■2003年5月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る





















































































バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
米国のGM作付け割合増大

 米国農務省農業統計部(NASS)は3月31日、今年の農作物の作付け予測を発表した。遺伝子組み換え作物の作付け割合をみると、大豆が前年より5%増の80%、トウモロコシが4%増の38%、綿は1%減の70%となっている。全体的に増えているものの、有機生産農家などとの関係上、GM作付け限度に近づいていることが綿の減少で見てとれる。
〔NASSホームページ〕

表1 遺伝子組み換え作物の2003年作付け予測
作物 除草剤耐性 殺虫性 除草剤耐性+殺虫性
大豆 80% 80%
トウモロコシ 9% 26% 3% 38%
綿 30% 16% 24% 70%


ターミネーター作物が実験栽培される

 英科学者メイ・ワン・ホーらによって、英国内の実験用圃場で、ターミネーター遺伝子を組み込んだナタネが栽培されていたことが、このほど明らかにされた。この遺伝子は、次世代の種子が発芽時期が訪れると自らを殺す(自殺する)特性を備えているために、ひとたび遺伝子汚染が起きれば、生態系への致命的な悪影響が予測され、さらには開発企業による種子の独占を促し、農業支配を堅牢なものにするので、世界的に大きな批判にさらされてきた。モンサント社などバイオ企業が商品化を見合わせる旨の声明を出していたいわくつきの代物である。ひそかに実験を進めていたのは、バイエル・クロップサイエンス社とDEFRAである。

〔GM Free Cymru 2003/2/23〕

ブラジルがGM作物栽培禁止

 3月6日、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領は、遺伝子組み換え作物の栽培禁止を表明した。同大統領は、カルドソ前政権がGM大豆の違法栽培を放置したことをかねてから批判してきた。
 ブラジルは、原則としてGM作物の作付けは禁止しているが、アルゼンチンから種子が流入し、全収穫量の12%に相当する600t前後が遺伝子組み換えだと推定されている。15〜25%という説もあり、実態は掌握されていない。 〔アメリカ大豆協会週報 2003/3/24 ほか〕

山形県藤島町でGM禁止条例施行

 山形県藤島町は、遺伝子組み換え作物の栽培を規制する日本初の条例を4月1日に施行した。同町では、昨年12月にGM作物の栽培規制を盛り込んだ「人と環境にやさしいまちづくり条例」を策定。県の機関も、遺伝子組み換え作物の研究・開発は終了し、今後行う予定はない。

●企業動向
司法省がモンサント社を調査

 米国司法省は、除草剤ラウンドアップにまつわる、割引やリベートなど独占禁止法違反の疑いが濃厚になったため、モンサント社の調査を開始した。これにともなってニューヨーク証券取引所におけるモンサント社の株価は15.1%下落した。

〔The Associated Press 2003/3/14〕

GM企業ハワイに集中

 モンサント社、シンジェンタ社など、GM企業大手が相次いでハワイに栽培試験場を建設した。数か月あまりでハワイ諸島は、GM試験場の集中地域に変貌した。島であるため花粉の飛散による影響が少なく、季節に大きな変動がないため一年中試験ができるのが魅力のようだ。しかし環境保護グループは、島にしかいない生物への影響を懸念しており、州当局の対応を批判している。

〔The Independent 2003/3/2〕

●海外動向
EUのGM禁止措置解除ずれ込む


 EUによる遺伝子組み換え作物の禁止措置は、当初予測されていた今年10月にもなお解除されないようだ。これはEU内のGMO規制に関する新委員会の開催が10月以降にずれこむ見通しとなったためである。EU環境大臣による非公式の会議でも、GMO流通に反対する意見が多数を占めており、その後もどうなるかは予測がつかない。
 このEUの動きに対して米国はいらだちを見せ、WTOへ提訴する構えを見せているが、流通の前提である、EUでの遺伝子組み換え食品・飼料の表示とトレーサビリティの新規則ができるまで、提訴もままならない状況にある。

〔ロイター 2003/3/4〕

遺伝子組み換え豚の子どもが食品に

 米国食品医薬品局(FDA)は2月6日、イリノイ大学で実験されていた遺伝子組み換え豚の子どもが、間違って食品流通ルートに乗った可能性があることを明らかにした。2001年4月から2003年1月までの間、同大学では遺伝子組み換え豚から生まれた386頭を家畜商に売却していたが、その一部が食品として転売されたという。
 大学側は、母豚の組み換え遺伝子が受け継がれていないことを確かめたので問題はないとしているが、実施の際に子豚を外部に出さない旨、FDAとの間で合意していた。FDAは、現在捜査中としながらも、この豚肉は食べても安全だと強調している。しかし、安全審査は行っておらず、違反行為であることは明らかである。

〔ニューヨーク・タイムズ 2003/2/6〕

スイスでGM栽培禁止、国民投票請求へ

 スイスの環境保護団体と消費者団体は、国内での遺伝子組み換え作物栽培禁止の国民投票実施に向けて、署名活動を開始した。このキャンペーンは、遺伝子組み換え作物の商用栽培を5年間禁止し、GM動物に関しては完全禁止を求めている。18カ月以内に10万人分の署名を集めることができれば、国民投票が実施される。

〔Agence France Presse 2003/2/18〕

GM作付け抗議で不法侵入罪に

 スコットランドで3月7日、遺伝子組み換え作物の作付けに抗議した5名に対して不法侵入罪が適用され、全員に100ポンドの罰金が科せられた。5人は、一昨年8月ブラック島マンロヒィで、遺伝子組み換えナタネの種蒔きの際に、トラクターの前に座り込んで抗議した。事前に農場に入る許可は得ていたが、その行動が許可条件を破ったとして逮捕された。裁判で抗議者たちは、GMナタネの種蒔きそのものが不法である、として争ったが却下された。

〔Scottish Newsdirect from Scotland 2003/3/8〕

英国州政府がGMフリー宣言

 英国南グロスターシャー州は、2月27日、州内で遺伝子組み換え品種の作付けを禁止し、州内を流通する物品やサービスに関しても遺伝子組み換え由来のものをいっさい排除する政策を強化することを決議した。これまでもノース・ラドストック町などいくつかの地域でGMフリーが決議されていたが、今回は英国内では初めての州規模のGMフリー政策となる。

〔地球の友 2003/2/27〕

米農務省を相手どり集団訴訟へ

 米国の環境保護団体・消費者団体の11団体が、国内での医薬品開発用遺伝子組み換え植物の栽培の禁止を求めて、農務省を相手取り集団訴訟を起こす準備をすすめている。トウモロコシや大豆など食品に用いる従来品種を汚染する可能性が高いにもかかわらず、環境アセスメントなどを実施しないまま米農務省が許可しているためである。

〔ロイター 2003/3/6〕
ことば
*ターミネーター
 次世代の種子が発芽とともに、枯れる(自殺する)ように、遺伝子組み換えで操作する技術のこと。種子独占につながる技術として批判を浴び、開発者は凍結を宣言したが、最近この性質を逆手にとって、組み換え遺伝子の環境中への伝搬を阻止できる環境保護のための技術と言い始めている。