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ニュース
●遺伝子組み換え作物
●2011年GM作物栽培の現状
GM作物を推進している国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が、GM作物栽培の現状を発表した。2011年のGM作物栽培面積は1億6000万haで、2010年より1200万ha増加し、世界の農地(15億ha)の1割強となった。しかし、1億6000万haのうち1億2300万haを米国・アルゼンチン・ブラジルの三大栽培国が占めている。栽培国は29カ国と、昨年と変わらない。
作付けした1670万戸の農家の大半は中国とインドの農家で、それぞれ700万戸がBt綿を作付けしている。インドではBt綿の栽培面積が全綿の88%に達し、中国では71.5%に達した。新たな特徴としては、米国でアルファルファが20万ha、テンサイが47.5万ha作付けされた。ヨーロッパは、スペイン・ポルトガルで栽培面積が増えているものの、全体的には撤退傾向にあり、7カ国がGM作物栽培を禁止している。アフリカも昨年同様、南アフリカ、ブルキナファソ、エジプトの3カ国のみで、栽培国は増えていない。 〔ISAAA 2012/2/7〕
表1 遺伝子組み換え作物の作付け面積推移(万ha)
1996年 |
170 |
1997年 |
1100 |
1998年 |
2780 |
1999年 |
3900 |
2000年 |
4300 |
2001年 |
5260 |
2002年 |
5870 |
2003年 |
6770 |
2004年 |
8100 |
2005年 |
9000 |
2006年 |
1億200 |
2007年 |
1億1430 |
2008年 |
1億2500 |
2009年 |
1億3400 |
2010年 |
1億4800 |
2011年 |
1億6000 |
(参考:日本の国土面積は3780万ha)
表2 国別作付け面積(万ha)
米国 |
6900 |
大豆、トウモロコシ、綿、ナタネ、カボチャ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ |
ブラジル |
3030 |
大豆、トウモロコシ、綿 |
アルゼンチン |
2370 |
大豆、トウモロコシ、綿 |
インド |
1060 |
綿 |
カナダ |
1040 |
ナタネ、トウモロコシ、大豆、テンサイ |
中国 |
390 |
綿、パパイヤ、ポプラ、トマト、ピーマン |
パラグアイ |
280 |
大豆 |
パキスタン |
260 |
綿 |
南アフリカ |
230 |
トウモロコシ、大豆、綿 |
ウルグアイ |
130 |
大豆、トウモロコシ |
ボリビア |
90 |
大豆 |
オーストラリア |
70 |
綿、ナタネ |
フィリピン |
60 |
トウモロコシ |
ミャンマー |
30 |
綿 |
ブルキナファソ |
30 |
綿 |
メキシコ |
20 |
綿、大豆 |
スペイン |
10 |
トウモロコシ |
その他* |
わずか |
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計 |
1億6000 |
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*その他の国 チリ(トウモロコシ、大豆、ナタネ)、コスタリカ(綿、大豆)、コロンビア(綿)、ホンジュラス、ポルトガル、チェコ、ポーランド、エジプト、スロバキア、ルーマニア(トウモロコシ)、スウェーデン、ドイツ(ジャガイモ)
表3 作物別作付け面積(万ha)
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2011年 |
2010年 |
大豆 |
7540(47%) |
7330 |
トウモロコシ |
5100(32%) |
4680 |
綿 |
2470(15%) |
2100 |
ナタネ |
820(5%) |
700 |
その他 |
70(1%) |
|
計 |
1億6000(100%) |
1億4800* |
*ISAAA発表数字ママ。
表4 性質別作付け面積(万ha)
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2011年 |
2010年 |
除草剤耐性 |
9390(59%) |
8930 |
殺虫性 |
2390(15%) |
2630 |
除草剤耐性+殺虫性 |
4220(26%) |
3230 |
その他 |
わずか |
10 |
計 |
1億6000(100%) |
1億4800 |
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●Bt毒素が対象以外の昆虫の死亡率を上げる
2月15日、スイス連邦工科大学のアンジェリカ・ヒルブリックらの研究チームが、殺虫性作物の殺虫成分Bt毒素「Cry1Ab」によってテントウムシの幼虫の死亡率が増加する、という研究結果を発表した。バイテク企業やGMO推進研究者は、Bt毒素は対象害虫以外には影響しないと言ってきたが、益虫にも影響することが示された。研究チームは、2009年に同様の研究結果を発表したが、直後にGMO推進の研究者から激しい攻撃を受けた。今回の発表は、同じ実験を追試したもの。〔ENSSER
2012/2/27〕
●除草剤ラウンドアップの成分が尿から検出
ドイツの大学が行った研究で、都市生活者の尿サンプルから、除草剤ラウンドアップの主成分であるグリホサートが高濃度で検出された。「Ithaca
journal」掲載の研究報告によると、すべてのサンプルから飲料水基準の5〜20倍のグリホサートが検出されたという。ラウンドアップは除草剤耐性GM作物などの農業で使われるほか、鉄道の線路周辺や、都市部の道路周辺などにも広く散布されている。農薬業界からの圧力などのため、分析データはまだ一部しか公開されていない。〔GM
Watch 2012/1/20〕
●アジア事情
●中国で検討されているGM作物規制法
GMO大国化しつつある中国で、規制に向けた新たな動きが出てきた。その1つが、現在検討されている穀物法である。この法律は、穀物の安定供給と安全性確保を目的としており、とくにGM作物・食品の実験や栽培、流通を規制し、不法な行為を取り締まることで、市民の間で広がっている不信と不安に対処しようというもの。また、中国政府の公式筋によれば、今年はGM穀物の大規模栽培は承認せず、生産はしないという。トウモロコシとイネに関する発言とみられる。〔Business
Week 2012/2/2〕
●GM綿の収量減で自殺者が増えるインド
中国とともにアジアでGMO大国化しつつあるインドでは、相変わらずBt綿農家の自殺が増加し続けており、児童労働の際の健康障害も問題になっている。その最大の原因が収量減である。収量が増加していたのは2002〜2005年だが、その期間の綿栽培全体に占めるBt綿の割合は0.4〜5.6%程度だった。最近4年間では、67〜92%まで増えたが、収量は減少の一途をたどっている。〔Field
questions 2012/2/12〕
●インド州政府がBt綿収量減に賠償命令
インド・マハラシュトラ州政府は、約束した収穫量をあげなかったとして、164名のBt綿農家に賠償金450万ルピーを支払うよう、独バイエル・クロップサイエンス社インド支社に命じた。同社のBt綿品種「SurPass1037」は、収穫量が最低基準にも満たなかったという。〔Economic
Times 2012/2/8〕
●バングラデシュがGMイネの野外実験を承認
バングラデシュ政府が、GMイネの野外実験を承認した。承認したのは、ゴールデンライスと呼ばれるベータカロチンを増量したイネで、別名ビタミンAライスともいう。緑の革命によって開発された「イリ米」と呼ばれる高収量品種(IR-64)に、フィリピンの品種(RC-28)を掛け合わせた品種。
〔The Daily Star 2012/2/5〕
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