■2011年10月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●除草剤ラウンドアップがもたらすさまざまな問題


 除草剤耐性作物は雑草対策のために、特定の除草剤に枯れないように遺伝子を組み換えたものだが、作付けが拡大し、その除草剤に耐性を持つ「スーパー雑草」が増え続けている。「Weed Science」誌によると、少なくとも 21種類の雑草がグリホサート(モンサント社の除草剤ラウンドアップの主成分)に対する耐性を獲得し、さらにそのほか複数の農薬に耐性を持ち、どのような除草剤にも枯れない「スーパー雑草」も増えているという。2007年に240万エーカーだったラウンドアップ耐性雑草の生育範囲は、すでに1100万エーカー以上になっている。

 雑草を刈る手間が省け、除草剤の使用量が減り、収量も上がる、という農薬メーカー側の謳い文句とは逆に、このままいくと作物の収量が減り、食料の価格が上がると懸念する声がある。対応策として、より強い農薬の使用や地面を覆うマルチングを施すなどが挙げられているが、それでは農家の負担が増えるばかりだ。長い間スーパー雑草の存在を認めなかったモンサント社も、いまでは耐性雑草の存在を認めており、使用する農薬の多様化や輪作などを提案している。〔Fast Company 2011/7/20〕

 また、ラウンドアップの環境・人体への影響も指摘されている。その1つが生物多様性への影響である。米国で保護されている希少種の蝶オオカバマダラが急激に減少している。この蝶は、トウワタという植物に卵を産み付けるが、そのトウワタがラウンドアップによって枯れ、失われているからである。カンザス州では、1億エーカーの農地でトウワタが見られなくなった。〔The Kansas City Star 2011/7/24〕

 さらにはラウンドアップの繰り返しの使用により、土壌中で真菌病の原因を作り出している可能性が高く、GM作物の収量減少は根の病気と関係があるのでは、と米農務省農業研究局の研究者が 15年間の研究に基づき述べた。〔Thomson Reuters 2011/8/12〕
 ラウンドアップの主成分グリホサートが、ミシシッピー川に流れ込む雨水や河川で検出されている。これは米国地質調査所が明らかにしたもので、同調査所のポール・ケーブルは「ラウンドアップの急激な使用量の増加が原因であり、グリホサートが長期にわたってもたらす環境への影響については、ほとんど何もわかっていない」と述べた。〔U.S.Geological Survey 2011/8/29〕