■2003年1月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子解析
福岡県で住民から遺伝子採取

 九州大学は、福岡県久山町と共同で、住民の血液を採取して遺伝子を収集・解析する研究を始めた。九州大学久山町研究室(清原裕主任研究員)は、40歳以上の全住民から遺伝子を集め、健康診断のデータと照合して病気の遺伝子を解析していくとし、すでに3000人から承諾を得ているという。
 アイスランドではすでに全国民を対象に同様の解析が進められている。日本でも久山町のような例が、増えていくのかもしれない。 〔日経バイオビジネス 2002年11月号〕

●省庁動向
バイテク(BT)戦略会議、大綱素案まとまる

 2002年11月26日、BT戦略会議の第4回会合が開かれ、バイオテクノロジー戦略大綱の素案がまとめられた。これは、前号(2002年12月号)で報告した中間報告がもとになっており、3月までには正式な大綱として公表される。さらに、政府の動きと連動し、内閣府の総合科学技術会議重点分野推進戦略専門調査会のなかに設置されたBT研究開発プロジェクトチームでも、同年11月20日にBT研究開発の推進についての報告書がまとめられた。大綱の素案を受ける形で、研究開発にしぼってその方向性などを示している。これらによって、今後ますます日本のバイオテクノロジー開発は加速しそうだ。

厚労省、死亡胎児の細胞採取を認める

 2002年11月15日、厚労省の専門委員会(ヒト幹細胞臨床研究専門委員会)は人工妊娠中絶によって生じる死亡胎児からの細胞採取を認め、指針に盛り込むことを決めた。どのような形で指針に書き込むかは今後、さらに議論される。しかし、ここで検討されているのはあくまでも臨床研究に際しての細胞採取であり、基礎研究に用いる場合には事実上なんの規制もない。会合でも、死亡胎児の取り扱いという本質的な議論は避け、臨床研究に使うための条件を決めることに終始していた。これでは、使いたい人たちが推進のためのインフラ整備をしているだけと思われてもしかたがないだろう(2002年12月号参照)。


●遺伝子組み換え実験
筑波大学、無許可栽培に不自然な回答

 昨年11月、筑波大学遺伝子実験センターが遺伝子組み換えトウモロコシEvent176を無認可で栽培していた事実が発覚した。これに対して地元の市民団体などが質問状を提出。12月3日、同大学事務局に市民団体のメンバーが出向き、大学側の答えを聞いた。同大副学長の高木英明は、原因は生物科学系教授・鎌田博の「すでに認可ずみと勘違い」していたためと説明し、今後は学内でのチェック体制を強化するという。しかし、文科省の組換えDNA技術等専門委員会の委員まで務める鎌田が、うっかり間違えて無認可の種子を栽培するというのはどう考えても不自然である。もし本当にそうだとすれば、そのような人物が国の専門委員会の委員を務めていること自体が問題になるはずだ。


●ES細胞
文科省、再々申請の信州大の計画を承認

 2002年12月3日、第13回特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)が開かれ、信州大学医学部が再々申請していたヒトES細胞の使用計画が承認された。米国ワイセル社から輸入したヒトES細胞を利用して心臓の筋肉や肝臓の細胞を作り出そうという計画である。最初に文科省に申請したのが2001年12月6日だから、実に1年にわたって審査が行われたことになる。その間、専門委員会の指摘によって計画書は2回書き換えられている。今回の承認で明らかになったことは、文科省では申請された計画は決して却下しないということだ。計画書におかしな点があれば、それを指摘して訂正版を再提出させ、最終的には承認にもっていく。胚を破壊して作られたヒトES細胞を用いる計画が、このような審査によって認められているのである。


●遺伝子組み換え作物
遺伝子組み換え稲「祭り晴」開発中止に

 11月17日、名古屋で遺伝子組み換え稲に反対する全国集会が開催され、600人が参加した。翌日の集会参加者代表と愛知県との交渉(於愛知県農業総合試験場)の席で、前日までに集められた25万7730筆の署名が県に提出された。その数は、7月に提出した署名と合わせると58万830筆に達する。
 集会や署名が効力を発揮し、12月5日の愛知県議会において、愛知県農業総合試験場とモンサント社が共同開発してきた除草剤耐性稲の開発中止が明らかになった。
 中村友美議員(民主党)の質問に対して愛知県農林水産部長は「@6年間の研究の結果、除草剤抵抗性遺伝子を導入した有望な系統を作出できる見通しがたったので、平成15年3月末日をもってモンサント社との共同研究を終了する。A作出した遺伝子組み換え稲については、消費者等に不安感もあり、商品化に必要な厚生労働省への安全性審査の申請は行わない」と答弁した。12月12日、モンサント社は非公式に断念を発表し、同社が進めてきた日本での除草剤耐性稲の開発計画は、事実上頓挫したといえる。