■2003年3月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え花
北興化学がGMシクラメンを開発

 北興化学工業が、色素遺伝子を操作し、白、赤、ピンクの単色と、赤と白の混じったシクラメンをつくりだした。
 現在、シクラメンでは、奈良県農業技術センター、泉農園、サントリー、香川大学研究チームが、耐病性や耐暑性の品種の開発を進めている。サントリーの青いカーネーションのヒットが、GM花開発を加速させている。
〔日経バイオテク 2003/1/20〕


●企業動向
米国でも農家が敗訴したが……

 モンサント社から、除草剤耐性大豆の種子を契約に違反して使用したとして訴えられた農家は、本誌(2002年11月号)で紹介したカナダのシュマイザーなど多い。
 米ミシシッピー州の大豆農家マックファーリングもその一人である。米最高裁はこのほどモンサント勝訴の判決を下し、同氏に対して78万ドルの支払いを命じた。

 この判決では3人の判事の内1人が反対の立場をとった。その理由は、モンサント社との契約に基づいて農家は除草剤耐性大豆を栽培しているが、現行の契約は強者によって一方的な条件を押しつけたものである。200以上の企業がラウンドアップレディ大豆の種子を販売し、そのすべての企業が農家に対してモンサント社との契約サインを求めている。全米の大豆の大半がモンサント社に依存している以上、マックファーリングのような農家が大豆市場で競争力をもつには、契約にサインをするしか道は残されていない、というものだった。

 この種の裁判の多くは、契約後2年目の自家採種や、こぼれ落ちた種子などについて争われている。判事が述べているように、結局は世界のすべての農家をモンサントの配下に収めようとしているのが、現在の状況である。


●遺伝子汚染
スターリンク汚染止まらず


 昨年12月27日、厚生労働省は、米国産コーンスターチ用トウモロコシの検査で、名古屋港に入ったトウモロコシの中に、2000年に問題になった未承認の品種「スターリンク」を確認し、廃棄か積み戻しを命じた。
 未承認品種に関して、食品用は混入が認められていないが、飼料用としては昨年、指針が改正されて1%未満であれば混入を認めたため、今後スターリンクが検出されても、1%未満であればこのような処置は取られない。
 農水省によると、スターリンク混入を示す陽性率は、2000年上半期66.7%、2000年下半期47.2%、2001年上半期15.0%、2001年下半期11.1%、2002年上半期10.0%であり、汚染は続いている。


●遺伝子治療
遺伝子治療の副作用を受け計画一時中止に

 1月29日、第12回科学技術部会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)が開かれ、遺伝子治療作業委員会における検討結果が報告された。フランスで行われていたX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)に対する遺伝子治療の副作用で2人の患者が白血病に罹ったことを受け(本誌2002年12月号参照)、日本国内で計画・進行中のレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療はすべて、一時中止の措置がとられた。一時中止となったのは、東北大学付属病院、北海道大学付属病院、癌研究会付属病院の3施設である。東北大学付属病院では、フランスで問題となったベクターとまったく同じものを用いて実施することが予定されていた。遺伝子治療は、もともと有効性については疑問視されており、ここにきて安全性をも揺らいだことから、根本的に見直す時期にきている。


●クローン
解禁への地ならし?――都内で公開シンポ開催

 2月2日、東京・四谷で「妊娠・出産をめぐる自己決定を支える会」(略称:FROM)の第5回総会が開かれた。 
 この会は、産婦人科医や弁護士が中心となり、不妊治療に関する様々な問題を当事者の自己決定によって解決することを目的に、2001年に設立された非営利の団体である。会長は慶応大学名誉教授の飯塚理八が務め、第三者からの提供卵子を用いた体外受精を強行して日本産科婦人科学会を除名された根津八紘(諏訪マタニティークリニック院長)も幹事として名を連ねている。

 今回のテーマの一つにクローン問題があり、「不妊治療としてのクローン技術を考えましょう」と題したパネルディスカッションが行われた。司会者の「日本では法律で禁じられているけれども、本当にいけないものかどうかを議論するセッション」との発言からも分かるように、解禁に向けての地ならし的な意味合いが含まれているようだ。昨年末に「世界初の人クローンが誕生」と話題になったが、国内においても、不妊治療という名の下に人クローン個体を作成するための議論は始まっている。

●生殖医療
厚労省、生殖補助医療で意見募集

 不妊治療の基準作りを進めている生殖補助医療部会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)は、これまでの検討結果をまとめ、1月14日から31日までの間、一般からの意見(パブリックコメント)を募集した。約2週間という短期間にもかかわらず、個人44、団体7の計51の意見が寄せられた。しかし、これらの意見は、2月6日に開かれた第23回会合の資料として添付され、事務局から若干の説明があるものの、それで終わりである。委員長からは、「各委員はこれを今後の議論の参考にしてください」という一言のみ。政策決定の過程でパブリックコメントを募集するのはいいことだが、その取り扱いに関しては非常にお粗末と言わざるを得ない。同部会は、3月末までに議論を終わらせる予定だという。