■2015年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース



●遺伝子組み換え作物
●GM作物が生殖機能を破壊

 エジプトのスエズ運河大学農学部と獣医学部の研究チームによるラットを用いた実験で、GM作物の生殖機能への甚大な影響が明らかになった。ラットの体重、臓器及び血清生化学的分析に異常が見られ、とくに腎臓と肝臓に病的な変化が見られた。91日後に解剖したところ、精巣の壊死が起き精原細胞ができていないなど、雄のラットの生殖機能が破壊されているケースが目立った。〔Nation of Change 2015/7/7〕

●欧州事情
●フランスでGMラム肉が出回る

 フランスでGMラム肉が出回っていた。このGM羊は、フランス国立農業研究所が2009年より開始した実験により作成されたもの。組み込まれた遺伝子はクラゲの発光遺伝子で、羊は青光りしている。通常、GM動物は、最後は安楽死され焼却処分される。しかし、GM羊は2014年11月、食肉処理場に売却されていた。内部調査の結果、研究者同士のいさかいで、嫌がらせのために市場に流したという。〔Inquisitr 2015/6/23〕


●英国で開発中のGM小麦、効果確認できず

 英国で開発していたGM小麦が失敗した。このGM小麦は、イングランド南部にあるロザムステッド研究所がアブラムシ対策のために開発したもので、虫が嫌うフェロモン(β-フェルネセン)を遺伝子組み換えで放出するようにしたが、その効果が試験栽培で確認できなかった。研究には市民からの批判が強く、研究所では開発費用の3倍もかけてフェンスを張るなどのセキュリティ対策をしていた。〔Reuters 2015/6/25〕


●欧州食品安全庁が環境リスクを見直す

 自然保護地域の蝶や蛾を守るため、欧州食品安全庁(EFSA)はBtトウモロコシの花粉の暴露を低減するよう、リスク管理の見直しを行なった。これまでEFSAが採用してきた数学的モデルでは、花粉の飛散距離は数十メートルに限定していたが、それを数百メートル、時には数千メートルまで推定できるモデルに変更した。〔EFSA News 2015/7/1〕


●ドイツで母乳に高い濃度の農薬汚染

 ドイツ緑の党がドイツ各地の女性16人の母乳を調査したところ、除草剤耐性作物に用いられるラウンドアップの主成分グリホサートが高い濃度で検出された。汚染レベルは、1リットルあたり0.21〜0.432ナノグラムだった。飲料水では同0.1ナノグラム以上含まれてはいけないことになっている。分析したオルデンブルク大学毒物学教授のイレーネ・ヴィッテは、「こんなに高い数値が出るとは考えもしなかった。耐えられない」と述べた。〔The Local 2015/6/26〕

●北米事情
●米国で国レベルのGM食品表示法の審議始まる

 米国州政府によるGM食品表示法制定を無効にしようと、「食品表示法案(HR1599)」の審議が連邦議会で始まった。法案を提出したのはカンザス州選出の下院の共和党議員マイク・ポンピオで、州政府ごとに異なるGM食品表示法の統一を目的とするが、事実上、バーモント州で来年施行されるGM食品表示法を無効にするのが狙いである。提出された法案の中身は、次のとおり。
米国食品医薬品局(FDA)が安全性を評価し、必要なもののみ表示を義務付ける――問題のあるもののみが表示の対象になり、ほとんど表示はされない。全米共通の非GM作物認定プログラムを作る――非GM作物認定のハードルを高くして、ほとんどに表示はされない。この法案が施行されると各州の表示法は無効になる。〔The Hill 2015/6/24ほか〕

●マウイ島のGM試験栽培一時停止条例、無効の判決

 ハワイのマウイ島では、昨年11月4日に行われた住民投票で、GM作物の試験栽培を一時停止させる条例が過半数を得、施行されることになった。これにより、安全性評価が完了するまで野外試験栽培ができなくなったため、モンサント社などが条例の無効を訴えて提訴した。このほど連邦裁判所第二巡回裁判所は、このような権限は郡のような小さな自治体では有しないので、条例は無効であるという判決を出した。住民は、憲法で保障されている市民の権利を奪うものだとして控訴を行う声明を出した。〔Maui Now 2015/7/1〕

●カナダがGMO微量混入容認を提案

 カナダ政府は未承認GM作物のゼロ混入政策を執ってきたが、このたび微量混入を容認するよう提案し、一般からの意見を募集した。これに対して市民団体Canadian Biotechnology Action Networkは、従来通りゼロ混入を貫くべきだと批判した。GM作物の輸出国であるカナダは、未承認作物の微量混入によって輸出先で受け入れを拒否され、経済的損出を被ったことがあった。そのため他の国にも微量混入を要求していく布石ではないかと見られている。〔Canadian Biotechnology Action Network 2015/7/7〕