■2003年3月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
Bt耐性害虫拡大の恐れ

 害虫抵抗性作物は、害虫である蛾の幼虫を殺すBt毒素をもち、殺虫剤の使用量を抑えるなどの省力化・コストダウンを目的に開発された。栽培当初より耐性をもった害虫が出現して問題になっていたが、そのさらなる拡大を予期する調査結果が、ノースカロライナ大学のフレッド・グールドらによって発表された。
 標的とする蛾の幼虫は、夏の間は米国中西部でトウモロコシを食べて育ち、成虫となって秋には南部に渡る。グールドらが行った調査では、そこで生まれた幼虫がBt綿を食べていることが分かった。このオオタバコガの幼虫は、トウモロコシと綿の2つの作物からBt毒素を摂取しているため、耐性をもちやすいことが確認された。現在、南部の綿は80%前後がBt綿だが、中西部のBtトウモロコシは25%前後であるため、まだ劇的に進行していないが、Btトウモロコシの割合が増えると厄介な問題になるだろうと、グールドは指摘している。
〔Nature Bio News 2002/12/12〕

除草剤耐性小麦、米国・カナダで申請

 米モンサント社は2002年末、農務省と食品医薬品局にGM小麦の作付けと販売認可の申請を行った。モンサント・カナダ社もまた、GM小麦の作付けと販売認可を政府に申請した。いずれも除草剤耐性(ラウンドアップレディ)小麦で、主食が初めて申請されたことになる。
 しかし、現在モンサント社は、未承認作物が流通すると回収しなければならないため、日本やEUなどの輸出国で承認されない限り、米国やカナダにおいても種子販売などの商業化は行わない方針を取っている。

カナダのGMナタネ64%に

 昨年12月20日に東京で開催された日加ナタネ協議で、2002年のカナダにおける遺伝子組み換えナタネの作付け割合が前年より3%増加して64%になったと、農水省より発表された。現在栽培されているナタネは、モンサント社の除草剤耐性(ラウンドアップレディ)ナタネとバイエル・クロップサイエンス社の除草剤耐性(リバティリンク)ナタネで、その比率は2対1である。
 ただし、カナダの昨年のナタネ生産量は大旱魃の影響で大幅減産になり、日本への輸出や在庫に影響が出るものと思われるが、最近はオーストラリア産の輸入が増えているため、カナダへの依存度は減少し、2002年は全輸入量の77%と推定される。 〔日経バイオテク 2003/1/20〕

GM作物の日本流入量増加

 日本が食料を依存している国々で、GM作物の割合が増加したため、私たちの食卓に出回る割合も増加した。その結果、トウモロコシは約3割近くになり、大豆とナタネは5割を超えた。食用油の半分は、GM作物になってしまった。わずかな救いは、大豆の自給率が少し上昇したことである。

表1 遺伝子組み換え作物の作付け面積の割合(%)
1999年 2000年 2001年   2002年
トウモロコシ(米国) 33 25 26 34
大豆(米国) 57 52 68 75
ナタネ(カナダ) 50 55 61 64
綿実(オーストラリア) 15 27 42
ジャガイモ(米加)  4%前後  1%前後  1%以下    0

表2 日本の食卓に出回る組み換え作物の割合(%)
2002年の
作付け割合
日本の輸入の
割合(2001年)
日本の自給率
(2001年)
食卓に出回る
割合
トウモロコシ(米国) 34 米国から
約87.6
0.0 29.8
大豆(米国) 75 米国から
約75.5
5.2 53.7
ナタネ(カナダ) 64 カナダから
約81.1
0.1 51.9
綿実(オーストラリア) 42* 豪州から
約96.0
0.0 40.3
*:2001年の作付け割合

●海外援助
インドが食料援助拒否

 ザンビアなど第三世界の国々で、GM作物が混入していることを理由に米国からの食料援助を拒否する例が増えているが、インド政府もまた、米国からの援助を拒否した。
 アジット・シン・インド農業大臣は「GM食料輸入についてこれから判断を下す段階にある。いまはインドには余剰の蓄えがあるため必要ない」と述べた。
 他方、インドと米国の両政府間の協議に基づいて、米国企業ドナルド・ダンフォース・プラント科学センターとインド・バンガロール農業大学などの間で、共同研究・開発に合意している。これについてインドのNGOは、米国の多国籍企業がインドにGM作物を売り込むものだ、と批判している。 〔インディアン・エクスプレス 2003/1/5〕

ザンビアの農業大臣、食料援助拒否を語る

 ムンディア・シカタナ・ザンビア農業大臣は、メイ・ワン・ホーら消費者団体のメンバーに対して、米国からの食料援助を拒否し、自給自足の国家建設を進めるという計画を、次のように述べた。
――遺伝子組み換え作物が入っていることを理由に、食料援助の提供を拒否した際には、「乞食は選択できるものではない」とまで言われた。また、米国への招待もあった。それらは拒否の意志を固くするだけだった。米国のテレビニュースでは、アフリカでの飢餓の映像を流し、ザンビアだと伝えていたが、後にエチオピアやソマリアであることが判明した。
 「飢餓」の状況は確かに存在するが、だからといって遺伝子組み換え作物を食べなければならないほど危機的な状況に至ってはいない。私たちには豊かな天然資源があり、皆一生懸命に働いている。飢餓の原因の克服に取り組むことこそが大切と考え、在来種の果実の生産再開や、作物の多様性の復活などに着手した。
 訪問団は、先進国の消費者がザンビアのこの取り組みを支えるよう提起した。現在、ザンビアのGDPの20%が債務返済に使われており、健康や教育のための予算はわずか2%に過ぎない。ザンビアの産物を購入し、債務を帳消しにさせることが重要である。 〔I-SIS 2003/01/13〕