■2011年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●体内に取り込まれるGM作物毒素と農薬成分


 Bt毒素遺伝子が組み込まれたGM作物の殺虫毒素や、除草剤耐性作物に用いる農薬が、妊婦の体内で蓄積したり、胎児へ移行している実態を示す研究論文が2つ発表された。
 1つは、カナダの産婦人科病院が行なった調査で、ラウンドアップの主成分のグリホサートとその代謝物であるアミノメチルホスホン酸(AMPA)、除草剤バスタの主成分のグルホシネートとその代謝物である3-メチルフォスフィニコプロピオン酸(3-MPPA)、殺虫毒素のCry1Abタンパク質(Bt毒素)の濃度を調べたもの。

 研究では、30人の妊婦と39人の非妊婦の血液を調べた。その結果、グリホサートとグルホシネートが非妊婦の血液から検出された。3-MPPAおよびCry1Ab毒素については、妊婦とその胎児、非妊婦の血液から検出された。GM作物に使われる農薬成分が、妊婦および非妊婦の体内に残留していることを示した初めての研究で、こうした毒素は、GMトウモロコシなどで飼育された動物由来の肉、乳、卵などの摂取により、体内に入り込んだと見られる。胎盤を通して胎児も毒素に曝露する可能性が考えられるため、栄養や子宮・胎盤毒性を含む新たな生殖毒性研究の必要性を示すも
のとなっている。 (Reproductive Toxicology 2011/2/18)

 もう1つの研究はブラジルで発表された。ブラジルでは2008年に農薬消費量が98万6500トンで世界最大となり、翌2009年には100万トンを超え、年々増加傾向にある。それとともに母乳から農薬成分が検出されており、影響を懸念する声が広がっている。
 マットグロッソ州第2位の穀物生産地ルーカス・ド・リオ・ヴェルデで、出産後3〜8週間の62人の母乳を採取して調べたところ、全員の母乳から1種類以上、85%の母乳から2〜6種類の農薬が検出された。このうち3種類の農薬には流産との関連性も認められた。もっとも多く検出されたのは、ブラジルでは1998年に使用禁止になっているDDTの分解物であるDDEだった。

 2010年9月に行なった住民の血液や尿サンプル、井戸、空気、雨水の調査では、水たまりの32%、雨水40%以上に残留農薬が見つかったという。
 農薬消費量の増加はGM作物の増加と関係があると見られている。除草剤耐性作物の栽培拡大とともに除草剤に対して耐性をもつ雑草(スーパー雑草)も増え、除草剤散布量が増えた。ブラジルでは現在、18種(うち5種はグリホサート耐性)のスーパー雑草が確認されている。 〔GM-Free Brazil Campaign 2011/4/18〕