■2015年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●カルタヘナ法の規定が大幅に緩和


 6月23日、カルタヘナ法で規定されている「第2種使用」が大幅に規制緩和された。「第1種使用」が農業など遺伝子組み換え生物を野外で扱う際の規制であるのに対して、「第2種使用」は、工場など閉鎖系で扱う際の規制である。この「第2種使用」については、大規模生産に関する規格を定めた、GILSP(Good Industrial Large Scale Practice、優良工業製造規範)に基づいて行なうことが求められている。GILSPで「問題ない」とされた、宿主・ベクターと挿入DNAを組み合わせた遺伝子組み換え微生物は確認申請なしに使用できることになっている。

 この拡散防止の要である「GILSP遺伝子組み換え微生物(告示)」が今回緩和された。遺伝子組み換えは宿主・ベクターと挿入DNAの組み合わせで行われ、それ以外は別個に承認手続きが必要である。これまでGILSPで「問題ないため手続きは必要ない」とされていた宿主・ベクターと挿入DNAは、経産省と厚労省でそれぞれにリストが作られていた。それを統合して、片方の省だけがリストアップしているものも使用できるようになった。これにより、使用できる遺伝子組み換え微生物が大幅に増えることになる。

 さらに挿入DNAに関しては、これまで宿主ごとに使用できるものが限定されていたが、その限定を外すことになった。宿主についても、これまで株が限定されていたが、それも外すことになった。また、GILSPの告示へ新規品目の掲載を希望する際の手続きも簡略化された。さらには挿入DNAの発現産物の一部しか使用実績がない場合、リストへは一部しか掲載できなかったが、その限定も外してしまった。

 要するに、手続きなしでなんでもできるようになってしまった。これまで遺伝子組み換え微生物に関しては、未知の有害物質の産生や微生物自体の変化による未知の毒性などが懸念されていたが、はっきりと有害だとわかる例を除き、どんな遺伝子組み換え微生物でも使用できることになった。これは医療や医薬品生産だけでなく、食品や食品添加物などの生産にもかかわるため、私たちの健康を脅かすことになり、食の安全への脅威になる。