■2003年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●EUをWTOに提訴、世界に圧力をかける米国


 このところ遺伝子組み換え作物をめぐる米国の対EU攻勢が強まり、激しい応酬が続いている。5月13日米国は、EUが98年に開始した「GM食品の停止措置(モラトリアム)」に対して「米国の農産物や食品が欧州市場から締め出された」として、WTO(世界貿易機関)に提訴すると発表した。EU委員会はこれに対し争う方針である。

 米国通商代表ロバート・B・ゼーリックによれば、米国が提訴を正当化するため賛同国を募ったところ、カナダ、アルゼンチン、エジプトが提訴に加わることになった。しかし5月27日、エジプトEU大使は書簡で、「提訴に参加しないことを決定した」と表明している。オーストラリア、ニュージーランド、メキシコやペルーなど中南米諸国が米国を支持しているが、日本政府は方針を明らかにしていない。
 さらにブッシュ米大統領は、コネティカットの沿岸警備官養成学校卒業スピーチで、EUのGM政策がアフリカの飢餓を悪化させている、と非難した。EUのGM排除政策に影響を受けたアフリカ諸国が食料援助を拒否しているという主旨である。

 この発言に対してEUは、「我々は一度も食料援助を妨げたことはない」「話し合い以前の問題だ」と反発している。 〔ガーディアン 2003/5/24ほか〕
 またタイで開かれたアジア太平洋協力(APEC)貿易閣僚会議で米国通商代表は、日本政府やタイ政府に対してGM作物政策を緩和することを求めた。
〔バンコクポスト 2003/5/2〕

 オーストラリアでは、同国政府がとった米国のWTO提訴支持への波紋が広がっている。民主党の農業担当スポークスマン、ジョン・チェリーは、州単位で広がっているGM作物禁止の取り消しを求める圧力が強まる、と指摘している。〔AAP News 2003/5/15〕