■2019年3月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●アフリカ事情
●南アフリカでRNA干渉トウモロコシ申請

 南アフリカで、パイオニア・ハイブレッド社が開発したRNA干渉法トウモロコシの野外試験栽培が申請された。これに対して、アフリカ生物多様性センターが呼びかけ、反対署名運動が始まった。地域の農業を破壊し、地域の種子を犠牲にするというのが、反対の理由である。〔African Centre of Biodiversity 2019/2/7〕


●アジア事情
●バングラデシュがいよいよゴールデンライス栽培へ

 バングラデシュの農業大臣アブドゥル・ラザック(Abdur Razzak)が、国際稲研究所(IRRI)代表との話し合いで、まもなくゴールデンライスを栽培すると述べた。環境省の承認が得られれば2〜3か月のうちに栽培可能だという。〔The Daily Star 2019/2/1〕


●インド・ケララ州がグリホサート使用禁止へ

 インド・ケララ州の農業大臣V・S・スニル・クマル(V.S.Sunil Kumar)が、州議会において、同州でのグリホサート製品の使用禁止への見通しを述べた。かねてよりケララ大学の研究者が生態系に及ぼすグリホサートの影響について調査をし、3か月後には報告を予定している。農業大臣によると、使用禁止後は農薬企業や企業の代理人が農家に近づくことも禁止されるという。〔Onmanorama 2019/2/4〕


●スリランカの腎臓病多発はグリホサート汚染の飲料水

 スリランカで著しく増加した腎臓病の原因が、グリホサートにあることを突き止めた2人の研究者が、米国科学振興協会(AAAS)の、2019年の「科学の自由と責任」賞を受賞した。受賞者はカリフォルニア州立大学ロングビーチ校の公衆衛生の研究者サラス・グナティラーケ(Sarath Gunatilake)と、スリランカで医師をしていたチャンナ・ジャヤスマーナ(Channa Jayasumana)である。ジャヤスマーナは1994年頃から同国北中部で腎臓病が増え始めたことから、その原因を探るためにカリフォルニア州立大学ロングビーチ校の客員研究員になった。研究の結果、原因がグリホサートに汚染された飲料水にあることを突き止めた。スリランカは2015年からグリホサートの輸入を禁止している。〔AAAS 2019/2/4〕


●ヒトゲノム
●WHOがヒトゲノム編集の基準作成へ

 WHO(世界保健機関)は2月14日、ヒトに対するゲノム編集を応用する場合の国際基準の作成を発表した。最初の会合は3月18日で、18人の専門家で構成される。日本からは大阪大学大学院教授加藤和人が参加する。〔共同通信 2019/2/15〕


●ゲノム編集
●ゲノム編集がエピジェネティックな変異をもたらす

 米国サルク(Salk)研究所の研究チームが行なった実験で、アグロバクテリウムを用いた遺伝子操作によって、エピジェネティックな変異がもたらされていることが明らかになった。現在、遺伝子組み換えにもゲノム編集にもアグロバクテリウムが用いられている。実験は4種類のシロイヌナズナの系統を用い、オフターゲットを最小にすることを目的としていた。しかし、結果的にはゲノム編集の問題点が浮き彫りになった。〔Salk Institute 2019/1/18〕

●ゲノム編集ベービー研究者が大学を解雇

 中国広東省深セン市にある南方科技大学の賀建奎(フォージエンクイ)准教授が大学から解雇された。ゲノム編集を応用した赤ちゃんを誕生させたことは生命倫理の原則を逸脱し、科学的に未完成の段階で実践したためである。中国国営通信の新華社も「個人的な名声を求めて行なった」と非難した。賀准教授は現在、大学の寮で監視下に置かれている。〔TIME 2019/1/22〕

●広島大学にゲノム編集イノベーションセンター設置

 広島大学は2月1日、広島大学イノベーションプラザ内にゲノム編集イノベーションセンターを設置した。センター長には同大学理学部教授でゲノム編集学会代表を務める山本卓が就任した。〔日経バイオテク 2019/1/31〕


●遺伝子組み換え作物
●ラウンドアップが早期死亡率を高める

 除草剤ラウンドアップとともにGMトウモロコシを与えたラットの雄は、早期死亡率が高かった。オランダのバーゲニン大学の研究者は、EUからの助成を受けて、ラウンドアップとともにモンサント社の「NK603」を餌に33%混ぜてラットに与えた。その結果、24か月以内の実験群の死亡率は雄の場合54%で、雄雌合わせた全体では45%だった。通常の飼料のみの対象群は36%だった。この実験結果は、「悪影響は観察されなかった」と発表されていた。〔Archives of Toxicology 2019/2/12〕


●グリホサートが水質汚濁をもたらす

 カナダ・トロントにあるマックギル大学のマリー・ピア・エベール(Marie-Pier Hebert)らは、有機リン化合物であるグリホサートは、分解するとリンが発生して富栄養化し、水質汚濁をもたらしている、という研究結果を発表した。この20年間にグリホサートの使用量が急激に増大し、汚染が広がっていると指摘している。〔Frontiers in Ecology and the Environment 2018/12/59〕