■2011年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●省庁動向
●消費者庁がGMパパイヤを承認

 9月1日、消費者庁はGM作物に関する食品表示の規則を改定し、ハワイ産GMパパイヤ「rainbow」の日本での流通が可能になった。これにより12月1日に輸入が解禁される。日本で初めて、生で食べる遺伝子組み換え食品が市場に現れることがほぼ確実になった。

 このGMパパイヤは、1990年代に食品としての申請がなされていたが、アレルギーを引き起こす可能性があることから、食品安全委員会での審議が長引き、さらに表示の方法については消費者庁や消費者委員会での審議が長引いていた。生で販売する場合も、他のGM食品表示同様「遺伝子組み換え」「不分別」の表示が認められた。1つ1つの個体である生食用に「不分別」が導入され、消費者には選択しづらいものになった。

 沖縄では、今年に入り台湾産のGMパパイヤが作付け・流通して刈り取る騒ぎがあり、農家は経済的に大きな損失を被ったが、今度は、消費者が影響を受ける番となった。とはいっても、現在、パパイヤの輸入先はハワイからフィリピンに移っており、どれだけ流通するかは不透明な状況にある。 

●消費者庁食品表示一元化検討会始動

 食品表示に関する法律はいままで、農水省管轄の「JAS法」(農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律)、厚労省管轄の「食品衛生法」、同じく厚労省管轄の「健康増進法」(健康食品、トクホなどの表示)、消費者庁管轄の「景品表示法」(正式名:「不当景品類及び不当表示防止法」、以前の管轄は公正取引委員会)等に拠っていたが、2009年に消費者庁が作られたことで、食品表示の一元化に向けた動きが始まった。9月中にも「食品表示一元化検討会」が消費者庁に設置され、新しい法案づくりが始まる。これは7月に消費者基本計画が改訂され、2012年度中の法案提出を目指すことになったのを受けたもの。今後、GM食品表示や原料原産地表示などがどのように扱われるかが、注目される。
●欧州事情
●ポーランドのGMO栽培禁止、継続に

 ポーランド議会はGM種子の栽培を合法とする新種子法案を賛成多数で可決した。大統領が署名すれば発効するため、署名しないよう市民団体が大統領に働きかけていたが、大統領は最終的に署名を拒否、GMO栽培禁止が継続することになった。大統領は「自分はGM作物に反対はしないが、この法案は社会を混乱させる」とその理由を述べた。 〔The Warsaw Voice 2011/8/26〕
 また、ポーランド農相は「この禁止措置は、欧州全体で行なわれるべきだ」と述べている。〔The News 2011/8/26〕

●ハンガリーのGMO違法栽培9000haを破棄

 ハンガリー政府は、GMOの栽培を禁じ、国内で栽培するすべての種子についてGMOの混入がないか確認する規則を3月に定めたばかりである。ところが、検査漏れでGMトウモロコシ(パイオニアおよびモンサント社の品種)が栽培されていたことがわかり、その破棄を求めていた。地方振興省大臣秘書官は8月11日、破棄した面積が8500〜9000ヘクタールに達したと発表した。GM種子がまかれたのは4500ヘクタールあまりだが、その周囲4000ヘクタールが緩衝地帯として破棄された。 〔The Budapest Business Journal 2011/8/11〕

●英国で新たなGM小麦開発

 英国ハートフォードシャーにあるローザムステッド研究所が、GM小麦の試験栽培を申請した。ホルモン成分を生産してアブラムシを駆除するよう遺伝子を組み換えた「Candenza」という品種で、2012年春と2013年春の播種を予定している。アブラムシが捕食者の攻撃を受けたときに出すフェロモン成分を生産するよう組み換えられているので、これを危険信号と認識したアブラムシは小麦を食べるのを止め、小麦から離れるという。しかし、この防除手法については、GM技術を使わなくても可能であることがすでに確認されているなどとして、市民団体は反対している。 〔GM Freeze 2011/7〕

●スペイン州政府がGM稲の許可取り消し

 スペイン・バレンシア州政府はGM稲の試験栽培許可を取り消した。この稲は、イタリア製薬メーカーが開発した、遺伝子が原因で特定の酵素ができないために起きる難病のゴーシュ病治療に用いる酵素を生産させるための稲で、人の遺伝子を導入して開発した。反対運動が強まり、環境への影響が懸念されるとして許可が取り消された。 〔Friends of Earth International 2011/8/19〕
●オセアニア事情
●豪州GMナタネ大量流失

 8月9日、西オーストラリア州でGMナタネが大量に流失する事故が発生した。事故が起きたのは州都パースから南東160キロのウイリアムズに近い国道上で、走行中のトラックが出火し、荷台の底が抜けて積んでいたGMナタネ15トンがこぼれ落ちた。
 消火活動により水とともにGMナタネは大量に流され拡散した。輸送主のCBHグループは、廃棄物除去の会社に依頼したが、完全な除去は難しい。事故の現場からわずか500メートル先に非GMナタネ栽培農家があり、汚染が懸念されている。 〔Western Australia Today 2011/8/10〕
●南米事情
●ブラジルでGM作物拡大

 ブラジルではGM作物栽培が拡大している。今年種まきした面積(2011年収穫)は、前年より13.4%増え2080万ヘクタールに達する見込みである。これは同国の市場調査会社セレレスが8月3日に発表したもので、GM品種の、各作物栽培全体に対する割合は、大豆が82.7%、トウモロコシが64.9%、綿が39.7%。〔Western Farm Press 2011/08/08〕