■2002年11月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
モンサント社のBt綿認可される

 8月28日、厚労省薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会は、モンサント社が申請していたBt綿(15985系統)を、7月18日にFDA(米国食品医薬品局)が認可したのを受け、食品として認可した。この綿は、米国での認可が遅れていたため、保留となっていた。

インドでBt綿、壊滅的被害

 モンサント社は、インドの種子企業マヒコ社を買収し、Bt綿の売り込みを図ってきた。今年3月、インドがこの綿の作付けを認めたため、マハラシュトラ州等の綿作地帯で作付けされたが、広範に根腐れ病を起こし、壊滅的な打撃を受けた。充分な実験を行わずに認可した政府への批判が強まっている。損害を被った農家によって、損害賠償を求める動きがでている。   〔ngin 2002/9/6〕

●遺伝子組み換え生物
オーストラリアで不妊ウイルス散布

 オーストラリアでは、ウサギやネズミなど外来の野生動物を減らすために、不妊にさせる方法の開発が進んでいる。現在注目を集めているのは免疫学的不妊法で、雌の免疫システムを欺いて自らの卵子を攻撃して破壊させる方法だ。すでに米国では、注射で薬品を投与し、シカの駆除のために、この方法が使われている。
 オーストラリアでは、さらなる効率化をはかって、ウイルスに薬を運ばせる方法を開発している。マッコーリー大学教授デス・クーパーは、ウイルス利用に対して、この避妊法が効かない動物の出現や他の動物を傷つける可能性を指摘している。〔Hotwired Japan 2002/9/17〕


●海外動向
有機農業への転換を図るドイツのGM論争

 ドイツで、遺伝子組み換え作物の推進・反対両者による「利害関係者懇談会」が共同報告書を発表した。連邦政府は、2002年1月より消費者保護を掲げ、農務省を「消費者保護・食料・農業省」に改編、緑の党のキュナスト党首が大臣に就任し、有機農業・有機畜産への政策転換を図った。この懇談会は、これを契機として行われたものである。
 最大のテーマは、遺伝子組み換え作物と有機農業は共存できるか、にあった。「共存できない」とする反対論者に対して、「すでにGM作物は大量に入っている」と現実的対応を求める推進論者の間での、溝は埋まらなかった。 〔日本農業新聞 2002/9/22ほか〕

ロシアでもGM食品表示義務化へ

 イタルタス通信によると、9月1日にロシアで遺伝子組み換え食品の表示が義務化された。
表示内容は日本と似ており、遺伝子とタンパク質が分解されて検出できない、食用油、コーンスターチ、ブドウ糖シロップ、組み換え原料が5%未満の製品などが表示の対象外である。〔just-food.com editional team 2002/9/2〕

カナダの農家、モンサントに敗れる

 カナダで、近隣にあるモンサント社の遺伝子組み換えナタネ畑から種子が飛んできて自分の畑の有機栽培作物が汚染されたと訴えた農家に対し、モンサント社がそれを逆手に取って、許可なしにモンサント社の品種を栽培したとしてその農家を訴えていた裁判の高裁判決が出た。判決は地裁に続きモンサント社の主張を認めた。
 種子が自然に飛んでいって受粉してしまったか、人工的に植えられたかの如何に関わらず、種子をモンサント社から購入しないで生育されたラウンドアップレディー・ナタネについては(畑を所有する農家が汚染されていることを知らなくても)、その権利はモンサント社側にある、という判決。農家側は最高裁に訴えることにしている。 〔Columbia Daily Tribune 2002/9/24〕


●省庁動向
カルタヘナ議定書批准へ向けて、法整備進む
 9月19日、遺伝子組換え農作物等の環境リスク管理に関する懇談会(農水相私的諮問機関)の第8回会合が開かれ、カルタヘナ議定書関係の最終報告書がまとめられた。すでに農水、環境、経産、文科の4省は、環境省内に7月16日付けで「カルタヘナ議定書国内担保法制定準備室」を設置し、生物多様性条約(カルタヘナ議定書)の批准に向けて、国内法の整備を進めている。従来は制約がなかった、研究者間の遺伝子組み換え生物のやり取りの際に「遺伝子組み換え」と明記すること、野生種を取り扱う場合は資源国への「利益」還流を義務とし、契約を結ぶこと、などの制約がさらに増えることになる。

アグロバクテリウムは動物細胞に感染?
 
今年1月31日に文科省の「組換えDNA実験指針」が改訂され本年度より施行されたが、改訂にともなってアグロバクテリウムをベクター(遺伝子の運び屋)に用いるなど未知の遺伝子を導入する場合は、機関承認から大臣承認へと、規制が厳しくなっていることが判った。
 アグロバクテリウムは植物にがんを起こすウイルスで、アグロバクテリウムのもつTiプラスミドは植物細胞の遺伝子組み換えに一般的に用いられているが、このほど動物の細胞の遺伝子も組み換えることが判ったからだ。


 

ことば
*Bt綿
 枯草菌の一種バチルス・チューリンゲンシス(Bt)の作る毒素の遺伝子を組み込んだ綿のこと。蛾の幼虫が食べると、毒素の効果により死に至る。