■2003年1月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●海外事情
英国医学協会がGMナタネ実験中止を求める

英国医学協会(BMA)は、英国内の医師の80%以上が加盟している組織である。BMAは、スコットランド議会保健委員会に対して、人々の健康を守るために、スコットランドで行われている遺伝子組み換えナタネの試験栽培を中止すべきである、との文書を提出した。遺伝子組み換え食品を長い間摂取した際の健康への影響、とくに抗生物質耐性に関して強い懸念を示し、予防原則を取るべきだとしている。 〔BBC News 2002/11/20〕

医学誌が遺伝子組み換え食品に言及

国際的に権威のある医学誌「ランセット」が、遺伝子組み換え食品に言及した。WHO(世界保健機関)の文書を引用し、遺伝子組み換え食品の長所としては栄養改善に寄与するかもしれないとのみ触れている。一方短所は生物や食品の多様性を脅かし、農家のバイオ企業への種子依存度を高め、新しいアレルギー性疾患を引き起こし、抗生物質耐性菌を広め、遺伝子汚染が食品の安全性を脅かすなどとしている。 〔The Lancet 2002/10/26〕

中国遺伝子組み換え食品事情

 中国全国人民代表大会代表で、中国種子協会会長Wang Lianzhengは、中国の人々の大半が遺伝子組み換え食品に対して潜在的な危険性を感じており、消費者が選択できるように遺伝子組み換え食品を区別すべきであり、長期の安全性評価がいまだわからないので、「人々は実験用マウス」になっている、と述べた。
〔Dow Jones Newswire 2002/11/8〕

アルゼンチンのGM大豆畑さらに拡大

 米国に次ぐ世界第2位の遺伝子組み換え作物作付け国のアルゼンチンで、遺伝子組み換え大豆の作付け面積がさらに拡大し、2002年には全大豆畑面積の95%、全農地の40%以上に達したと見られる。同国では大豆の作付けだけが拡大しており、一国の農産物をこれほどまでにGM作物に依存させてよいものか、同国の業界オブザーバーらが懸念を表明している。 〔農水省HPより〕

パキスタン政府がGM種子解禁か?

 綿の生産が主力産業のひとつであり、GM種子輸入禁止政策をとるパキスタンで、違法の遺伝子組み換え綿が広まったため、綿の繊維の色が白から赤に変わったり、枯れるなどの被害が起きている。遺伝子汚染の原因は米国、オーストラリア、中国からの密輸入と考えられている。そのため同国政府は、GM種子輸入禁止政策を見直して、「素姓のわかった種子」の輸入へ政策転換を検討し始めた。
 しかし、同国農業研究センターなどの専門家は、生物多様性条約(カルタヘナ議定書)に基づいた規制を行うように求め、環境保護団体は、環境や人体に影響があるとして、解禁しないように求めている。
〔インタープレスサービス 2002/11/23〕

欧州農相理事会が新表示規則に合意

 11月23日、欧州農相理事会は遺伝子組み換え食品・飼料に関する新表示規則に合意した。この新規則は、欧州委員会が提案し、去る7月3日に欧州議会(第1読会)で可決し、理事会に送られていたものである。英国が遺伝子組み換え食品推進の立場から反対し、オーストリアなどは規制が不十分だとして反対したが、多数決で決められた。次回の農相理事会で正式に採択され、欧州議会(第2読会)に送られ、可決されると正式に規則として認められることになる。
 全食品を表示対象とする、微量成分(加工食品中のわずかな原材料や添加物)の表示、食品中の偶発的混入率を0.5%未満とする点などは、欧州議会(第1読会)で可決された内容で、0.9%未満は表示義務がないとした点が新しい。注目されていたGM飼料を用いた、肉や卵、ミルクなどの家畜製品の表示は見送られた。
〔New Scientist 2002/11/29〕

●環境ホルモン
除草剤アトラジンでカエルの生殖機能に異常

 バイオ企業大手スイス・シンジェンタ社の除草剤アトラジンは、日本でも広く使用されている。以前から環境ホルモンにリストアップされていたが、米カリフォルニア大学タイロン・ヘイズらの研究チームが、カエルの生殖機能に異常を生じさせることを確認し、10月31日付Nature誌に発表した。
 ワイオミング州など8カ所で調査した結果、最高で92%のカエルに精巣の発達障害やメス化などの異常が起きていた。また、アフリカツメガエルのオタマジャクシを用いた実験では、0.1ppb(100億分の1)の濃度でカエルに生殖機能障害が発生した。
 アトラジンはこれまでにも鮭や鼠に影響が見られ、人間の細胞内で砒素の毒性を活性化することがわかっている。早急な禁止を求める声が、高まっている。
〔I-SIS プレスリリース 2002/11/10〕


●遺伝子治療
厚生労働省、遺伝子治療継続を表明


 レトロウイルス・ベクターを用いた、X連鎖重症免疫不全症の遺伝子治療で副作用がフランスで起きたことは前号で伝えたが、フランスやドイツなどで類似の治療の見直しが進められている。日本では東北大学が同治療を計画しているが、実施を保留している。
 一方、厚生労働省は、遺伝子治療の実施を中止させることはしない、との見解を述べた。
〔日経バイオテク 2002/11/4〕


●クローン
ほんとうにクローン人間誕生?


 イタリア人医師セヴェリノ・アンティノーリは、去る5月に3人のクローン人間の妊娠を発表したが、そのうち1人が来年1月に誕生する予定だと11月26日に発表した。胎児の重さは2.5〜2.7kgで、他の2人も妊娠27〜28週にあるという。しかし同医師は、この妊娠・出産に直接かかわっておらず、裏付けとなるものも一切示していない。また同医師がクローン技術に熟知している証拠もない。そのため本当にクローン人間誕生なのか、疑問視する声も多い。 〔New Scientist 2002/11/27〕