■2018年6月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●業界寄りの米国新GM食品表示制度案


 米国農務省は5月3日、新しい食品表示制度について発表した。これは2016年に連邦議会で可決・成立し、オバマ大統領が署名して成立したGM食品表示法に基づくものである。この法律は2018年7月29日までに最終的な制度を確定しなければならないため、今回の発表となった。60日間のパブリックコメントの後、最終的な制度案が確定する。もともとこの法律自体、バーモント州で成立した「GM食品表示法」を無効にするために急遽強引に成立させた経緯があり、そのため消費者にとってわかり難いものになるのではと考えられていたが、提案された内容は予想以上に業界寄りだった。
まず大きな問題は、「遺伝子組み換え」に関しては、これまで使われてきたGEやGMOといった表示は使えず、「Bioengineered(BE)」という、わざとわかり難い表示が示された。市民団体の食品安全センターは「この表示は消費者を混乱させる」と述べている。


またQRコードでの表示も認めた。しかし、お年寄りなどスマートフォンを持たない人はアクセスできないため、批判が強い。「アクセスする手段を持たない人は農村部に多く、年寄りや貧困層、少数民族などを加えると約1億人の人を差別することになる」と食品安全センターは述べている。

日本でも対象から外されている食用油などの表示については、表示を行うか行わないかの2つの選択肢を示している。意図せざる混入率も5%と0.9%の2つの選択肢を示している。GM飼料を用いた肉や卵、乳製品などは表示の対象外である。レストランなどでは表示の必要はなく、小規模な食品企業は表示義務から外された。さらにゲノム編集など新しいバイオテクノロジーを応用した食品に関しては、表示すべきかどうかコメントを求めている。

これでは遺伝子組み換えでない食品を選ぶことは不可能である。わざとわかり難い表示にしている、と消費者団体、環境保護団体などが指摘し、食品安全センターは「ダーク法である」と強く批判した。〔Center for Food Safety 2018/5/4ほか〕