■2012年9月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●南米事情
●ブラジルでGM蚊量産体制へ

 ブラジル政府は、英国オキシテック社が開発したデング熱対策GM蚊の生産者の登録を開始し、7月7日に最初の施設が稼働を開始した。この施設は、政府保健省とバイア州の支援や融資を受け、85万ドルをかけて建設された。サンパウロ大学の研究者が指導し、年間400万匹のGM蚊を生産する。
 また、同じデング熱対策GM蚊が、まもなくパナマとインドでも放出される予定である。 〔Thaindian News 2012/7/9など〕


●ブラジルでGMサトウキビの試験栽培開始か

 今年10月から、ブラジルでGMサトウキビの栽培試験が始まる可能性が強まった。除草剤耐性と穿孔虫耐性の性質を併せ持つこのサトウキビは、スイス・シンジェンタ社が開発した。 〔The Hindu Business Line 2012/6/18〕
●アジア事情
●インド州政府、GMカラシナ栽培試験許可を撤回

 インドのラジャスタン州政府が、GMカラシナの試験栽培の許可を撤回した。3カ所での試験栽培の実施が認められていたが、賛成派反対派ともに意見が殺到したため、国民的なコンセンサスが得られるまで待つべきと判断し、2シーズン目の栽培を終了した段階で中止が命じられた。遺伝子工学承認委員会(GEAC)は、中途半端に撤回すべきではないと、この対応を批判した。 〔The Hindu Business Line 2012/6/6〕


●GM稲混入の原因不明

 インドからEUに輸出されたコメに未承認のGM稲が混入していた(本誌2012年7月号参照)。EUからの問い合わせに調査したインド政府は、食品用のGM作物は栽培しておらず、汚染が起きることはあり得ない、と回答した。 〔Down to Earth 2012/5/30〕


●Bt綿栽培農家の新たな自殺原因

 インドのマハラシュトラ州で綿栽培農家の自殺が増えている。その原因が灌漑設備の不足、とする新たな調査結果が発表された。社会開発委員会(CSD)が140人の農家と40人の農業労働者にアンケートを実施してまとめた。降雨量が少なく灌漑設備も整っていない辺境のヴィダルバ地方は、Bt綿の栽培に適してないのではないか、という疑問を改めて突きつけている。それによると、降雨に頼る農家の70%が、非Bt綿の栽培よりもBt綿は灌漑費用がかかると回答している。Bt綿のような高収量の品種は、より多くの水と農薬を必要とするため、灌漑設備が欠かせないと州政府も認めている。 〔Hindu 2012/6/24〕

●モンサント社、インド・マハラシュトラ州で販売権喪失か

 モンサント社のインド法人マヒコ社が、マハラシュトラ州でのBt綿種子の販売権利を失いそうである。同州の農業大臣は、マヒコ社が州政府に無断で種子の闇取引をしたことを強く批判した。すでにこの取引に絡んで数人の逮捕者が出ている。 〔The Hindu Business Line 2012/7/12〕
●中東事情
●トルコ国民はGM食品に「ノー」

 グリーンピース・トルコが行った市民への調査で、83%がGM食品に反対、82%がGM食品について知っていることがわかった。また、80%の人がGM食品を作った企業を信頼せず、60%の人が、その企業の食品を買わなくなるだろう、と回答した。 〔Hurriyet 2012/7/9〕
●遺伝子組み換え作物
●Bt耐性害虫の拡大

 米国イリノイ州で、Btトウモロコシが害虫の被害を受けている。例年より1カ月も早く成虫が作物を食害しているという。殺虫成分(Cry3Bb1)を産生するモンサント社のBtトウモロコシを食べた根切り虫が、死なずに生き延びているという報告は、昨年も米国各州から寄せられていた。害虫が耐性を獲得し、作物の殺虫効果が損なわれているものと見られる。Btトウモロコシに耐性を獲得した根切り虫は、昨年、アイオワ州立大学の研究グループが報告している。 〔Bloomberg News 2012/6/15〕


●GM食品表示
●カリフォルニア州で住民投票実現へ

 今年11月6日の大統領選挙時に同時に、カリフォルニア州でGM食品表示法案が正式に住民投票にかけられることになった。世論調査で常に90%もの人がGM食品表示を支持している同州では、法案成立の可能性が強い。住民投票の結果、表示を義務付ける州法が制定されれば、食品メーカーは2014年7月からGM原料を含む製品に表示をしなければならなくなる。 〔Food Safety News 2012/7/12〕

 この動きを受けて、7月29日に同州民主党がGM食品表示法への支持を表明した。 〔Digital Journal 2012/7/30〕

 これまでもいくつかの州で同様の法案が住民投票にかけられたが、企業による物量作戦により否決されてきた。今回も、表示に反対するペプシコ、コカコーラ、ケロッグなどの企業が、多額の宣伝費を投じた表示反対キャンペーンを準備している。 〔Los Angeles Times 2012/7/19〕

 米国大豆協会の会合で、食料雑貨製造業協会会長のパミラ・ベイリーが演説し、カリフォルニア州で食品表示法を成立させないことが、現在最も優先して行わなければいけないロビー活動である、と述べた。 〔Huffington Post 2012/7/30〕
●企業動向
●独バイエル社が米国に拠点建設

 独バイエル・クロップサイエンス社が、米国ノースカロライナ州にGM作物を研究・開発するための一大拠点となる施設を作った。施設は、2000万ドルの建設費をかけ、6万平方フィートの広さ。研究・開発のやり難いドイツから、やりやすい米国に拠点を移動させたとみられる。 〔The Herald-Sun 2012/7/20〕
●国際条約
●ラムサール条約COP11でGM稲論争

 7月上旬、湿地保護のための「ラムサール条約第11回締約国会議(COP11)」がルーマニアの首都ブカレストで開催された。2008年に韓国で開催されたCOP10で、湿地保護の対象に水田を含めるという決議が採択されたのを受けて、COP11に「水田での殺虫剤の使用を制限する」決議案が提出された。この決議案に、殺虫剤の代わりにGM稲導入を目論む方向が示され、会議ではGM稲の是非をめぐる議論が闘わされた。7月13日に採択された決議文には、GM稲導入に道を開く文言が削られ、農薬使用の制限だけが残った。〔Consumers Union of Japan 2012/7/25〕