■2012年11月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る

























バイオジャーナル

今月の潮流●GM作物の有害性を明らかにした仏の動物実験


  フランス・カーン大学の分子生物学及び内分泌学者ジレ・エリック・セラリーニなどが行った動物実験で、除草剤耐性トウモロコシと除草剤ラウンドアップの有害性が示された。論文はピア・レヴュー(審査)を経て、「Food and Chemical Toxicology(食品と化学毒性学)」に掲載された。実験は、モンサント社の除草剤耐性トウモロコシ「NK603」と、除草剤ラウンドアップを用いて行われた。ラットは10の集団、200匹(雄・雌100匹ずつ)が用いられ、長期にわたる実験が行われた。


 1 ラウンドアップを含んだ飼料を与えた集団。
 高濃度、中濃度、低濃度の3つの集団に分け、それぞれ雄・雌 10匹ずつが用いられた。高濃度でも米国で認められている水道水中の農薬の残留基準以下になっている。


 2 GMトウモロコシを含んだ飼料を与えた集団。
 33%、22%、11%のGMトウモロコシを含んだ飼料を与えた3つの集団に、それぞれ雄・雌10匹ずつが用いられた。


 3 GMトウモロコシとラウンドアップの両方を含んだ飼料を与えた集団。
 高濃度のラウンドアップと33%のGMトウモロコシを含んだ飼料を与えた群、中濃度で22%のGMトウモロコシを含んだ飼料を与えた群、低濃度で11%のGMトウモロコシ与えた群の3つの集団に分け、それぞれ雄・雌10匹ずつが用いられた。


  4 ラウンドアップを含まず、非GMトウモロコシを33%含んだ飼料を与えた集団。雄・雌10匹ずつが用いられた。


 1〜3の投与群は、4の非GMOの対照群に比べて、それぞれ少しずつ違いはあるものの、低い暴露でも影響があった。また、雌と雄では影響の出方が異なり、雌は乳がんと脳下垂体異常が多かった。雄では肝機能障害と腎臓の肥大、皮膚がん、消化器系への影響がみられた。

 雄の半分以上、雌の70%以上が早期に死亡している。対照群の早期死亡は、雄で30%、雌で20%だった。また24カ月後までに、投与群の雌の内50〜80%のがんが大きくなったのに対して、対照群では30%だった。
 また、雄の投与群には、対照群の2.5〜5.5倍肝機能障害がみられ、対照群の1.3〜2.3倍が明らかな重い腎臓病を引き起こしていた。
 乳がんに罹患した雌が多かったのは、ラウンドアップがホルモンを攪乱する物質(環境ホルモン)であることが主な原因ではないかと考えられる、としている。〔Food and Chemical Toxicology 2012/9/19〕

 この実験は波紋を投げかけ、フランス政府は保険衛生当局に調査を要請、EUも欧州食品安全機関(EFSA)へ検討を指示した。EFSAは10月4日、第1段階のコメントを発表し、この論文は科学的に不十分である、と評価。10月末には最終的な発表を予定している。
 実験の余波はまだ続く。オーストリア政府は、欧州におけるGM食品の審査の在り方について、再調査を行うようEUに求めた。また、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドにおけるGM食品をめぐる論争にも火をつけた。〔Leader Post 2012/9/20ほか〕
 またロシア政府の規制局は、9月25日、この実験結果を理由に、モンサント社の除草剤耐性トウモロコシ「NK603」について、輸入や作付けについての検討を棚上げする、と述べた。 〔NASDAQ USA 2012/9/25〕