■2019年4月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
●バングラデシュでのGMナス栽培が失敗

 バングラデシュで栽培されてきたBtナスは失敗し、農家は栽培を続々と取りやめている。市民団体UBINIGの調査で、2014年の開始以来、栽培農家が減り続けていることがわかった。2014〜15年は48軒だったが、15〜16年は13軒、16〜17年は5軒、17〜18年は3軒、18〜19年は2軒と減少した。〔UBINING 2019/2/26〕
失敗した原因に、害虫被害に効果がないという調査結果が示された。この見解は国際食料政策研究所(International Food Policy Research Institute: IFPRI)、バングラデシュ農業省、米国国際開発局(USAID)の3者が共同で開催したワークショップで発表された。IFPRIによると、実や新芽の10.6%が害虫に食べられ、葉は47.1%が食べられていた。農業省とIFPRIの調査では、非GMのナス栽培農家は通常16〜25回農薬を散布し、Btナス栽培農家は10〜15回散布していた。農家は農薬散布の大幅な減少を望んでいたが、わずかな減少にとどまった。〔New Age 2019/3/6〕


●中国はゲノム編集規制の方向か

 中華人民共和国農業農村部は、ゲノム編集技術を応用した食品について、遺伝子組み換えに準じる規制を行う方針だ、と米国農務省(USDA)が伝えている。将来的には規制を緩和する意向もあるようだが、中国の消費者は遺伝子組み換えに否定的であり、農業農村部が努力をしても、規制は緩和されないかもしれないとも述べている。〔GM Watch 2019/3/20〕


●インドの綿収穫量が史上最悪の落ち込み

 インド農業省は、インドの種子企業がモンサント社に支払う特許権使用料を、従来の1パック(450グラム)39ルピー(約62円)から、20ルピーへと減額するよう命じた。現在、モンサント社の種子がインドの綿生産の約90%を占めているが、種子価格の高騰により生産量は大幅に落ち込んでいる。今年9月までの収穫量は、過去9年間で最低と見込まれている。〔Reuters 2019/3/11〕


●遺伝子組み換え作物
●枯れずに残った植物にグリホサートが長期残留

 グリホサートを散布すると通常植物は枯れるが、枯れない量を浴びた場合、長期にわたり残留し、分解がゆっくりとなることが明らかになった。現在、森林関連企業は不要な樹木を枯らすためにグリホサートを使用しており、散布した農薬は広範囲に拡散し、枯れずに残った植物にグリホサートが残留していた。これはカナダのノーザンB.C.大学の生態学者リサ・ジューン・ウッドが、散布1年後に調査して判明した。研究者は先住民の生活に大きな影響が出かねないと指摘している。〔Vancouver Sun 2019/2/20〕



●ゲノム編集
●ゲノム編集技術は予想以上に突然変異を誘発

 2月28日のサイエンス誌のオンライン版に、ゲノム編集のオフターゲットに関する2つの論文が掲載され、ゲノム編集技術が予想以上に意図しない突然変異を誘発していることがわかった。1つは中国神経科学研究所のE.ツオ(Zuo)らがマウスを用いて行なった実験で、もう1つはマサチューセッツ大学ボストン校のS.ジン(Jin)らが稲を用いて行った実験である。前者の実験では、ゲノム編集を行なっていない対照群に比べて約20倍の突然変異が起きていた。〔Science 2019/2/28〕


●省庁動向
●文科省が動物性集合胚作製を容認

 文部科学省は3月1日、「特定胚の取扱いに関する指針」を改定して、動物の胚とヒトのiPS細胞やES細胞を混ぜて作り出した動物性集合胚を動物の子宮に戻し、子を誕生させることを認めた。人間の臓器を動物に作らせるのが主な目的である。この指針は「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」に基づき、通常の胚とは異なる9種類の胚についての取り扱いを定めたもの。従来動物性集合胚に関しては「移植用ヒト臓器の作成に関する基礎的研究に限る旨」と規定されていたが、その規定を削除し応用も可能とした。


●ゲノム医療推進法案、今国会提出へ

 遺伝情報に基づく医療を推進するためのゲノム医療推進法が、今国会に提出されることが確実になった。3月13日、この法案を検討してきた超党派の議員連盟は会長一任で骨子案を了承した。法案では、ゲノム医療の定義を明記し、研究開発を推進するための施策を国に義務付けているものの、遺伝差別の防止を義務付けておらず、罰則も明記されていない。


●厚労省がゲノム編集食品の安全審査の原則不要を決定

 3月21日、厚生労働省は食品衛生審議会食品衛生分科会の新開発食品調査部会を開催し、ゲノム編集食品の安全審査を原則不要とする報告書についての最終審査を行なった。調査部会は報告書を承認し、これにより今夏からゲノム編集食品が安全審査なく食卓に出回ることが可能になった。ゲノム編集食品は安全審査が原則行われないことに加えて、届出が任意となったため、事業者が必ず届けるとは限らない。そのため、どのような食品なのか把握することが困難になった。今後は消費者庁において食品表示が検討されることになるが、届出が任意となったためゲノム編集食品を見分けることができなくなり、表示の実施も困難となる可能性が高くなった。