■2003年5月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●政府動向
厚労省、アレルギー誘発性評価見直しせず

 オランダ国立農産物品質管理研究所のG・A・クレターらが、昨年12月『BMCストラクチュアル・バイオロジー』誌に、遺伝子組み換え食品とアレルギー誘発性に関する論文を発表したと、名古屋大学の河田昌東が紹介、日本での安全審査の見直しを提起した。それに対して厚生労働省は、安全審査のやり直しを行う必要はない、という見解を示した。理由として、現在のアレルギー誘発性の評価は、既知のアレルゲンとの比較だけで評価しているわけではないこと、クレターらの論文はコンピュータで予測したものであって、実験で確かめたものではないことをあげている。

〔日経バイオテク 2003/3/31〕

●遺伝子組み換え昆虫
遺伝子組み換え蚊は成功せず

 遺伝子組み換え蚊を用いてマラリア蚊を撲滅する研究が進められている。蚊の遺伝子を組み換えることでマラリア原虫が蚊の消化器官などの中で代謝阻害を起こすようにした「耐マラリア蚊」を大量に繁殖させ、マラリア原虫をもった蚊を撲滅する計画だった。研究を進めてきたロンドン大学インペリアル・カレッジのアンドレア・クリサンティらによれば、野生の蚊の方が優位なため、遺伝子組み換え蚊が瞬く間に駆逐されてしまうことが分かった。オランダ・ワゲニンゲン大学の蚊の生態学者ウィレン・タッケンは、「大規模にひっきりなしに蚊を放たなければ効果は出ないだろう」と指摘した。

〔Nature Science update 2003/2/28〕


●クローン動物
豪州のクローン動物に異常多発


 オーストラリアでは、同国初のクローン羊「マチルダ」が3歳で死に、2頭目のクローン牛「メイジ」が2歳で死んだのを始め、これまで誕生したクローン動物のうち14頭がすでに死んでおり、専門家の間ではクローン技術に対して慎重であるべきだという声が出ている。マチルダを生み出した研究所は、1頭の正常なクローン動物誕生に対して、5頭の異常なクローン動物が誕生しているデータを明らかにした。

〔Sydney Morning Herald 2003/2/8〕


●生殖医療
厚労省、不妊治療の最終報告書まとめる


 4月10日、不妊治療の基準づくりを進めている生殖補助医療部会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)の第27回会合が開かれ、最終報告書がまとめられた。こののち厚労省母子保健課が文言の修正を行うものの、2001年7月に招集された同部会はこれをもって解散となる。精子・卵子・胚の提供者の個人情報をどこまで開示するか、委員の間で意見が分かれていたが、生まれてくる子どもの福祉を最優先とし、「出自を知る権利」を認めた。また、すでにマスコミで大きく報道されたように、第三者からの受精卵の提供は認めたが、兄弟姉妹からの提供は家族関係の混乱を招くなどの理由で禁止された。今後、厚労省は今年中の法制化に向け、関係省庁や与党との調整に入る。


●ES細胞
文科省、岐阜大のES細胞使用計画を承認


 3月27日、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)が開かれ、岐阜大学医学部が申請していたヒトES細胞の使用計画が承認された。この計画は、海外から輸入したヒトES細胞を利用し、血液細胞を作り出すものである。これでヒトES細胞の使用計画の承認は、全部で7件となった。岐阜大は心筋細胞の作成を目的とした使用計画も同時申請していたが、学内倫理委員会の議論が簡略しすぎるとの理由から継続審議となった。