数 482 560
 死産 93 115
 生後直後の死亡 51 54
 病死 142 167
 事故死 18 24
 試験供用 134 152
 育成・試験中 44 48
受胎中 19 6
・ただしミニブタを除く


体細胞クローン山羊出生頭数 9 9
 死産 1 1
 生後直後の死亡 3 3
 病死 3 3
 事故死 0 0
 試験供用 0 0
 育成・試験中 2 2
受胎中 0 0

*1998〜2010年3月末現在の累計。
**1998〜2010年9月末現在の累計。


●GMO承認情報
表6 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧

生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
ナタネ 除草剤グルホシネート及びグリホサート耐性並びに雄性不稔及び稔性回復性セイヨウナタネ バイエルクロップサイエンス株式会社 MS8×RF3× RT73, OECD UI: ACS-BN005-8×ACS-BN003-6×MON00073-7 2011年2月17日

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