■2003年3月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●体細胞クローン牛食卓へ


 体細胞クローン牛が、今春食用にまわされる可能性が強まった。昨年、農水省が出した、クローン牛は食べても安全、という報告を受けたものだ(2002年10月号)。しかし、同省が発表している「家畜クローン研究の現状」では、昨年9月末時点で、誕生した体細胞クローン牛318頭のうち、死産55頭、生後直後の死亡43頭、病死等52頭、事故死等27頭となっており、現在研究機関で育成・試験中は少ない。
 死産・出産直後の死亡、病気で早く死ぬケースが多い点に関して、原因が解明されたわけではない。昨年11月号で既報したが、米ホワイトヘッド生物医学研究所・ゲノム研究センターの研究チームは、体細胞クローンマウスの遺伝子に多くの異常が見られると報告している。寿命の短さも、2月14日、クローン羊ドリーが通常の寿命の半分の6歳で死亡したことで裏づけられた。

 また、英国の科学者リチャード・ガードナーは、体細胞クローン技術を用いると、母体が子宮がんに罹患する可能性があると指摘している(2002年6月号)。クローン人間誕生が話題になっているが、影響は誕生した赤ちゃんだけではないのである。
 このまま、クローン牛が増えていけば、生物学的に弱かったり、病気になりやすい牛が増えていくことになる。また、問題点が解明されないまま消費者が肉や牛乳などの形で食べて、はたして安全なのだろうか。疑問点が多く残されたまま食用に踏み切るようだ。