■2002年12月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●健康食品
健康エコナは効果なし

 10月4日、筑波大学の鈴木正成らが肥満学会で、花王の体脂肪がつきにくいことを宣伝文句にしている食用油「健康エコナ」に体脂肪低減効果を疑問とする研究結果を発表した。ラットとヒトを用いた実験で、他社のサラダ油と比較したところ、血清中性脂肪濃度などほとんどの検査項目で有意差が見られなかったという。健康エコナは、厚生労働省の特定保健用食品として認められている。

●省庁動向
バイテク(BT)戦略会議、中間報告まとめる

 10月18日、バイオテクノロジー分野における国家レベルでの総合的な戦略を立てることを目的に、政府が設置したBT戦略会議の中間報告がまとめられた。
 2001年の国内の市場規模を1.3兆円として2010年には25兆円産業に成長すると予測し、さらなる開発の推進を謳っている。基礎研究から産業化、そして国民への理解を高めることなどの具体的な戦略が定められている。2002年度中にはBT戦略大綱がまとめられる。

厚労省、死亡胎児の取り扱いで議論紛糾

 10月31日、再生医療の臨床応用に際しての指針作りを進めている、ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)が開かれ、指針案の内容を項目ごとに確認していく作業が行われた。とくに問題もなく確認作業はスムーズに進んだが、ヒト幹細胞等の採取に関する項目で、死亡胎児の細胞をどうするかで議論がストップした。死亡胎児の細胞を用いた研究はすでに国内でも行われているが、その取り扱いが公的な機関で話し合われるのは日本初である。指針に盛り込むのか、または付則とするのか、結局まとまらず次回以降でさらに議論することとなった。


文科省、遺伝子組み換えヒトES細胞研究承認へ

 10月29日、第12回特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)が開かれ、慶応大学医学部が申請していたヒトES細胞の使用計画が承認された。この計画は、米国などの海外から輸入したヒトES細胞を利用して神経幹細胞を作り出そうというもので、分化誘導の効率化を図るために遺伝子組み換え技術が用いられる。導入される外来遺伝子は、Sox2などの神経細胞の分化に関係する遺伝子である。同日、東大医科学研究所と東大医学部が申請していた2つの使用計画も同時に承認された。これでヒトES細胞の使用計画の承認は、全部で5件となった。



●海外動向
米国のGM食糧援助告発される

 米国の市民団体グリーンピースとアクションエイドは、国連を利用してアフリカに余剰食糧援助している、米国政府の海外援助機関を告発した。
 米国は、国連世界食糧計画を通して、2億6600万ドル以上のトウモロコシをアフリカ6カ国に援助したが、ザンビア、ジンバブエなどは受け取りを拒否しており(本誌2002年7、8月号参照)、被援助国の対応も分かれている。
 この援助穀物は、遺伝子組み換え作物に限定されているため、国連の援助システムを利用して、遺伝子組み換え作物を作付けしている農家の補助金に当てている、と団体は指摘している。〔ガーディアン、2002/10/07〕

ワシントンポスト紙が欧州のGM対応を批判

 ワシントンポスト紙の社説が、遺伝子組み換え食品へのヨーロッパの対応を批判した。
 「遺伝子組み換え食品は、煩わしい表示制度によって、事実上市場から排除されるだろう。遺伝子組み換え技術が健康被害をもたらす根拠がないのに、ヨーロッパの人々は、表示を強く主張している」と米国の利益を前面に掲げた主張を展開し、米国政府はヨーロッパの反科学的な偏見を変えるように「WTOに提訴すべきだ」と述べている。〔ガーディアン、2002/10/31〕


●企業動向
玉ねぎの「涙」の遺伝子発見

 ハウス食品は、京都大学などとの共同研究で、玉ねぎを切るとき涙を誘う物質(催涙成分)プロパンチアールSオキサイド合成酵素(催涙因子合成酵素)とその遺伝子を発見し、Nature誌10月17日号に発表した。この遺伝子を操作すると、切ったときに涙の出ない玉ねぎの開発につながる可能性があるが、同社は実用化に関しては白紙としている。

モンサント社が提携戦略

 米モンサント社の企業戦略に変化が起きている。10月2日、同社は米ダウ・アグロサイエンス社と、除草剤耐性や殺虫性作物の開発で技術提携に踏み切った。同社と、ダウ社の子会社でバイオ・ベンチャー企業のマイコジェン社との長期にわたるGM作物開発の技術をめぐる特許紛争も、和解することになった。同社はすでにデュポン社との紛争も解決し、提訴から提携に戦略を切り換えている。


●BSE
英国でのBSEは過小評価されていた

 英国におけるBSEは、従来の推定数の2倍の規模という検査結果が発表された。
 ロンドン大学インペリアカレッジの統計学者C・ドネリーらが、99年から2000年に屠畜された牛を新しい生化学テストの方法で検査したところ、感染牛の数は、従来の推定数の2倍に当たる200万頭を超えることが明らかになった。
 さらには9月に、手術で摘出された人の脳組織試料から、牛からの感染が原因とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が見つかり、感染者数の増加も考えられる事態になっている。〔ネイチャー・ニュース・サービス 2002/10/17〕